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騎士のまかない⑫
第3話 モモの花が②
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どうお叱りをされても、受け止める覚悟ではいたが……リュシアーノ王女殿下は、大きくため息を吐くだけだった。
「レディ同士の会話を盗み聞き?? 騎士としてはよろしくない行為だけれど……きちんと詫びを言うのなら、許すわ」
「……殿下」
「ありがとうございます、リュシアーノ様」
俺が言うべきなのに、イツキまで殿下に礼の言葉を言ってくれた。
俺も、感謝の言葉を口にさせていただいてから……少し前に、実家に取りに行ったモモの樹の枝を、一部だが殿下とイツキの前に出すことにした。
「「これは……!!」」
「……お聴きした時に思い出したのです。我が公爵家には、これがあると」
「見事ね……」
ほのかに香る、甘い花の匂い。
薄ピンクと濃いピンクの花びらが混在する枝を見ると……イツキもだが、殿下もちょんちょんと花を指の先で撫でられた。
「日本のと少し違いますね??」
「桃にも色んな種類があるから、これもそうかもね??」
「……おふたりの世界では、この花を何のために??」
「あら? そこは聞いてなくて??」
「……はい」
正直に言うと、枝をひとつ、テーブルに置くように言われ。殿下とイツキは元の席に腰掛けられた。俺の席がないのは当然なので、イツキの横に立たせてもらうことに。
「私達の世界……具体的には、出身国の『日本』ってところだと……時節ごとに、行事などがあるのよ。この桃の花を使った『桃の節句』もそのひとつ」
「モモのセック……??」
「女の子のための行事みたいなものです。健やかな成長を願い、幸せを願って食事会などをするんです」
「女の子……それで殿下が??」
「今の私はその年齢だもの。雛人形とかはないけど……時期的にそうだねってイツキと話してたってわけ」
もともと大人びた方でいらっしゃるが……俺にも正体を見せて下さったのに、身体のことがなければたしかにイツキと同じくらいだ。
モモの花びらを触りながら微笑む様子は、あまり子供のように見えない。
「でもせっかくですし、やりませんか? 桃の節句もとい、『ひな祭り』を」
「イツキ!! 私も手伝いたいわ!!」
「ふふ。つまみ食いが目的ですか??」
「……なんでバレちゃうのかしら」
見えないと思ったが、やはりまだ子供らしさも残っている。前世……だと言う女性の記憶もそのまま受け継いだかもしれないが。
以前の殿下よりも、俺にとっては親しみが持てた気がした。
「…………労力が必要であれば。イツキ、俺も使ってくれ」
「いいんですか?? あ、労力……と言うか、レクサスさんに聞いてほしい材料があるんですが」
「……あいつに??」
「ひな祭りに必要な飲み物の材料なんですが。東方大陸にあるかどうか確認したくて。リュシアーノ様はお酒ダメですから、代用品なんですけど」
「……なるほど」
下手に調達するより、ずっといいだろう。『アマザケ』と言う材料を聞くべく……俺はモモの花をすべてイツキ達に渡してから執務室に戻った。
「甘酒?? それがイツキはんのご要望??」
戻ったらレクサスがいたので、真っ先に聞くとすぐに返答をしてくれた。
「ああ。イツキ……と言うか、殿下が飲まれるらしいが」
「ほーん? あんなあんまい飲み物……わざわざ殿下に??」
「そんな甘いのか??」
「砂糖入れとらんのに、めちゃくちゃ甘いんや……」
だけど、体に良いからとレクサスの母親が定期的に送ってくれるらしく、亜空間収納に入れてあるらしい。すぐにそれを出してくれると……米に白い何かをまぶしてあるように見えたのだ。
「レディ同士の会話を盗み聞き?? 騎士としてはよろしくない行為だけれど……きちんと詫びを言うのなら、許すわ」
「……殿下」
「ありがとうございます、リュシアーノ様」
俺が言うべきなのに、イツキまで殿下に礼の言葉を言ってくれた。
俺も、感謝の言葉を口にさせていただいてから……少し前に、実家に取りに行ったモモの樹の枝を、一部だが殿下とイツキの前に出すことにした。
「「これは……!!」」
「……お聴きした時に思い出したのです。我が公爵家には、これがあると」
「見事ね……」
ほのかに香る、甘い花の匂い。
薄ピンクと濃いピンクの花びらが混在する枝を見ると……イツキもだが、殿下もちょんちょんと花を指の先で撫でられた。
「日本のと少し違いますね??」
「桃にも色んな種類があるから、これもそうかもね??」
「……おふたりの世界では、この花を何のために??」
「あら? そこは聞いてなくて??」
「……はい」
正直に言うと、枝をひとつ、テーブルに置くように言われ。殿下とイツキは元の席に腰掛けられた。俺の席がないのは当然なので、イツキの横に立たせてもらうことに。
「私達の世界……具体的には、出身国の『日本』ってところだと……時節ごとに、行事などがあるのよ。この桃の花を使った『桃の節句』もそのひとつ」
「モモのセック……??」
「女の子のための行事みたいなものです。健やかな成長を願い、幸せを願って食事会などをするんです」
「女の子……それで殿下が??」
「今の私はその年齢だもの。雛人形とかはないけど……時期的にそうだねってイツキと話してたってわけ」
もともと大人びた方でいらっしゃるが……俺にも正体を見せて下さったのに、身体のことがなければたしかにイツキと同じくらいだ。
モモの花びらを触りながら微笑む様子は、あまり子供のように見えない。
「でもせっかくですし、やりませんか? 桃の節句もとい、『ひな祭り』を」
「イツキ!! 私も手伝いたいわ!!」
「ふふ。つまみ食いが目的ですか??」
「……なんでバレちゃうのかしら」
見えないと思ったが、やはりまだ子供らしさも残っている。前世……だと言う女性の記憶もそのまま受け継いだかもしれないが。
以前の殿下よりも、俺にとっては親しみが持てた気がした。
「…………労力が必要であれば。イツキ、俺も使ってくれ」
「いいんですか?? あ、労力……と言うか、レクサスさんに聞いてほしい材料があるんですが」
「……あいつに??」
「ひな祭りに必要な飲み物の材料なんですが。東方大陸にあるかどうか確認したくて。リュシアーノ様はお酒ダメですから、代用品なんですけど」
「……なるほど」
下手に調達するより、ずっといいだろう。『アマザケ』と言う材料を聞くべく……俺はモモの花をすべてイツキ達に渡してから執務室に戻った。
「甘酒?? それがイツキはんのご要望??」
戻ったらレクサスがいたので、真っ先に聞くとすぐに返答をしてくれた。
「ああ。イツキ……と言うか、殿下が飲まれるらしいが」
「ほーん? あんなあんまい飲み物……わざわざ殿下に??」
「そんな甘いのか??」
「砂糖入れとらんのに、めちゃくちゃ甘いんや……」
だけど、体に良いからとレクサスの母親が定期的に送ってくれるらしく、亜空間収納に入れてあるらしい。すぐにそれを出してくれると……米に白い何かをまぶしてあるように見えたのだ。
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