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第20話 もうひとりの小さな『編集長』は?
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あちらの骨格に変化があるということは、別の方でも同じ状況になっていると思うべきなのか。
『峯岸妃里』だった美少女と、彼女を抱えていた成も。元は待機場所だったソファの上で、それぞれ激痛に耐えながら身悶えていた。
「い゛だだだだだだ!?」
「いって!? めっちゃ痛!? フェイ! お前は大丈夫か!?」
成は布に包んだ美少女を一瞥してから、奥にいるはずの『篠崎』だった相棒に声を投げかけた。この段階に来たと言うことは、彼もまた同じ状況になっていておかしくないからだ。
「ぼく……の、方、は! き、にしなくて」
「全然ダメじゃん!? こっちの『AKIRA』が仕上がったら、どーすんだよ!! 向こうが『マチャ』って決定したら、ここ以外んとこに引き離さなきゃならねぇじゃん!!」
軋む音は聞きたくないが、この美少女の次の姿によっては東京都内に在籍するわけにはいかない。成も、この『小さい編集長』をマネージメントする立場として……朱里に辿り着くまではサポート業に専念しなくてはいけないからだ。
それを『フェイ』もわかってくれたのか、いきなりドアを蹴破る爆音が響いてくる。
「……ははは。若手を指導する年長者としては。ボクは老年層であれ、その新人を連れて行かねばいけないのかな?」
出てきたのは、篠崎ではなかった。クセの強い金髪をざっくばらんにカットした髪型。銀の羽織に漆黒の着物。肌は雪のように白く、目は薄い緑。口調も乱雑に聞こえ、丁寧さが売りだった『篠崎』の面影がない男が出てきたのだ。
成はぽかんとしたかったが、まだ骨格が定まらないために呆れることは出来ないでいた。
「……はっ! 完全に『フェイ』だな? 蜜でコーティングされてた『皮』は溶けきったか?」
「何を言っているんだ? ボクは老年層と言ったろ? 『篠崎涼夜』を演じるのは容易いことだ。お前さんのが下手くそじゃないか?」
「い゛だだだだだだ!? 俺は! 成なんだから、粗雑なまんまだろ!? なんか、『五条悠馬』よりデカくなんねぇか!? あだだだ!!」
「……基本が『熊タイプ』って覚えておくんだな。あの子たちの『好みの共通点』くらい覚えておけと言われただろうに」
「熊? あ゛!?」
フェイの付け足しに、腰骨が大きく歪み……しまいには巻きついていた『布』の変化も起きたのかしゅるりと動いていく。痛みが次第に引いていく気配がすると、大きく息を吐けた。
「おーおー? 熊タイプでそれか? 長兄設定だから……厳ついなあ?」
「いててて。そりゃ、『最初の夫婦』が俺とあいつだろう? 好みがデカい熊タイプ……って、あれ?」
声質が変わるのはいつも通りではあるが、『五条悠馬』より深みのある低い声に設定された気がした。成は鏡を見ようと立ちあがろうとしたが、フェイが既に用意していたのか折り畳みの鏡が目の前にあった。
姿を見て、口があんぐりと開いてしまうのに、フェイはゲラゲラと笑い出したが。
「あははは!? あの子たちはどーしたってご執心になってしまうからなあ! 『マサ』と『シゲ』のそれぞれの最初を『自分たちの好み』にするのは当然だろう! ボク自身は『仲介』として、ばあちゃんに寄せたこんな見た目だがな?」
さらに、フェイがゲラゲラ笑っても成は混乱で頭が回らないでいた。異界の編纂依頼の、張本人の若い頃に似せておけば取り合いにならない。マサとシゲ、それぞれの最愛が決めたとなれば、してやられたと思うしかない。
今まで、蜜で伝達してきた『互いの好み』の情報を交換するくらい、女性陣にとっては簡単だ。
選出した編集者らの褒賞を、『一番平和的に』するなど。何千通りの組み合わせを計算することも、ケアマネージャー側と組めば簡単。
おそらく、ゲラゲラ笑っているフェイの外見を整えたのも同一人物であれば。
「……ばあちゃんらの、手のひらで踊らされていただけかよ」
「心を掻き乱す演出も、言葉を借りるなら『少しのセンシティブ』とやらだろうな? 王の選出など、あの人たちは何万年も計算してたんだよ」
「……てーと」
あえて、引き離した『AKIRA』の中身。
向こうは政に任せたので、骨格が変わっても大丈夫なはず。
ソファからの異音も消えたので、痛みも落ち着いたはずだから起きるはずと振り返れば。被せていたブランケットからは何故か、『男の脚』が見えていた。
「お前さん、クーの相手を連れてきたんじゃ??」
「連れてきたぞ?? AKIRAのはずだぞ?? 向こうはマチャだから……??」
「完全に細身の男だが?? まさか、雌雄同体ってやつか?」
「「いやいやいや!?」」
男なら遠慮なく見れるので、フェイがさっと布を剥がせば。ソファの上に乗っていたのは、成が異界で最後に皮を被った赤毛の青年体だった。体型以外、確実に同じ姿である。記憶が新しいので見間違いはなかった。
『峯岸妃里』だった美少女と、彼女を抱えていた成も。元は待機場所だったソファの上で、それぞれ激痛に耐えながら身悶えていた。
「い゛だだだだだだ!?」
「いって!? めっちゃ痛!? フェイ! お前は大丈夫か!?」
成は布に包んだ美少女を一瞥してから、奥にいるはずの『篠崎』だった相棒に声を投げかけた。この段階に来たと言うことは、彼もまた同じ状況になっていておかしくないからだ。
「ぼく……の、方、は! き、にしなくて」
「全然ダメじゃん!? こっちの『AKIRA』が仕上がったら、どーすんだよ!! 向こうが『マチャ』って決定したら、ここ以外んとこに引き離さなきゃならねぇじゃん!!」
軋む音は聞きたくないが、この美少女の次の姿によっては東京都内に在籍するわけにはいかない。成も、この『小さい編集長』をマネージメントする立場として……朱里に辿り着くまではサポート業に専念しなくてはいけないからだ。
それを『フェイ』もわかってくれたのか、いきなりドアを蹴破る爆音が響いてくる。
「……ははは。若手を指導する年長者としては。ボクは老年層であれ、その新人を連れて行かねばいけないのかな?」
出てきたのは、篠崎ではなかった。クセの強い金髪をざっくばらんにカットした髪型。銀の羽織に漆黒の着物。肌は雪のように白く、目は薄い緑。口調も乱雑に聞こえ、丁寧さが売りだった『篠崎』の面影がない男が出てきたのだ。
成はぽかんとしたかったが、まだ骨格が定まらないために呆れることは出来ないでいた。
「……はっ! 完全に『フェイ』だな? 蜜でコーティングされてた『皮』は溶けきったか?」
「何を言っているんだ? ボクは老年層と言ったろ? 『篠崎涼夜』を演じるのは容易いことだ。お前さんのが下手くそじゃないか?」
「い゛だだだだだだ!? 俺は! 成なんだから、粗雑なまんまだろ!? なんか、『五条悠馬』よりデカくなんねぇか!? あだだだ!!」
「……基本が『熊タイプ』って覚えておくんだな。あの子たちの『好みの共通点』くらい覚えておけと言われただろうに」
「熊? あ゛!?」
フェイの付け足しに、腰骨が大きく歪み……しまいには巻きついていた『布』の変化も起きたのかしゅるりと動いていく。痛みが次第に引いていく気配がすると、大きく息を吐けた。
「おーおー? 熊タイプでそれか? 長兄設定だから……厳ついなあ?」
「いててて。そりゃ、『最初の夫婦』が俺とあいつだろう? 好みがデカい熊タイプ……って、あれ?」
声質が変わるのはいつも通りではあるが、『五条悠馬』より深みのある低い声に設定された気がした。成は鏡を見ようと立ちあがろうとしたが、フェイが既に用意していたのか折り畳みの鏡が目の前にあった。
姿を見て、口があんぐりと開いてしまうのに、フェイはゲラゲラと笑い出したが。
「あははは!? あの子たちはどーしたってご執心になってしまうからなあ! 『マサ』と『シゲ』のそれぞれの最初を『自分たちの好み』にするのは当然だろう! ボク自身は『仲介』として、ばあちゃんに寄せたこんな見た目だがな?」
さらに、フェイがゲラゲラ笑っても成は混乱で頭が回らないでいた。異界の編纂依頼の、張本人の若い頃に似せておけば取り合いにならない。マサとシゲ、それぞれの最愛が決めたとなれば、してやられたと思うしかない。
今まで、蜜で伝達してきた『互いの好み』の情報を交換するくらい、女性陣にとっては簡単だ。
選出した編集者らの褒賞を、『一番平和的に』するなど。何千通りの組み合わせを計算することも、ケアマネージャー側と組めば簡単。
おそらく、ゲラゲラ笑っているフェイの外見を整えたのも同一人物であれば。
「……ばあちゃんらの、手のひらで踊らされていただけかよ」
「心を掻き乱す演出も、言葉を借りるなら『少しのセンシティブ』とやらだろうな? 王の選出など、あの人たちは何万年も計算してたんだよ」
「……てーと」
あえて、引き離した『AKIRA』の中身。
向こうは政に任せたので、骨格が変わっても大丈夫なはず。
ソファからの異音も消えたので、痛みも落ち着いたはずだから起きるはずと振り返れば。被せていたブランケットからは何故か、『男の脚』が見えていた。
「お前さん、クーの相手を連れてきたんじゃ??」
「連れてきたぞ?? AKIRAのはずだぞ?? 向こうはマチャだから……??」
「完全に細身の男だが?? まさか、雌雄同体ってやつか?」
「「いやいやいや!?」」
男なら遠慮なく見れるので、フェイがさっと布を剥がせば。ソファの上に乗っていたのは、成が異界で最後に皮を被った赤毛の青年体だった。体型以外、確実に同じ姿である。記憶が新しいので見間違いはなかった。
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