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第84話 はじめての『コイビト』
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コイビトが出来てしまった。
クルスは自分で言いだしたというのに、人生できちんと『はじめて』の恋人が出来たことにテンションがハイどころですまなくなってしまった。
正確には、畑の収穫作業が進みに進み過ぎて……果樹園を担当しているサナに軽く叱られたのだが。
『……熟成しているモノだけデスよ』
「……すまん。はしゃいでたわ」
『……リーナ、任せてヨイのやら』
「!? 見とった?」
『……少しダケデス。ワタシはゴーレムデスのでお気になさらず』
「……おん」
一番最後に加わったのに、一番最初からそこにいるかのような姉みたいな態度。クルスに兄弟はいたらしいが、戦争などの関係で巻き込まれて早死にしたと親には聞いた気がした。
故郷はもうないにしても、両親はどうしているかわからない。せめて、嫁候補は出来たくらいは報告したかったが……祈るくらいで、報告しておくことにした。改めて、収穫とゴミ処理を担当するとあっという間にご飯の時間になったのでリーナに呼ばれた。
ただここで、サナは自分の『食事』をしに行くといつもいなくなるのだ。教えてはくれたが、魔力のような動力源になるものを『ゴミ処理』のエネルギーとやらが出してくれているらしい。それを、装置の近くで吸収するのだそう。
「へっへ~! 試作ついでにいっぱい作ったよ~!!」
「ぉお~!?」
サナを見送ってから室内に入れば、リーナが本当にたくさんの料理を作ってくれていた。お互いに気に入ったレシピのものから、新たに記録されていた『美味そうなレシピ』までたくさん。せっかくの料理を温かいうちに食べたいので、手を合わせた。
「どう?」
「うんま!? 揚げ物サックサクやし、油っこくないわ!!」
「果樹園の実のお陰だよね~。調味料なら、なんでもあるし」
「サナの管理は期待大やんな?」
「もうすぐ戻ってくるのかな?」
「……多分?」
「……クーちゃんにも、言ったの?」
「……ちゃう。俺が浮かれて作業してたら、叱られてん」
「そ、そう……」
「ええんや。今なんか、めっちゃ幸せ」
「ふふ。あたしも~」
そんなふたりを気遣ってか、少し遅めに戻ってきたサナは片付けを買って出てくれた。あとで、明日の炊き出しにするメニューは誰がどれを担当するのか決めるのもだいたい慣れてきたところで。
クルスは、ひとつ疑問が今更ながら思い出したのだ。
「……俺の反対側とか。誰やろ?」
「あ」
『……管理者に聞きマス?』
「……裏のドア叩かれてないやんな? 俺らだけか?」
「……なんか、今更だけど。ちょっと、怖いかも?」
『様子見シマショウ。管理者たち同士のアクションもあるかもデス』
「……せやな。勝手行動は下手に出来んし」
自分たちも、まだまだ『管理』されている状態なのに変わりない。街は街の方で活動が再開されているのなら、そちらの方も含めて様子見するサナの意見を尊重しようと決めたが。
正直言って、自分たち以外の『炊き出し』もない彼らの行動が何を引き起こすのか……少し恐怖のような概念を抱いたのはクルスとリーナの本能的な勘かもしれない。
それを頼りに出会ったふたりだからこそ、ここは慎重に行きたかったのだ。
クルスは自分で言いだしたというのに、人生できちんと『はじめて』の恋人が出来たことにテンションがハイどころですまなくなってしまった。
正確には、畑の収穫作業が進みに進み過ぎて……果樹園を担当しているサナに軽く叱られたのだが。
『……熟成しているモノだけデスよ』
「……すまん。はしゃいでたわ」
『……リーナ、任せてヨイのやら』
「!? 見とった?」
『……少しダケデス。ワタシはゴーレムデスのでお気になさらず』
「……おん」
一番最後に加わったのに、一番最初からそこにいるかのような姉みたいな態度。クルスに兄弟はいたらしいが、戦争などの関係で巻き込まれて早死にしたと親には聞いた気がした。
故郷はもうないにしても、両親はどうしているかわからない。せめて、嫁候補は出来たくらいは報告したかったが……祈るくらいで、報告しておくことにした。改めて、収穫とゴミ処理を担当するとあっという間にご飯の時間になったのでリーナに呼ばれた。
ただここで、サナは自分の『食事』をしに行くといつもいなくなるのだ。教えてはくれたが、魔力のような動力源になるものを『ゴミ処理』のエネルギーとやらが出してくれているらしい。それを、装置の近くで吸収するのだそう。
「へっへ~! 試作ついでにいっぱい作ったよ~!!」
「ぉお~!?」
サナを見送ってから室内に入れば、リーナが本当にたくさんの料理を作ってくれていた。お互いに気に入ったレシピのものから、新たに記録されていた『美味そうなレシピ』までたくさん。せっかくの料理を温かいうちに食べたいので、手を合わせた。
「どう?」
「うんま!? 揚げ物サックサクやし、油っこくないわ!!」
「果樹園の実のお陰だよね~。調味料なら、なんでもあるし」
「サナの管理は期待大やんな?」
「もうすぐ戻ってくるのかな?」
「……多分?」
「……クーちゃんにも、言ったの?」
「……ちゃう。俺が浮かれて作業してたら、叱られてん」
「そ、そう……」
「ええんや。今なんか、めっちゃ幸せ」
「ふふ。あたしも~」
そんなふたりを気遣ってか、少し遅めに戻ってきたサナは片付けを買って出てくれた。あとで、明日の炊き出しにするメニューは誰がどれを担当するのか決めるのもだいたい慣れてきたところで。
クルスは、ひとつ疑問が今更ながら思い出したのだ。
「……俺の反対側とか。誰やろ?」
「あ」
『……管理者に聞きマス?』
「……裏のドア叩かれてないやんな? 俺らだけか?」
「……なんか、今更だけど。ちょっと、怖いかも?」
『様子見シマショウ。管理者たち同士のアクションもあるかもデス』
「……せやな。勝手行動は下手に出来んし」
自分たちも、まだまだ『管理』されている状態なのに変わりない。街は街の方で活動が再開されているのなら、そちらの方も含めて様子見するサナの意見を尊重しようと決めたが。
正直言って、自分たち以外の『炊き出し』もない彼らの行動が何を引き起こすのか……少し恐怖のような概念を抱いたのはクルスとリーナの本能的な勘かもしれない。
それを頼りに出会ったふたりだからこそ、ここは慎重に行きたかったのだ。
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