上 下
87 / 99

第89話 天神様と怒り③

しおりを挟む
 間に合え!

 ……間に合わないか?

 私はレインに追いつこうと、懸命に手分け伸ばしたのだが。

 あの子の方が、一歩どころか素早く……聖樹石に触れてしまった。

 まばゆい光に包まれたが……私は、間に合わなかったのだ。

 私達以外が、石に触れたらどうなるか。まだそれをよく知らぬのだが。

 チカチカと光る……フェアリーらしき、光からはクスクスと笑う声が聞こえてきた。

 となれば……間に合わなかったのか。


(……どうすれば)


 レインを石から引き剥がそうにも……光が強過ぎて、どこに彼の身体があるかわからない。遮ろうにも、強過ぎて目が開きにくい。

 しかし……やらなくては。

 私の……我々の使命なのだから!


『レイン!』


 姿は見えないようにしているが、声は届くだろう。

 懸命に呼びかけたが、レインらしき影は動かないでいる。

 まさか……意識すらも、フェアリーに何かされたのか?

 このままでは、良くない!!

 私はさらに手を伸ばし……レインらしき影を掴もうとしたのだが。

 スカッと、何故かすり抜けてしまった?

 これは……何が起きていると言うのだろうか?

 フェアリーは……この幼い子供に何をしたのだ!?





 ​───────​───────​───────……うふふ、うふふ




 遅い……遅い



 もう捕まえた



 この子は捕まえた



 私、あたし達のために



 捕まえた捕まえた



 石は渡さない



 だから……捕まえた




 お前達は、もう遅いのだ!!






 などと、諫言を言うのだから。


 私とて、さらに怒りが込み上げてきたよ!!
しおりを挟む

処理中です...