名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

櫛田こころ

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雪女

第6話 心の欠片『高菜と明太子の炒飯』

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 真穂まほのお節介とは言え、こんなにも急で大丈夫なのだろうか。

 花菜はななの消滅が近いせいもあるから、急いで処置を施そうとしたかもしれない。あやかしに大して詳しくもない美兎みうがとやかく言えた立場ではないが。


「花菜も久しぶりだなあ? 俺に話?」


 ろくろ首の盧翔ろしょうは花菜を見ると、糸目を殊更に緩めていく。先日に少々知った程度ではあるが……経緯までは聞いていないけれど、彼も花菜に一定以上の好意を抱いているのがよくわかった。


「え、あ!? そ……の!!」


 花菜の方が好意を態度で表しているのが大きく見えているが、盧翔は知ってか知らずか気づいていないか。彼がこちらに来ると、黒いレザーの手袋をした手でぽんぽんと軽く彼女の白い髪を撫でた。


「落ち着きなって?……ちょい、真穂様達とは別の席でいいか?」
「ふぇ!?」


 美兎は確信した。この男性は、おそらく半分以上は気づいているのだろう。だが、花菜の可愛らしい反応についつい意地悪したくなっている感じ。悪いあやかしではないが、好きな相手の可愛い反応を見たいだけかも。

 盧翔は花菜の手を取ると、くいっと引っ張って別のソファ席へと彼女を連れて行ってしまう。

 美兎は呆気に取られてしまったが、真穂はケラケラと笑っていた。


「ようやく、お互い落ち着くわねぇ?」
「真穂ちゃん……」
「なぁに?」
「盧翔さんに、なんてメッセージ送ったの??」
「んー? 『花菜の危機。さっさと来なさい?』程度よ?」
「? それにしては……普通だったけど」
「あいつもあやかしだもの。雪女の特性は知っているはずだわ。その思われる相手が自分だとは思ってないでしょうけど」
「気づいて……ないの?」
「あいつ、結構鈍感だもの? たーだ、さっきの花菜の反応でちょっとだけ自信は持てたでしょうけど」


 それでも大丈夫か心配になって、美兎はそぉーっとあちらの席を見てみる。向かい合わせで座っている二人は、何かを話しているようだ。少々距離があるのと、声が小さいのであまりよく聞こえないでいる。

 だが、盧翔が手を差し出す動作をした時に、花菜は盛大に慌てて席から落ちてしまいそうになった。その危機を、盧翔はすかさず受け止めてたが。……出歯亀になるつもりはないが、何があったかもの凄く気になった美兎である。


「お待たせ致しました、湖沼こぬまさんの心の欠片で作らせていただいた『明太子炒飯』です」


 とここで、季伯きはくが料理を持って来てくれた。その食欲を掻き立てる香りに、美兎のお腹は限界を告げてきた。なにせ、今は深夜に近い。夕飯を食べていないから、それはもう辛かった。

 花菜もそうだろうが、盧翔が笑い声を上げながら彼女を抱きしめていたので……ああ、うまくいったんだな、と消滅を免れた事に美兎はほっと出来た。

 なので、改めて炒飯に向き合って手を合わせた。

 出来立て熱々の明太子炒飯の味は……たっぷり使われた明太子の食感と辛味に風味。さらに、刻んだ高菜の辛味と塩気が加わって、ぷちぷちやほろほろと歯で楽しめる食感と味わいが……火坑かきょうが作ったらどんな味わいになるのか。

 結局は、美兎も自分の恋に諦めをすることが出来ないと思ったのだ。


「真穂様! 俺と花菜、付き合います!!」


 美兎もだが、真穂も半分くらい炒飯を食べ終えたところで盧翔が花菜を連れて戻ってきた。

 真穂は口に入れていた炒飯をしっかり食べてから、ニンマリと口端を緩めた。


「ちゃーんと、消滅手前までさせた責任取んなさいよ?」
「……それはもう」
「お、お世話……かけました」


 今までにないくらい、顔を真っ赤にさせた花菜から腹の虫が限界である事を知らされ。季伯が残して置いてくれた炒飯で二人もお腹を満たすことになった。
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