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第74話 従者の反撃
しおりを挟む───────……させぬ。
そのような事は……あってはならぬのだ。
我は……城とやらに入ってから、我が主に少しばかり『嘘』をついた。
身体が不調なのは本当であるが……険しき道の困難からではない。
我や主に向けられた……『邪気』のようなものを一手に引き受けたからだ。相手が何者なのかまでは、すぐに判断出来なかったが……主に向けられたものと分かれば、我がすべて受ければいい。
主には健やかに過ごしていただきたいのだ。
かつての……怨霊と成り果ててしまった事を思うと、これ以上の苦難を受けて欲しくないのだ。
先日の……ケインら、冒険者らの魂との別れもだが。
主の……哀しみや辛い御顔を、これ以上我が見たく無いのが本音だ。
であるから……我が受けれるものは、一手に引き受けよう。
そして……その愚か者らには、『還して』やろうではないか。
力を力で還す。
術の一手に過ぎぬが。
離宮とやらに近づくにつれ……気配が近かった。
我は、主やフータが離宮を眺めている間に……密かに、特定出来そうだった妨害する者らへと、その『力』を還した。
あちらも動こうとしていたからな? 丁度良いと言うものだ。
【……許さぬ】
我は弱い。
主ほどの力はないが……出来ぬ事を恥じている場合ではない。
主に降りかかる厄災を近づけさせるわけにもいかぬ。
『呪』を乗せてきたのであれば、それを受け……さらに威力を増して、還すまで。
日の本にいた頃……ただの梅の木でしかなかった我を、飛びたいとまで動かしてくださったのは、ひとえに主への思いがあったからこそ。
主へ仇なす者は……愚か者は、我が対処するまで!
力を思いっきり還した直後……不調だった身体の重みは、すっきりが似合うくらいに跡形もなく消えたのだった。
「トビト~? 行こうー」
『トビ、ト様~!』
還した直後に、主らに呼ばれた。
どうやら、案内の者が次の場所へ行くと号令をかけたところのようだ。
幾らか楽になった身体を奮い立たせ、我は姿勢を正した。
「……今行く」
身体が軽くなったことで……ひとつ、気づいた事が出来たのだ。
フータは此度気づいていないようだが……聖樹石は、今離れようとしている離宮にあるようだ。
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