王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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メイドのまかない

第4話 冒険者とのファーストキス

 意識を失ってから、どれくらい経ったのだろうか?

 気がつくと、私は離宮にあるメイドの独身寮……その中の私の部屋に寝かされていたようだ。

 バーミィ殿との事は、夢かと思っていたら……ベッドの足元に影があるのが見えた。


「お? 起きたか?」

「!?」


 普通、独身寮だから異性の部屋に入ってはいけない事になっているはずなのに。

 バーミィ殿が、何故か剣の手入れをしながらベッドにもたれかかっていたのだった。


「控えていてくれたメイドちゃんに助けてもろてな? 事情話したら、ここに運んで介抱したって言われたんや」

「……そう、ですか」


 控えていらっしゃった先輩は、かなり恋語りなどがお好きな方だ。身分は私の実家には劣るけれど、仕事が出来る方なので一応尊敬している。恋語りになると性格がいささか変わるが……まさか、ここまでなさるとは。

 少々頭が痛くなったが、ため息を吐くとバーミィ殿は苦笑いなさった。


「まさか、気絶するとは思わんかったで?」


 誰のせいだ、と言いたいが……私が恋愛関連に慣れていないせいもある。お見合いもだが、男性に想いを寄せられた事もこれまで一度もない。

 この方が初めてだったから。

 ちょっと恥ずかしくなって、視線を逸らすと……バーミィ殿はベッドの端に腰掛けてから、私の髪を撫でてくださった。


「?」

「自分は受け入れてくれた事で舞い上がりかけたわ。口付けとかしたかったんに、いきなりお預けはキツかったで?」

「く?!」

「せやで? お互い好きやって確認し合ったら、そう言うもんやろ?」

「な……慣れていませんか?」

「あー……まあ、この歳やし。自分は元冒険者や。言い寄られたりもしたし、そういう奴も居った。けど……お菓子作りまでして求愛したんは、サフィアが初めてやで?」


 と言って、バーミィ殿は私の前髪をかき分けて……額に軽く口づけしてきた!?

 ちょっと熱い感触に、私は思わず俯いてしまう。なのに、バーミィ殿はそれをさせないために頭を撫でていた手で私の顎に添えて上を向かせた。


「!!?」

「なあ、ええやろ?」


 そんな、大人の色香を漂わせるような表情をしないで欲しい。

 頷きそうで、自分の限界が危うくなってしまいそうだ。いくら成人しても、私なんかまだまだ子供とそう変わりないとは自覚している。

 なのに、この方は。

 無理矢理奪う事も出来るだろうに、私の了承を得ようとしている。


(……いっそ、奪えばいいのに)


 そう、自分で思うくらい……この方に、私は絆されてしまっている。

 今腕の中にいるのは、気を失う前と変わらないがトキメキが止まらないだけ。だから、私はこの状況を既に受け止めていたのだ。


「…………私なんかで、よろしければ」

「なんかやないで? お前は…………俺の女や」


 そう告げられた直後、お互いに少し前に甘いものを食べたせいか……人生で初めてのキスは甘くてうっとりするくらい、素敵なものだったわ。

 そしてこの日から、私は彼をお名前で呼ぶことになった。
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