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第十二章 小森の場合⑥
第2話 意気地無しなりに
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その表情を見たから……クリスマスを。当日は難しいが前日か翌日かに怜を誘おうと思ったのだ。
シフトはまだ聞いていないが、あと二週間を切ったため……そろそろ聞かないと色々まずい気がしてきた。バイト代の行き先の関係で、いいホテルとか食事に誘えるかは厳しいが……何かはしてあげたかった。
誕生日の時にあの喜びようだったから、またこの部屋で祝おうとも考えたけれど……同じパターンからその展開に行けるか自信が裕司には持てない。
今までの交際で、ここまで焦ることなど一度もなかったのに。
「……もう、いっそ開き直って聞くか」
下手な嘘や隠し事をして、逆に怜を傷つける方がもっといけない。
LIMEを使って、裕司はそろそろ迎えに行く連絡を入れてみた。
『ハロハロ、怜やん。迎えに行くぜよ?』
出来るだけ、普段の口調遊びをまじえて。これなら、変に緊張しないと勝手に思っただけだが。
数分待つと、返信の音が『ピコン』と鳴った。
『ハロハロ、こもやん。嬉しいねぇ! あと三十分で終わるかな?』
手洗いか、上司の目を盗んでこっそり返信してくれたのか。その後、裕司が返事を送っても既読にはならなかった。
なら急ぐか……と、地下鉄などを使ってホテルの方に向かう。到着した時に、従業員入り口から見覚えのある服装の女性が出てきた。
「おお! こもやん! ぴったんこだね!!」
明るい表情と弾んだ声。
これを見たりしている限り、この前のように不安がっているように見えない。だが、確証は持てないので、怜がこちらに来てから自然に手を繋いでやった。するといつものことだが、とても嬉しそうにはにかんでくれる。
「お疲れ、怜やん」
「今日も足ぱんぱん! クリスマス近いと宴会多いから大変なのだよ!! まあ、その分給料増えるけど!!」
「そうさな」
何気ない会話。
怜にとってはそのつもりでいるだろうし、裕司にクリスマスを催促しているわけじゃないのはよくわかる。
しかし……心の奥底では違うかもしれない。
海外では家族と過ごすクリスマスだが、日本ではたいてい恋人同士で過ごすシーズンだと認識が強い。付き合って一年近く経つのだから、楽しいが今以上の関係をステップアップしたい気持ちもあるだろう。
変なところで、ブレーキをかけてしまっていたのは裕司だ。
だから、言おうと……怜と繋いでいた手を少し強く握った。
「こもやん??」
少し驚いたのか、怜は少し目を丸くしていた。
「その……さ」
「ほいほい?」
「クリスマス……当日はバイト?」
「! うん……ごめん、入れちゃった」
やはり、裕司の意気地の無さで怜の不安を煽ってしまったのだろう。
しゅんとなるところは可愛らしいが、裕司は別に怒っていないと彼女の頭を撫でてやった。
「じゃあさ? 終わったら、うちで過ごさない?」
「へ?」
「俺も先に誘わなかったのが悪かったし……豪華、とは言いにくいけど。俺なりのディナーで怜やんを労いたい」
「……いいの??」
「もち。レストランとか高いホテルで、過ごすだけがクリスマスプランじゃないぜよ?」
「! うん!!」
その後のことは……さすがに往来の場で言いにくいので言わないでおいたが。
怜が嬉しそうな笑顔になってくれたので……出来るだけ奮発してやろうと、裕司は心に決めた。
シフトはまだ聞いていないが、あと二週間を切ったため……そろそろ聞かないと色々まずい気がしてきた。バイト代の行き先の関係で、いいホテルとか食事に誘えるかは厳しいが……何かはしてあげたかった。
誕生日の時にあの喜びようだったから、またこの部屋で祝おうとも考えたけれど……同じパターンからその展開に行けるか自信が裕司には持てない。
今までの交際で、ここまで焦ることなど一度もなかったのに。
「……もう、いっそ開き直って聞くか」
下手な嘘や隠し事をして、逆に怜を傷つける方がもっといけない。
LIMEを使って、裕司はそろそろ迎えに行く連絡を入れてみた。
『ハロハロ、怜やん。迎えに行くぜよ?』
出来るだけ、普段の口調遊びをまじえて。これなら、変に緊張しないと勝手に思っただけだが。
数分待つと、返信の音が『ピコン』と鳴った。
『ハロハロ、こもやん。嬉しいねぇ! あと三十分で終わるかな?』
手洗いか、上司の目を盗んでこっそり返信してくれたのか。その後、裕司が返事を送っても既読にはならなかった。
なら急ぐか……と、地下鉄などを使ってホテルの方に向かう。到着した時に、従業員入り口から見覚えのある服装の女性が出てきた。
「おお! こもやん! ぴったんこだね!!」
明るい表情と弾んだ声。
これを見たりしている限り、この前のように不安がっているように見えない。だが、確証は持てないので、怜がこちらに来てから自然に手を繋いでやった。するといつものことだが、とても嬉しそうにはにかんでくれる。
「お疲れ、怜やん」
「今日も足ぱんぱん! クリスマス近いと宴会多いから大変なのだよ!! まあ、その分給料増えるけど!!」
「そうさな」
何気ない会話。
怜にとってはそのつもりでいるだろうし、裕司にクリスマスを催促しているわけじゃないのはよくわかる。
しかし……心の奥底では違うかもしれない。
海外では家族と過ごすクリスマスだが、日本ではたいてい恋人同士で過ごすシーズンだと認識が強い。付き合って一年近く経つのだから、楽しいが今以上の関係をステップアップしたい気持ちもあるだろう。
変なところで、ブレーキをかけてしまっていたのは裕司だ。
だから、言おうと……怜と繋いでいた手を少し強く握った。
「こもやん??」
少し驚いたのか、怜は少し目を丸くしていた。
「その……さ」
「ほいほい?」
「クリスマス……当日はバイト?」
「! うん……ごめん、入れちゃった」
やはり、裕司の意気地の無さで怜の不安を煽ってしまったのだろう。
しゅんとなるところは可愛らしいが、裕司は別に怒っていないと彼女の頭を撫でてやった。
「じゃあさ? 終わったら、うちで過ごさない?」
「へ?」
「俺も先に誘わなかったのが悪かったし……豪華、とは言いにくいけど。俺なりのディナーで怜やんを労いたい」
「……いいの??」
「もち。レストランとか高いホテルで、過ごすだけがクリスマスプランじゃないぜよ?」
「! うん!!」
その後のことは……さすがに往来の場で言いにくいので言わないでおいたが。
怜が嬉しそうな笑顔になってくれたので……出来るだけ奮発してやろうと、裕司は心に決めた。
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