王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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番外編②

第162話『ぎとぎと脂のネギ塩豚丼』

 にんにくを使わないので、レモンことリモニのしぼり汁と塩麹でつけ置きした豚バラ肉に。

 これまたたっぷりと刻んだネギと、ブラックペッパーの粗挽きをふりかけたそれを……大胆にフライパンで焼いていく。アーネストさんには焼けたお肉を専用のハサミでカットしていくのをお願いした。

 焼き終わったら、炊いておいたお米の上へ綺麗に並べていく。ぎどぎど脂が照り輝いているようで美しい仕上がりになっていくのが堪りません!!


「……こんな感じになるのか?」
「塩麹の少し焦げた部分がいい仕事してますよね~」
「にんにくを入れるとさらに美味いのか」
「今回は我慢ですけど」


 あとはアルベルト用の離乳食バージョンを作って、食堂にそれぞれ持っていく。メイドさんたちには控えないようにお願いしてから、席について食べることにした。


「まー? ぱー」
「アルベルトにも少し違うの用意したから、食べようね?」
「うー!」
「じゃ、食べましょう」
「ああ」


 私はお箸で、アーネストさんはフォークでそれぞれ食べ始めていく。薄切りよりも少し厚めに切った豚肉のジューシーなところに、じゅわっと広がる脂身が洪水のように押し寄せてきた。味付けに塩麹とさっぱりレモン果汁を使ったおかげで、濃過ぎる味わいにはならずにさらっと食べてしまうのが……もう、搔っ込みたい意識を止めるに必死だった。いくら異世界事情を知ってもらっている旦那様の前で、そんなはしたない行動は見せたくないもの。

 アーネストさんはひと口食べて、味が気に入ってもらえたのか搔っ込みはせずともフォークの動く手が早かった。


「どうでしょう?」
「さっぱりしているのに、脂の旨味が凄いな? これは……たしかに、いつもの食事とは違う」
「出来立て熱々が特に美味しいんですよね?」
「ああ、納得だ。冷めたら肉が固いしな」
「毒味役のいらない時代になりかけてて、本当に良かったです」


 料理長がワルシュさんになっていることと。フルコースの食べ残しの慣習を撤廃したことで、陛下方もできるだけ温かい食事を食べることが可能になってきている。リュシアーノ様の学園でも同じだそうなので、それはそれでよかった。美味しいご飯は、出来るだけ美味しい状態で食べるのが望ましい。

 いくら、アレルギーの問題などがあれど、それはそれだから。


「……しかし、止まらんな」
「もう一杯はさすがに食べれないですけど。アーネストさんはおかわりしますか?」
「出来れば……頼みたい」
「ふふ。はい」


 だと私は、ほんのちょっとのおかわりでいいだろう。目の前で大好きな人が美味しいものを満足そうに食べているだなんて、眺めているだけではもったいない。アルベルトの方も自分で食べれるようになったのか、お皿を空っぽにしてしまっていたのでおかわりを作ってあげることにした。

 丼ものもいいが、豚串も食べたいから次はそれにしようか作りながら考えていたが。

 おかわりを持って食堂に戻ると、アーネストさんが私のレシピ本を眺めていたので……何か食べたいのかと聞くことにした。
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