10 / 85
第10話 療養も生活の一部
しおりを挟む
きちんと身体を拭き終えてから家に戻り、クルスはようやく布団に飛び込んで寝たのはいいのだが。
翌日に目を覚ましても、窓から日差しが入ってきたりしなかった。そんなにも寝ていたのかと思ったが、連絡版のところに行ってみると新たに任務が書かれていただけでなく。
【放置時間、十時間。この間に作物が幾つか熟成したため……食事の後に収穫作業を。休憩や風呂は好きに使っていい】
時間、とやらはよくわかっていなかったが。どうやら、肉体の酷使と激動の不安からの心労により……クルスはかなり長くあのふかふか布団で眠ってしまってたようだ。
とりあえず、寝る前にここを通った時は『任務完了。家主昇格』と文字が見えた覚えがある。それに、この文章を何度見ても……クルスはこの家と敷地でしばらく体制を整えればいいとのことだ。
学の低いクルスでも、まずは己自身を整えなければ力へと変えるのは難しいくらい……いやと言うくらい見てきた。才能がある者は見出されたが、無い者でも体を整えなければ見張り番も任せられない。
不摂生が祟って、末路は悲惨だと見てきたのだから。その際たるは国の崩落。
「……とにかく、腹ごしらえや!」
連絡版の中には、管理者からの任務はないので好きに作っていいらしいが。あのレシピの本が無いと、流石に素人のクルスではまともな朝飯も作れまい。
調理場に行き、材料などを確認してから本を読んでみたが。簡単そうに見えるものも幾つかあったけれど、昨夜初めて口にしたあのピザパンも捨てがたい気分になった。
作物の収穫以外好きにしていいと思ったが、寝起きだとあっさりしたものも食べたくなってしまう。若い頃の深酒の翌日に出された腸詰だけのスープで腹が痛くなった記憶があるからだ。
「……けど、そうか。野菜と腸詰を使ったスープ!」
本には『ポトフ』と書かれていたそれを、せっかくなので作ってみようと思った。材料も最初は手順通りに。アレンジするなら、慣れてから。
ほとんどごろごろした材料を、コンロという竈で調理していく途中。連絡版の方が光った音が聞こえてきたので、弱火にしてからささっと離れた。
【野菜の皮、不要物は畑の肥料になる。方法はレシピ本に記すので、捨てないように】
「ほー!?」
たしかに、今さっきまとめて土の中でも埋めればいいかと考えていたが。
土壌の整えに使えるのは、今後の畑作で役立つかもしれない。神かわからないが、宝物の管理者とやらは連絡版を通じて……どこまでクルスの様子を見ているのだろうか。
普通は畏れを感じるはずなのに、劣等感も覚えることなく……クルスはこの管理者へ信頼感を抱いていたのだ。至れり尽くせりに等しいこの環境に、もう溺れてしまっている理由もあるだろうが。
とりあえず、野菜屑の山は麻袋の中に全部詰め込んでおいた。
「……村の生活と、便利さ以外ほとんど変わらんのに」
心の療養を忘れていたクルスには、新しい生活の朝ではなく夜だったが。少なくとも、潤いの良い幸先だと思えたのだった。
翌日に目を覚ましても、窓から日差しが入ってきたりしなかった。そんなにも寝ていたのかと思ったが、連絡版のところに行ってみると新たに任務が書かれていただけでなく。
【放置時間、十時間。この間に作物が幾つか熟成したため……食事の後に収穫作業を。休憩や風呂は好きに使っていい】
時間、とやらはよくわかっていなかったが。どうやら、肉体の酷使と激動の不安からの心労により……クルスはかなり長くあのふかふか布団で眠ってしまってたようだ。
とりあえず、寝る前にここを通った時は『任務完了。家主昇格』と文字が見えた覚えがある。それに、この文章を何度見ても……クルスはこの家と敷地でしばらく体制を整えればいいとのことだ。
学の低いクルスでも、まずは己自身を整えなければ力へと変えるのは難しいくらい……いやと言うくらい見てきた。才能がある者は見出されたが、無い者でも体を整えなければ見張り番も任せられない。
不摂生が祟って、末路は悲惨だと見てきたのだから。その際たるは国の崩落。
「……とにかく、腹ごしらえや!」
連絡版の中には、管理者からの任務はないので好きに作っていいらしいが。あのレシピの本が無いと、流石に素人のクルスではまともな朝飯も作れまい。
調理場に行き、材料などを確認してから本を読んでみたが。簡単そうに見えるものも幾つかあったけれど、昨夜初めて口にしたあのピザパンも捨てがたい気分になった。
作物の収穫以外好きにしていいと思ったが、寝起きだとあっさりしたものも食べたくなってしまう。若い頃の深酒の翌日に出された腸詰だけのスープで腹が痛くなった記憶があるからだ。
「……けど、そうか。野菜と腸詰を使ったスープ!」
本には『ポトフ』と書かれていたそれを、せっかくなので作ってみようと思った。材料も最初は手順通りに。アレンジするなら、慣れてから。
ほとんどごろごろした材料を、コンロという竈で調理していく途中。連絡版の方が光った音が聞こえてきたので、弱火にしてからささっと離れた。
【野菜の皮、不要物は畑の肥料になる。方法はレシピ本に記すので、捨てないように】
「ほー!?」
たしかに、今さっきまとめて土の中でも埋めればいいかと考えていたが。
土壌の整えに使えるのは、今後の畑作で役立つかもしれない。神かわからないが、宝物の管理者とやらは連絡版を通じて……どこまでクルスの様子を見ているのだろうか。
普通は畏れを感じるはずなのに、劣等感も覚えることなく……クルスはこの管理者へ信頼感を抱いていたのだ。至れり尽くせりに等しいこの環境に、もう溺れてしまっている理由もあるだろうが。
とりあえず、野菜屑の山は麻袋の中に全部詰め込んでおいた。
「……村の生活と、便利さ以外ほとんど変わらんのに」
心の療養を忘れていたクルスには、新しい生活の朝ではなく夜だったが。少なくとも、潤いの良い幸先だと思えたのだった。
21
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
病弱な第四皇子は屈強な皇帝となって、兎耳宮廷薬師に求愛する
藤原 秋
恋愛
大規模な自然災害により絶滅寸前となった兎耳族の生き残りは、大帝国の皇帝の計らいにより宮廷で保護という名目の軟禁下に置かれている。
彼らは宮廷内の仕事に従事しながら、一切の外出を許可されず、婚姻は同族間のみと定義づけられ、宮廷内の籠の鳥と化していた。
そんな中、宮廷薬師となった兎耳族のユーファは、帝国に滅ぼされたアズール王国の王子で今は皇宮の側用人となったスレンツェと共に、生まれつき病弱で両親から次期皇帝候補になることはないと見限られた五歳の第四皇子フラムアーク付きとなり、皇子という地位にありながら冷遇された彼を献身的に支えてきた。
フラムアークはユーファに懐き、スレンツェを慕い、成長と共に少しずつ丈夫になっていく。
だがそれは、彼が現実という名の壁に直面し、自らの境遇に立ち向かっていかねばならないことを意味していた―――。
柔和な性格ながら確たる覚悟を内に秘め、男としての牙を隠す第四皇子と、高潔で侠気に富み、自らの過去と戦いながら彼を補佐する亡国の王子、彼らの心の支えとなり、国の制約と湧き起こる感情の狭間で葛藤する亜人の宮廷薬師。
三者三様の立ち位置にある彼らが手を携え合い、ひとつひとつ困難を乗り越えて掴み取る、思慕と軌跡の逆転劇。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる