7 / 73
第7話 空似でも同じ存在
しおりを挟む
アミューズメント施設ではあるが、大掛かりな施設ではなかった。
日本全国、世界各地とやらに点在する『チェーン店』に等しいそれを見るのは奈月にとっては初めてそのもの。ディスプレイ越しの、無機質なのではないそれは……今の肉体がVRMMOの副産物であれど、きちんと触覚が機能しているので温度や水の質感が伝わってくる。
最初は、レンタルの水着でも借りようと思ったが。
「入会特典で、お好みのデザインが選べますよ?」
店員の誘導に釣られてしまったのもあったが、まともに運動していない奈月には歩行以外のリハビリを多く必要としている。
であれば、水泳出来るまでの前払いにしては安いもの。そう判断して、宗ちゃんにレクチャーしてもらいつつ……施設のビギナーズランクで入会をしてみた。
ランクが上がれば、特典も増える。水泳以外のレジャー施設もあるらしいから、まずは思うように遊ぼう。出会いとやらは、その合間でもいい……と思ったが。
「お嬢さん、俺と遊ばない?」
宗ちゃんでも認識できる『女顔』と華奢な体型。さらに、細身の上……専用のパーカーを着てれば胸の平らな女の子の出来上がりだった。
「……俺、男だけど」
しかし、声だけはきちんと声変わりしているので。変声したそれを聞かせてやれば、ナンパ野郎の細いグラサンが、軽くずり落ちた気がした。
「……わっり。マジで? いくつ??」
「……高二。この辺に編入してきたばっかり」
本来は十九歳だが、外側のVRではそのように設定してもらっていたため。それ通りに発言すれば、相手はもう一度詫びの言葉を入れてくれた。
「んじゃ、引越ししてきたばっか? 都内なのに?」
「まあ……まだ、なんか用?」
人生初のナンパはともかく、相手がなかなか居なくならないから少しイラついてしまったが。宗ちゃんがこそっと彼の情報をくれたので、少し意識を切り替えることにした。
《彼は雅博だよ。君にとって、無二の親友だった彼さ。こちらの外見はいじっているが、魂側の本能として奈月が気になったのだろう》
「……まちゃ?」
並行世界で、魂は同じでも外見がそうとは限らない。性格も違うことがあれど、本能的な感知能力とやらはそのままの可能性が高い。
それゆえに、奈月も苛ついたが少し気になったのには納得は出来た。
「暇なら遊ばね? ちなみに、俺も高二」
「……ついで? 詫び?」
「ははは。後者」
「ん。じゃ、よろしく。俺奈月」
「俺は雅博」
他人の空似にはならず、本能で『気が合う』『惹かれ合う』が発動するのは現実側でも並行のそれでも関係がなかった。よくよく考えてみれば、あちらでの出会いも似たり寄ったり。
保健室で雅博が仮病していたところに、珍しく登校していた奈月との鉢合わせに近いものだった。あと、女の子に間違えられたのもいっしょだった気がする。
「俺、ちょっとだけリハビリ明けだから……水に慣れる程度だけど」
「んじゃ、俺のこれ見てみるか?」
IDは見当たらないが、ローラーボードサイズの小さめのサーフィンは精密機器で出来ているようだが。アミューズメント施設だから、もしかしたら擬似的な『サーフボード』かもしれない。
興味があって頷けば、温水の上にボードを置いた雅博は当たり前のように乗り。そして、軽く水を蹴ったらローラーボードで乗りこなすように、平面に近い波でそれを操っていったのだった。
「……宗ちゃん? あれ未来技術? こっちじゃ、俺のステータス見れるように『普通』?」
《ははは。こちらは『若干』の近未来だと思えばいいさ。磁場の乱れが多いせいで、公共機関等の遅延はしょっちゅうだがな》
「あー、そう」
磁場の乱れは水の乱れにも通じる。一個前に、ダイブしたあの水の経路がここにも通じるのかと片隅に入れて置き。
帰宅してから、スタッフにチャットbot形式で報告書を記録しようとしたが。奈月のVRが並行世界で生活しているだけで、それは完了しているのは宗ちゃんに聞けた。
ならば、ここからは『普通の生活』を出来るように、奈月はこちらの雅博と交流を深めることに決めたのだった。
日本全国、世界各地とやらに点在する『チェーン店』に等しいそれを見るのは奈月にとっては初めてそのもの。ディスプレイ越しの、無機質なのではないそれは……今の肉体がVRMMOの副産物であれど、きちんと触覚が機能しているので温度や水の質感が伝わってくる。
最初は、レンタルの水着でも借りようと思ったが。
「入会特典で、お好みのデザインが選べますよ?」
店員の誘導に釣られてしまったのもあったが、まともに運動していない奈月には歩行以外のリハビリを多く必要としている。
であれば、水泳出来るまでの前払いにしては安いもの。そう判断して、宗ちゃんにレクチャーしてもらいつつ……施設のビギナーズランクで入会をしてみた。
ランクが上がれば、特典も増える。水泳以外のレジャー施設もあるらしいから、まずは思うように遊ぼう。出会いとやらは、その合間でもいい……と思ったが。
「お嬢さん、俺と遊ばない?」
宗ちゃんでも認識できる『女顔』と華奢な体型。さらに、細身の上……専用のパーカーを着てれば胸の平らな女の子の出来上がりだった。
「……俺、男だけど」
しかし、声だけはきちんと声変わりしているので。変声したそれを聞かせてやれば、ナンパ野郎の細いグラサンが、軽くずり落ちた気がした。
「……わっり。マジで? いくつ??」
「……高二。この辺に編入してきたばっかり」
本来は十九歳だが、外側のVRではそのように設定してもらっていたため。それ通りに発言すれば、相手はもう一度詫びの言葉を入れてくれた。
「んじゃ、引越ししてきたばっか? 都内なのに?」
「まあ……まだ、なんか用?」
人生初のナンパはともかく、相手がなかなか居なくならないから少しイラついてしまったが。宗ちゃんがこそっと彼の情報をくれたので、少し意識を切り替えることにした。
《彼は雅博だよ。君にとって、無二の親友だった彼さ。こちらの外見はいじっているが、魂側の本能として奈月が気になったのだろう》
「……まちゃ?」
並行世界で、魂は同じでも外見がそうとは限らない。性格も違うことがあれど、本能的な感知能力とやらはそのままの可能性が高い。
それゆえに、奈月も苛ついたが少し気になったのには納得は出来た。
「暇なら遊ばね? ちなみに、俺も高二」
「……ついで? 詫び?」
「ははは。後者」
「ん。じゃ、よろしく。俺奈月」
「俺は雅博」
他人の空似にはならず、本能で『気が合う』『惹かれ合う』が発動するのは現実側でも並行のそれでも関係がなかった。よくよく考えてみれば、あちらでの出会いも似たり寄ったり。
保健室で雅博が仮病していたところに、珍しく登校していた奈月との鉢合わせに近いものだった。あと、女の子に間違えられたのもいっしょだった気がする。
「俺、ちょっとだけリハビリ明けだから……水に慣れる程度だけど」
「んじゃ、俺のこれ見てみるか?」
IDは見当たらないが、ローラーボードサイズの小さめのサーフィンは精密機器で出来ているようだが。アミューズメント施設だから、もしかしたら擬似的な『サーフボード』かもしれない。
興味があって頷けば、温水の上にボードを置いた雅博は当たり前のように乗り。そして、軽く水を蹴ったらローラーボードで乗りこなすように、平面に近い波でそれを操っていったのだった。
「……宗ちゃん? あれ未来技術? こっちじゃ、俺のステータス見れるように『普通』?」
《ははは。こちらは『若干』の近未来だと思えばいいさ。磁場の乱れが多いせいで、公共機関等の遅延はしょっちゅうだがな》
「あー、そう」
磁場の乱れは水の乱れにも通じる。一個前に、ダイブしたあの水の経路がここにも通じるのかと片隅に入れて置き。
帰宅してから、スタッフにチャットbot形式で報告書を記録しようとしたが。奈月のVRが並行世界で生活しているだけで、それは完了しているのは宗ちゃんに聞けた。
ならば、ここからは『普通の生活』を出来るように、奈月はこちらの雅博と交流を深めることに決めたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる