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第86話 ジビエ肉のカツ達②
しおりを挟む「右から、ホーンバント、オーク、六角ボアにコカトリスです」
今回はあくまで試作なので、他に具材を巻いて衣をつけたりはしていない。
単純に、肉に衣をつけて揚げたカツを作ったのだ。一見すると同じように見えるが……よく見ると、揚がった色合いが微妙に違う。中の肉の火の通り方も相まって。
「……ヒロよ。これはこのまま食すのか?」
草の長老様はお腹が空いて、すぐに食べたいようだ。それはクレハとかも同じなので……すぐに次の説明に移ることにした。
「食べられなくもないですが、岩塩やサイシにも合うと思います」
「……ほぉ?」
「適量はこのくらいです」
試しに、ホーンバントのカツに塩を軽く振り……どうぞと長老様に薦めると、彼は軽く手を合わせてフォークを手に取った。
「……頂戴する」
大口を開けて、ガブっとかぶりつくのは……実に男らしい。しかし、よく噛んで味わうように咀嚼する姿は……クレハがちょっとぽやんとなるくらい渋くてカッコいい。
やがて、ごくんとの飲み込むと……長老様は何度か首を縦に振ったわ。
「……美味。実に美味である! ヒロ!!」
「お口に合いましたか」
「肉が想像以上に柔らかいが……腐臭もせずに、ただただ美味だ。周りの食感も面白い。これが……異界の珍味か」
「塩味だけですが、そこはどうでしょう?」
「食べやすいな? しかし……サイシも試して良いか?」
「是非」
まだ残っていたホーンバントのカツに、軽く垂らして……これまたひと口で頬張る。
すると……今度は思いっきり肩を震わせて。
「美味! 塩も悪くないが……深みが違う!! 味付けとやらでここまで変わるとは、いやはや……二千年生きておってまだまだ知らぬことが多いのは素晴らしい!!」
あ、ユキトさんもだけど……クレハよりも年上なのかな?
クレハとは幼馴染みさんだけど……クレハ的には、ご近所のお兄さんみたいな?
とりあえず……ソースがなくても、アヤカシにもカツの味付けは塩や醤油で提供しても大丈夫そうだった。
なので、ここはもうひとつ。
「朝なので……ご飯も食べましょう」
お米ことリーガは今日もきちんとご用意しています。
「む? 穀物が……合うのか?」
草の長老様には、ニョロギアの蒲焼きでお米は食べていただいたけれど。
この揚げ物達と合うのか……まだお米を食べ慣れていないので不思議に思うのかもね?
「合いますよー? 私のいたところでは、リーガを主食にして……こう言った料理をおかずにして食べるのが多いのです。汁物も用意したので……是非」
カウンターに全員で並び、私は手を合わせていただきますをしたわ。
「うみゃ!!」
クレハはさっそくがっついたのか……お米と交互にどんどん食べ進めていく。途中、長老様に軽く小突かれていたけれど。
「これこれ……食事は逃げはせん。某も取りはせんし、もっとゆっくり食すが良い」
「……美味いんやで」
「それはもちろんではあるが」
恋人? 夫婦?
なんか……最初のクレハの突っ掛かり以降、甘々に近い空気が漂っているわ。
これはもう……聞くしかない!
「あのー……つかぬことを聞きますが」
「む? いかがした?」
「…………草の長老様とクレハですが。幼馴染みさんですよね?」
「左様。それ以上に……まだ里では秘密だが、許嫁である」
「「許嫁!?」」
お米を食べようとしていたスインドさんと一緒に声を上げてしまったわ!!
クレハはと言うと……恥ずかしいのか、カウンターに顔を擦り付けていたのだった。
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