王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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国王のまかない⑥

第4話『悪魔の皮付きフライドポテト』

 そうして、しばらく待った後……カラッと揚がったじゃがいもが出来上がった。

 まるで、細身の櫛のような形だが……イツキはその上に薄ピンク色の岩塩を振りかけた。ピンクから少し薄ネズミや黒に変色していくが、独特の風味を持つ岩塩に素揚げしたじゃがいもの組み合わせ。

 どのような味わいになるのか、イツキから手渡されたフォークを手に……じゃがいもに刺せば、すっとフォークが刺さった。

 持ち上げれば、揚げたての証拠である湯気が凄かった。お忍びで出掛けた酒場以外ではあまり見なかったが……フルコースが無くなったことで、俺も食卓で目にすることが出来るようになった。

 であれば、これは物凄く熱いのだろう。

 何度か息を吹きかけてから……端の方をまずかじってみた。


「ほふ!?」


 端をかじっただけでも、物凄い熱さが口に伝わってきた。火傷……はしなかったが、ほふほふと言うのを止められない。ここにエールで口を冷やそうと含めば……!?


「……なんだこれは」


 エールのタンサンの刺激もだが、まだ冷たいお陰で芋の熱さは消えた。のだが……芋がまとっている油、塩気、内側のほくほくとした部分。

 それらが、エールと一緒にしただけで……豆の時のように、素晴らしい組み合わせとなったのだ。それが分かると、俺は芋の熱さを気にせずに口に含んで……芋、エール……芋、エールを交互に口にしていく!!

 これが、例えようがないくらいの快感となった!!


「ふふ。お気に召しましたか?」


 皿の半分くらいの芋を口に入れた頃に、イツキがニコニコしながら聞いてきた。自分も芋を口にしてはいたが、エールは飲んでいなかった。


「ああ! これは凄いな!! 揚げたてだから余計に美味く感じる!!」

「ふふ。あと、お花見の時にお持ちした唐揚げもいいですが……大抵の揚げ物にはエールがよく合いますね?」

「……あの揚げ物か?」


 時々、素揚げではない揚げ物が食卓に並ぶが……おそらくイツキの提案なのだろう。たしかに、ああいう揚げ物も凄く合いそうだ。


「それはまたの機会に。陛下、少し味を変えてみませんか?」

「味を??」

「これに、ケチャップをつけるのも美味しいんです」

「……ケチャップ?」


 市井らは使う赤い調味料だとは知っている。

 トマトを主体にしたソースの一種らしいが……俺はイツキが来て、フルコースがなくなってからワルシュが作ったことにしていた『オムライス』と言うのを口に出来た。

 赤いリーゾだったが、甘酸っぱいのに意外に食べやすくて……花見の弁当の時も卵に巻かれた『オニギリ』にも加わっていたが。


「ほんの少しだけ、お芋につけてみてください」


 瓶から小皿に少量取り出したケチャップは……そのままではあまり見たことがなかったが、赤い。めちゃくちゃ赤い。

 事前に口にしていなければ……俺は拒否していただろう。だから、興味がある今は……芋の先端に少量つけて、口に入れてみた。


「!!?」


 甘酸っぱい。

 しょっぱい。

 甘酸っぱい。

 交互に味が変わっていくが、芋のほくほくした部分と合わさると……これが正解と言わんばかりに、試しにエールを口に含めば。塩味だけで満足していた自分を恥ずかしく思ったのだ。


「……これは!!」

「ふふ。お気に召したようですね?」

「素晴らしい!!…………イツキ、他にもあるのか?」

「気づきましたか?……少々悪いことですが、ケチャップとマヨネーズを混ぜたりしたのも意外と」

「頼む!」


 と言うわけで、素揚げの芋とエールを堪能した俺は……翌日、かなり久しぶりに二日酔いになり、事情を知っていたワルシュから説教をされることになった。

 隠しきれなかったため、ヘルミーナにも久しぶりに怒られてしまった……!!
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