王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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番外編②

第160話『B級グルメパーティーへ』②

 ほんとは出来立て熱々を食べたかったけれど。

 半分片付けながら調理していたイツキを除け者になんて出来ないから、サフィアといっしょに片付けを手伝ってから食堂に料理を運んだ。

 唐揚げ丼は、ボウルのような器がないからスープ皿に盛り付けられてて。

 ほかの料理は、均等に食べれるようにイツキが数を間違えないように取り分けてくれたの。私が一番食べる量は少ないのに、提案者だからって気を遣ってくれるのは流石だわ!

 席に腰かければ、憧れて仕方がなかったB級グルメたちの勢ぞろいに、よだれが出そうであぶなかった。イツキはまだいいけど、サフィアの前ではまだ王女らしく振舞っていないと呆れられちゃうもの。


「じゃ、食べましょうか?」
「ええ! いただきまーす」
「えと、では私も……頂戴いたします」
「堅苦しいのは無しよ。サフィア」


 食べ始めるのが決まったら、ここはもうベジファーストとか気にせずに『好きなもの』から食べるのが大事ね?

 まずは、油淋鶏と同じようなタレがかかった唐揚げ丼。ちょっと冷めているでしょうけど、子どもの私にはちょうどいいかも。イツキの家には、彼女が手製で作ったお箸があるからそれを借りたの。唐揚げひとつがそれなりの大きさなのに、茶色に輝くそれがまるで宝石みたいに見えちゃうのは……食欲旺盛な今の気持ちのせいね?

 ぱくっとかじりつけば、じゅわっと中から肉汁が飛び出す勢いで弾力がすごかった。

 甘酸っぱいタレとの相性もだけど。臭みもほとんど感じないジューシーな鶏もも肉の下処理の凄さは、さすがイツキとしか言いようがない。

 そこに、ご飯と続けば……もう天国、としか言葉にならないわ!! ねぎの辛みもあって、さらに甘じょっぱくなる風味が絶妙だもの!! 交互に食べると、ほかのおかずを忘れそうになるくらい!


「ふふ。満足していただけたようですね?」
「美味しすぎて言葉にならないって、こういう状況よね?」
「それはなによりです。餃子たちも冷めちゃいますよ?」
「それはいけないわ」


 唐揚げ丼がタレ付きだから、餃子は餡に味付けしてあるタイプだったけど……羽根つき餃子じゃないのに、胡椒のスパイスがちょうどよくて野菜もしゃきしゃきでたっぷり食べれそう。あと、自分でつくったフライドポテトとかもびっくりするくらい美味しかったわ!!


「……不思議と病みつきになってしまいますね」


 サフィアはお上品にひと口ずつ食べていたけど、いつもより食が進んでいるのか皿の中身がほとんどなくなっていたの。


「栄養とか気にしないで食べちゃいたいときもあるのよね? しょっちゅうだと、せっかくの食育の意味が無くなっちゃうもの」
「そうですね? もしくは、一品だけ入れるのもありですが」
「学園の食堂に、レシピ追加させちゃう?」
「しますか?」
「貴族の子どもが美味しいの、さらに覚えちゃうわ」


 毒味役も関係のない、温かい料理を出来るだけ食べて欲しいもの。その筆頭が、王女の私でよければ喜んで手本を見せてもいいでしょう?

 でも、好きな献立が毎回出るわけじゃないから……いっそ、ビュッフェスタイル導入はだめかしら? 今の定食スタイルも悪くないけど、育ち盛りには量が足りないのよね……。

 そこも踏まえて、またお父様とお話すべきかしら? 


「そうですね。でも、今は食べれるだけ食べちゃいましょう! 食後には昨日仕込んでおいたアイスが実はあるんです!!」
「素敵よ、イツキ!!」


 何味かって聞いたら……クッキークリームだなんて最強じゃないの!! はじめてのサフィアにも、食べてもらったらレシピを教えてって頼むくらいだったからね!!
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