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ケサランパサラン
第4話『優しいスノーボールクッキー』
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美兎の様子が少しおかしい。
せっかくの、隆輝のデザートが出てきたのに、火坑の目で見ても、彼女が浮かない顔をしているのだ。
何か体調を崩してしまったのかと思ていると、座敷童子の真穂がツンツンと美兎の腕をつついた。
「みーう? 出しなよ?」
「けど……」
「せっかく作ったんだからさー?」
「え、湖沼ちゃん。何か作ってくれたの??」
「俺も食べたーい!」
美兎自身の手作り。
その言葉に、火坑は何とも言い難い幸福感と焦燥感が心の内側を駆け巡った。最近気づいたばかりの、美兎を想っている恋心と、ただの男としての独占欲。
だが、この中で知っているのは真穂だけだ。それに今日告げるつもりはない。店とは違う、美兎と出かけることで親睦を深めれたらな、と。それだけを思っていたのに。
どうしてか、隆輝と沓木がいると言うのに、随分とあやかしと言うよりも人間臭くなってしまっている。元畜生であったはずが、やはり長くあやかしとしての生を得たためか。
とりあえず、美兎が何を作ってきたのか気になった。紙袋の大きさからすると全員分あるようだが。
「え……っと、大したものではないんですが。……クッキーを」
紙袋から取り出してくれたのは、雪の玉に見立てたような……可愛いらしいクッキーの袋だった。自炊は出来なくないとは聞いていたが、そのクッキーを見ると頑張って作ってくれたのだなと納得が出来た。
「湖沼ちゃんの手作りクッキー!!」
「スノーボールクッキー!? 作ってくれたんだ?!」
「……作ってくれた?」
「俺がレシピ教えてあげたんだよ?」
そう言えば、隆輝と美兎が会うのは今日が初めてではなかったようだ。紅葉狩りの誘いも、隆輝がLIMEで火坑に珍しく聞いてきたのだから。なら、あの時に沓木と真穂も一緒だったかもしれない。
だが、何故火坑だけを別で誘ったのだろうか。四人だけでも十分に楽しめるだろうに。
それと、随分と思い上がった想像をしてしまうが、今日のために作ったのだなと思うことにした。
美兎は、全員に行き渡るように作ったらしく、一個の量もそれなりに多い。数個食べたら、自宅に持ち帰ろうと火坑は決めた。
『いただきます』
改めて手を合わせてから、せっかくなので美兎のスノーボールクッキーの包みを開けた。丁寧に包装されているので、持ち帰る時に元に戻しやすいようにする。
半分は粉砂糖、半分はココア。それぞれ大きな袋の中に小分けして入っていた。どちらにしようか悩んだが、甘過ぎるのが得意ではないのでココアを手に取った。
(……これは……)
隆輝がレシピを教えたと言ったが、美兎を包み込む空気と霊力が込められていた。
優しく、噛めばほろっと崩れる食感だけでなく。含まれている空気と彼女の霊力がわずかでも火坑の中に浸透していく。心の欠片だけでも、美兎の霊力は最高部類であるのに……これは至高と言ってもいいかもしれない。
甘さの中にほろ苦さがあるココアは決して高級品ではないはずが、いくらでも食べれてしまいそうだ。だが、ここは我慢して、食べ進める手を止めた。
「美味しいですよ、美兎さん」
そして、嘘偽りない感想を告げると、何故か彼女は顔を真っ赤にしてしまったが。
「よかった……です」
恥じらう表情も、本当に愛らしい。その表情をさせたのが自分だと思うと、火坑は心臓が早鐘を打つかのように、気持ちまで満たされていくようだった。
期待してしまうではないか、と聞いてしまいそうになるが今は二人きりではない。
真穂も、沓木に隆輝だっているのだ。いくら火坑でも恥ずかしくて聞けやしない。
火坑が告げてから、真穂達も美兎の手作りクッキーを美味しい美味しいと褒めちぎっていた。火坑も次にプレーンのスノーボールクッキーを口にして、隆輝が持ってきた紅茶を含むと……これはコーヒーの方が合うのではと思った。
なら、劣りはするが缶コーヒーでも買って来ようと、いつも持っている携帯用のマイバックを手に自販機に向かった。
せっかくの、隆輝のデザートが出てきたのに、火坑の目で見ても、彼女が浮かない顔をしているのだ。
何か体調を崩してしまったのかと思ていると、座敷童子の真穂がツンツンと美兎の腕をつついた。
「みーう? 出しなよ?」
「けど……」
「せっかく作ったんだからさー?」
「え、湖沼ちゃん。何か作ってくれたの??」
「俺も食べたーい!」
美兎自身の手作り。
その言葉に、火坑は何とも言い難い幸福感と焦燥感が心の内側を駆け巡った。最近気づいたばかりの、美兎を想っている恋心と、ただの男としての独占欲。
だが、この中で知っているのは真穂だけだ。それに今日告げるつもりはない。店とは違う、美兎と出かけることで親睦を深めれたらな、と。それだけを思っていたのに。
どうしてか、隆輝と沓木がいると言うのに、随分とあやかしと言うよりも人間臭くなってしまっている。元畜生であったはずが、やはり長くあやかしとしての生を得たためか。
とりあえず、美兎が何を作ってきたのか気になった。紙袋の大きさからすると全員分あるようだが。
「え……っと、大したものではないんですが。……クッキーを」
紙袋から取り出してくれたのは、雪の玉に見立てたような……可愛いらしいクッキーの袋だった。自炊は出来なくないとは聞いていたが、そのクッキーを見ると頑張って作ってくれたのだなと納得が出来た。
「湖沼ちゃんの手作りクッキー!!」
「スノーボールクッキー!? 作ってくれたんだ?!」
「……作ってくれた?」
「俺がレシピ教えてあげたんだよ?」
そう言えば、隆輝と美兎が会うのは今日が初めてではなかったようだ。紅葉狩りの誘いも、隆輝がLIMEで火坑に珍しく聞いてきたのだから。なら、あの時に沓木と真穂も一緒だったかもしれない。
だが、何故火坑だけを別で誘ったのだろうか。四人だけでも十分に楽しめるだろうに。
それと、随分と思い上がった想像をしてしまうが、今日のために作ったのだなと思うことにした。
美兎は、全員に行き渡るように作ったらしく、一個の量もそれなりに多い。数個食べたら、自宅に持ち帰ろうと火坑は決めた。
『いただきます』
改めて手を合わせてから、せっかくなので美兎のスノーボールクッキーの包みを開けた。丁寧に包装されているので、持ち帰る時に元に戻しやすいようにする。
半分は粉砂糖、半分はココア。それぞれ大きな袋の中に小分けして入っていた。どちらにしようか悩んだが、甘過ぎるのが得意ではないのでココアを手に取った。
(……これは……)
隆輝がレシピを教えたと言ったが、美兎を包み込む空気と霊力が込められていた。
優しく、噛めばほろっと崩れる食感だけでなく。含まれている空気と彼女の霊力がわずかでも火坑の中に浸透していく。心の欠片だけでも、美兎の霊力は最高部類であるのに……これは至高と言ってもいいかもしれない。
甘さの中にほろ苦さがあるココアは決して高級品ではないはずが、いくらでも食べれてしまいそうだ。だが、ここは我慢して、食べ進める手を止めた。
「美味しいですよ、美兎さん」
そして、嘘偽りない感想を告げると、何故か彼女は顔を真っ赤にしてしまったが。
「よかった……です」
恥じらう表情も、本当に愛らしい。その表情をさせたのが自分だと思うと、火坑は心臓が早鐘を打つかのように、気持ちまで満たされていくようだった。
期待してしまうではないか、と聞いてしまいそうになるが今は二人きりではない。
真穂も、沓木に隆輝だっているのだ。いくら火坑でも恥ずかしくて聞けやしない。
火坑が告げてから、真穂達も美兎の手作りクッキーを美味しい美味しいと褒めちぎっていた。火坑も次にプレーンのスノーボールクッキーを口にして、隆輝が持ってきた紅茶を含むと……これはコーヒーの方が合うのではと思った。
なら、劣りはするが缶コーヒーでも買って来ようと、いつも持っている携帯用のマイバックを手に自販機に向かった。
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