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第76話 天神様と考察

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 驚くことが出来た。


「え!? 聖樹石が……離宮に!?」

『ほ……んと?』

「……誠ですな」


 トビトがいくらか辛そうだったので……城内見学を途中で離脱し、宿屋へ戻ってきたのだが。

 トビトの呼吸などが安定してから……彼から、実は聖樹石の在処を教えてもらったのだよ。フータは全く気配を感じることが出来なかったと言うのに。


「……具体的に、どこかわかる?」

「……申し訳ありません、そこまでは」

「そっか。けど、大きな収穫だね?」


 大まかな場所は分かれば、あとは手に入れるまでだが……どう忍び込めばいいのやら。

 我々は精霊であれど、フータ以外は人間とほぼ同じような存在だ。

 社で、宮司らが観ていたテレビとかにあったように……魔法で何か可能にすることは、正直言ってあまり出来ない。

 治癒魔法や、攻撃魔法は今回ほとんど意味がない。

 トビトの不調にも、魔法を施してみたがいくらか役に立っただけ。


『石……石! ぼ……く、探って……みる!』

「うん?」

「何か出来るのか?」

『う……ん!』


 策を練ろうとしていると、フータに何か考えが浮かんだのか。

 しばらく、私の膝上でじっとしていると……身体と同じような淡い紫色の光の帯が出てきて、フータを包んだのだ。


(……何かの魔法かな?)



 フータとも出会って、まだまだ日が浅いので……予想をしても、わからないことの方が多い。

 これは、見守っていようと私やトビトも待っていれば。

 光の帯が消えると、フータは何故かしゅんと身体を緩めた。


『ちょ……と、大変』

「大変?」

『フェアリー……いる』

「ふぇありー?」

『い……たずら、な……ちっちゃい、精霊』

「精霊が関わっているの?」


 だが、フータの感じからすると……相手は友好的な存在ではないようだ。


『……離そう、としてない』

「うーん? もしかして、住処にしてるの?」

『う……ん』


 何故離宮にあるのか。

 何故、いたずら好きなフェアリーが独占しているのか、気になることは多いが。

 それでも……私達の目的は同じだ。

 聖樹石を世界樹に送らねば!


「……とりあえず、夜に忍び込むしかないかなあ?」


 典型的な提案ではあったが……フータは身体を左右に揺らし、トビトも困ったような表情になってしまったよ。


「……困難かと。我らに、忍びの作法はあまりないですから」

「……だよね? 忍者とかスパイみたいに出来そうにないし」

『な……に、それ?』

「忍び込むのが得意な存在だよ」


 はてさて、困ったものだ。
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