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第54話 天神様と二番目の石①

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 いきなり、ケルピーを狙ってきた矢。

 それには見覚えがあったよ。

 この魔の森に来てから……幾度となく目にしてきたもののひとつ。


 ギギャー!!

 ギャーギャー!!


 弓矢や、投石などを避けているケルピーから少し身を乗り出して……下を見てみると。

 やはり……私の予想通りに、小鬼ゴブリンやらが私達を狙っていた。

 その奥には……赤紫に光を放つ聖樹石が、巨木の間に挟まっていたよ。


「……避けられないね?」

「……やるしかないですな」


 飛翔は使えないので、ケルピーに頼んで降りようとしたのだが。

 ケルピーは、いきなりいななきを上げ……怯んだ小鬼ゴブリンらの間に着地したのだ。


【退け、ゴミどもよ】


 力強い言葉に……小鬼ゴブリンらはさらに怯えていく。

 動かないままでいるかと思ったが……ケルピーの気迫に怖気づいたのかもしれないね? 弓矢などを構えていた者らは、徐々に腕を下ろしていった。


(……格の違いと言うものだろうね?)


 ケルピーも魔物らしいが……ディアナの言っていたように、『幻獣種』は存在そのものが神秘的なのと同じ。

 言葉も話せるし、知能も高い。

 少し賢い程度の小鬼ゴブリンが敵う相手ではないだろう。

 やがて……ケルピーとの睨み合いに、参ってしまったのか。

 たくさんいた小鬼ゴブリンらは、思いっきり逃げていったのだった。


『す……ご! すご……い!!』

「見事に怯んでいったな……」

「ありがとうございます、ケルピー。無駄な殺生をせずに済みました」

【なに。神聖な石の前で……我も無益なことはしたくなかったゆえ】


 一匹もいなくなってから……私達はケルピーから降り。

 奥に見えた……聖樹石の前に近づくと、居たのだ。

 試練を与えてくださった時と同じ……リーンと同じ大きさの、意識体が。


【よく……参られた。ミザネ達よ】


 意識体が来ることがわかっていたのか……ただただ、慈しむように微笑んでいただけだ。


「……そちらに触れても?」


 私は早速だが……目的を尋ねた。

 ケインらのこともだが……一刻も早く、この石を世界樹に届けねば……足りぬ力が世界を支えられないだろうから。

 意識体は、私の問いかけにゆっくりと頷いてくれたよ。


【まだ二つ目と言えど……あなた方は多くの支えがあって、ここに参られた。その導きを……大切にしなさい】

「……はい」


 その言葉はたしかなことなので……私は、ゆっくりと木に埋め込まれているような聖樹石に足を向け。

 手を伸ばすと……言霊が自然と浮かんだのだった。


【贈りたまえ!!】


 触れた瞬間。

 辺り一帯が……赤紫の光に包まれたのだ!
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