85 / 868
まかない婦のまかない③
第1話 別サイドでお茶会
リュシアーノ様に連れられる形で、まだ数回しか入らせてもらっていない彼女のお部屋に入った後。
リュシアーノ様はメイドさんにお茶を用意させてから、私に席に座るように告げる。これはまだ二度目だ。
マナーだなんて、現代社会の会社員程度の作法しか知らない私だけど、リュシアーノ様は気にされていない。と言うより、この方もある意味で私と同郷の出身。
前世が日本人で、名前は『蒼葉若菜』さん。私とは全く接点のない人だが……ネルヴィスさんからの最初の告白でその記憶が戻られた。
だから、私には表向きは王女様の遊び相手。実際は同郷としての友人として接して欲しいと言われている。
そして今日は、レクサスさんがサフィアさんをお茶会に誘う時に遭遇したので帰ろうとした私をここに連れてきたのだ。
「ふふ。レクサスは結構強引そうだから、サフィアは色々大慌てのはずだわ」
外見と言うか、この世界に転生されてから今は子供なのだけど……口調とかは子供っぽくはない。元々の性格も大人びていたせいもあるからだろうが。
しかし、私も別段気にしないので出されたお茶を飲む事にした。さすがは王族のメイドさんのスキルだからか私が淹れたよりも段違いに美味しい。
「そうですね。うまくいくといいですが」
「いくわよ? サフィアはああ見えて、レクサスに首っ丈だったもの」
「首っ丈……よく覚えていますね?」
「前世での先輩OLさんが時々使っていたせいね? けど、これで近衛騎士団のトップからナンバー3まで見事にくっついたわね?」
「え?」
少し意味がわからなかったので首を傾げると、リュシアーノ様は私に向かって子供の手を開いた。
「ネルは私と。アーネストはイツキ。んで、レクサスはサフィア」
「……やっぱり、皆さん人気だったんですね?」
「アーネストは自覚なかったようだけど。公爵家の次男ってことで、狙う女達は多かったわ。あなたと出かけた直後のことで……うちのメイドの一部も泣き崩れていたわよ?」
「……なんか、すみません」
「イツキが謝る事はないわ。うじうじしすぎて、アピールしないあの子達が悪いの」
ふん、と言ってリュシアーノ様はご自分のお茶を飲まれた。その所作は子供ながらもきちんとした美しさを感じる。たしか、この年齢でもマナーレッスンは日常生活に組み込まれているらしい。
「けど、レクサスさんも人気枠だったんですね?」
「そうね? 関西弁丸出しで、だらけた男だけど……顔はいいでしょ? そこから、ネル達とはタイプが違うとかで人気になったそうよ?」
「……私はお友達ですけど」
「話しやすいんでしょ? それはいいんじゃない? あいつにも、日本のこと話したの??」
「と言うか、アーネストさんに打ち明けた時にこっそり聞かれてたので」
「ふーん?」
とりあえず、サフィアさんの事は取り越し苦労にならずに済みそうだ。
私自身については、アレルギーについての式典を開くまで性別は偽らなくちゃならないが……いつなのだろうか?
出来れば、早くしていただきたい。
アーネストさんと、もっと堂々と歩きたい。
日本にいた頃よりも、随分と欲張りになったものだ。
リュシアーノ様はメイドさんにお茶を用意させてから、私に席に座るように告げる。これはまだ二度目だ。
マナーだなんて、現代社会の会社員程度の作法しか知らない私だけど、リュシアーノ様は気にされていない。と言うより、この方もある意味で私と同郷の出身。
前世が日本人で、名前は『蒼葉若菜』さん。私とは全く接点のない人だが……ネルヴィスさんからの最初の告白でその記憶が戻られた。
だから、私には表向きは王女様の遊び相手。実際は同郷としての友人として接して欲しいと言われている。
そして今日は、レクサスさんがサフィアさんをお茶会に誘う時に遭遇したので帰ろうとした私をここに連れてきたのだ。
「ふふ。レクサスは結構強引そうだから、サフィアは色々大慌てのはずだわ」
外見と言うか、この世界に転生されてから今は子供なのだけど……口調とかは子供っぽくはない。元々の性格も大人びていたせいもあるからだろうが。
しかし、私も別段気にしないので出されたお茶を飲む事にした。さすがは王族のメイドさんのスキルだからか私が淹れたよりも段違いに美味しい。
「そうですね。うまくいくといいですが」
「いくわよ? サフィアはああ見えて、レクサスに首っ丈だったもの」
「首っ丈……よく覚えていますね?」
「前世での先輩OLさんが時々使っていたせいね? けど、これで近衛騎士団のトップからナンバー3まで見事にくっついたわね?」
「え?」
少し意味がわからなかったので首を傾げると、リュシアーノ様は私に向かって子供の手を開いた。
「ネルは私と。アーネストはイツキ。んで、レクサスはサフィア」
「……やっぱり、皆さん人気だったんですね?」
「アーネストは自覚なかったようだけど。公爵家の次男ってことで、狙う女達は多かったわ。あなたと出かけた直後のことで……うちのメイドの一部も泣き崩れていたわよ?」
「……なんか、すみません」
「イツキが謝る事はないわ。うじうじしすぎて、アピールしないあの子達が悪いの」
ふん、と言ってリュシアーノ様はご自分のお茶を飲まれた。その所作は子供ながらもきちんとした美しさを感じる。たしか、この年齢でもマナーレッスンは日常生活に組み込まれているらしい。
「けど、レクサスさんも人気枠だったんですね?」
「そうね? 関西弁丸出しで、だらけた男だけど……顔はいいでしょ? そこから、ネル達とはタイプが違うとかで人気になったそうよ?」
「……私はお友達ですけど」
「話しやすいんでしょ? それはいいんじゃない? あいつにも、日本のこと話したの??」
「と言うか、アーネストさんに打ち明けた時にこっそり聞かれてたので」
「ふーん?」
とりあえず、サフィアさんの事は取り越し苦労にならずに済みそうだ。
私自身については、アレルギーについての式典を開くまで性別は偽らなくちゃならないが……いつなのだろうか?
出来れば、早くしていただきたい。
アーネストさんと、もっと堂々と歩きたい。
日本にいた頃よりも、随分と欲張りになったものだ。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。