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おまけ その後のその後
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※18禁です。アキラとミカエルのアレ。
※※※
――やってしまった。
俺は凄まじいまでの羞恥心と毛布にくるまって、どこかに逃げ出したい衝動と戦っていた。
レジーナの離宮の俺の部屋。ここの寝室はとにかく広いし、映画の中でしか見たことのないような天蓋付きのベッドが置いてある。寝心地は最高だと思うが、今の俺は寝心地どころではなくて、俺の腹に後ろから巻き付いている男らしい腕をどうやって振り払うか、そしてどこから逃げ出すかという考えだけが頭の中を占領していた。
大きな窓の外からは、朝を告げるような鳥の鳴き声が響いていて、それだけが平穏な空気を作り出していたけれども。
くっそ!
これが朝チュンってやつか!
マジか!
昨夜のことは全力で忘れたい!
忘れられないだろうけど!
「おはよう」
変な声を上げそうになって、思わず自分の手で口を塞いだ。
俺の頭の後ろから、とんでもなく嬉しそうな大天使の声が聞こえた。というか、乱れた髪の毛をその指先で避けられ、首の後ろに彼の唇が押し当てられて、とうとう俺は羞恥心が限界突破をしたのが解った。
「お、おはよう、ございます……?」
かろうじてそう返したものの、後ろに目をやることはできそうになかった。
――愛している、アキラ。
そんな彼の言葉を思い出して、見悶えしたくなる。
流された自覚はある。毎日、何度も繰り返される彼の言葉に、慣れてしまったのもある。
あー、はいはい、と適当に流しつつも、ミカエルの声の真剣さに絆された――というか。俺もちょっと、本気で悩み始めたわけで。
このままのつかず離れずの関係でいいのか、とか。
受け入れられないなら、何とかミカエルから離れるべきだ、とか思いつつも、彼に大切に扱われるのが心地よかったのだ。
好きか、と訊かれたら嫌いではないし、好き……だと思う。
でもそれは友人としてだろうか?
少なくとも恋ではないと――男性の意識の俺がそう考えている。いや、そう考えたい。
それなのに、だんだん女性としての肉体が、精神が、ミカエルのことを意識し始めた気がするのだ。
で、昨夜。
見事に、やってしまった。いつも以上に熱情的に口説かれて、多分、流されたのだ。
しかしヤバいだろう、あれは!
恋とか愛とかを抜きにして、とんでもない!
女の身体って何だこれ!
っていうか、俺の身体は女の子だから細い。腰も腕も、どこもかしこも。
そんな華奢な身体で、ミカエルにベッドに押し倒された時、改めて男性の身体って大きいのだ、と実感してしまった。
いや、まずいよな、これ。
俺の腹の上にのしかかったミカエルの体重とかに、心臓が暴れ出した時、自分がか弱い存在なのだとか思ってしまった。俺のアバター、ほぼ最強なのに。魔物だってなんだって、一人で倒せるくらい強いはずなのに。
それなのに、ミカエルが服を脱ぎながら俺を見下ろしてきた時、凄く心細く感じた。
「残念だな」
俺の右耳に唇を押し当てるようにミカエルが囁いて、俺はカオルが慌てた時に上げるような声を漏らした。猫の叫びみたいな、ちょっと情けないやつ。
「ざ、残念?」
「あんなに跡を付けようとしたのに、アキラの身体には残らない」
「跡?」
そこで、ちりっという感覚が俺の首筋に走り、ミカエルがキスマークをつけようとしたのが解った。
ま、まあ、そうだろう。
俺の身体、怪我をしてもすぐに治るし。
だから……。
だから、その。
あんなにとんでもないことをしたのに、身体に違和感が全くないわけで。
――ううううう。
俺は必死に毛布を引っ張り上げ、顔を隠そうとした。しかしそれはミカエルの手で取り払われてしまって、気が付いたら俺はベッドの上にあおむけに転がされている。
当然のことながら、俺は全裸でミカエルも全裸。
見事に割れた腹筋が目の前にあるというのは、何とも気まずいというか、心臓が暴れ出すというか。
しかも、昨夜、女としての初めての快楽に意識が飛んでしまったのか、ミカエルの首や腕には俺がつけたと思われる噛み跡が無数にあった。本当に、申し訳なくなるくらい、色々なところにまで。
そ、蘇生薬をアイテムボックスから取り出した方が……なんて考える余裕はない。
ミカエルは昨夜と同じように、俺の細い腕をベッドに押し当てるようにして、そのまま顔を俺に近づけてきた。
昨日は、男のくせに柔らかい唇をしやがって、と考える余裕もあった。
でも今は、重ねられた唇から彼の柔らかな舌が差し出されて、自分の舌と絡み合うのが妙にエロ過ぎて変な気分になる。冷静さは完全にどこかに消えてしまって、抵抗する気力も失せる。駄目だと意識では叫んでいるのに、俺は目を閉じてそれを受け入れてしまった。
ミカエルのキスは、優しいけれど容赦がない気がする。
だんだん熱のこもるキスと、彼の手が俺の手首から離れて肌をなぞりながら胸に向かうと、俺の身体が昨夜のことを思い出して微かに震えた。
「ちょ、待って」
キスの合間に、何とか俺は理性を取り戻そうとした。ミカエルの胸を手で押し返そうとしたが、あまり力が入らなかった。お腹の中が妙に熱を持ち始めたせいか、意識がそちらに向いてしまう。
何だか本当に俺、女の子みたいだ、と思った。
いや、身体は女なんだけど、女なんだけど!
背中が反ってしまったのは、ぴりぴりとした感覚に反応したからだ。
ミカエルの指が俺の胸を揉みしだき、その――一番敏感な部分を少しだけ乱暴につまんだから。
無理無理無理、本当に無理!
後で我に返ったら、きっと叫んでしまうと思う。
でも今は、それどころじゃなかった。
生まれた快感は、そのまま全身に広がる。胸から下半身へ――というか――。お腹の奥で、熱が生まれた。
それからは、あっという間だった、と言わざるを得ない。
俺の意識がまた昨夜と同じように流されて、ミカエルのやることに追いついていかないうちに、色々されてしまうわけだ。俺でさえ、こっちの世界に来てからやっていなかったこと。
太腿の内側が性感帯だということも初めて知ったし、女性の絶頂とやらまでの時間が凄く時間がかかることも知った。そして一度高みまでいってしまえば、なかなか降りてくることもできない。
それらは全部、昨夜、ミカエルに教えられた。
俺は思わず自分の顔を腕で覆い、唇を噛んで声を殺した。
閉じていた足の間に差し込まれた彼の手と、ゆっくりとした愛撫。
「昨夜は痛くしてしまって悪かった」
「……え」
俺が小さく声を返した瞬間、ミカエルは少しだけ乱暴に俺の足を割り開く。それは冷静に考えれば、情けない格好だろう。俺の左足はいつの間にかミカエルの肩に担ぎ上げられる格好になっていて、見せたくない部分が見事に――ミカエルの前に晒されたわけで。
そりゃ確かに、痛かった。
うん、最初はマジで怖かった。ミカエルの、でかいし。あれを正視するのも無理だったし、腰が引けていたと思う。
でもアバターの修復機能のせいで、無理やり開かれた身体も、すぐに痛みは消えて何もかもが快楽に変わった。認めたくはないが、もの凄く気持ちよかったけども――。
でも、また!?
もう朝なんだけど!
っていうか、昨夜のアレをもう一度!?
昨夜の俺は、もの凄く自分が弱くなった気がしたし、目の前のミカエルの背中に手を回して縋りつかないとどうにかなってしまいそうだった。
そしてミカエルは、俺があられもない格好で乱れるのを嬉しそうに見下ろして、いつもの天使の笑顔を見せた。その後、ケダモノに変わった。
それからは――思い出したくないくらい、オンナノコっぽい叫びを上げた、気がする。
うん、記憶が飛んでるから曖昧だけど。すげー恥ずかしいことをしたはずだし、言ったはずなんだ。
「待って、もう朝だし」
混乱しつつも必死に言う俺。
でもミカエルの耳は竹輪でできているのかもしれない。何も聞こえなかったふりで、にこりと笑う。
「痛くないように、今度はゆっくりやろう」
そう言って容赦なく彼のモノを押し当ててくると、じわじわと俺を押し開いて挿ってきたのだった。
っていうか、熱いよ!
受け入れる部分が、焼けるような気がする。ミカエルのモノと、俺の触れている部分が溶けあうような感覚。本当、何コレ。
「うううー……」
そう唸りながら、俺は必死に顔を手で覆った。
やることやって満足していたんじゃないのか。朝になって大人しくなるかと思ったのに、ケダモノはケダモノのままで。結局俺は、朝っぱらからもう一度、気が狂いそうな『めくるめく』体験をしたのだった。
くっそ、流されすぎにもほどがある!
「ん」
と、俺は蘇生薬をミカエルに渡す。気まずくて顔が見られないが、あれだけ激しくされても毛布を身体に巻いて歩けるのはアバターのお蔭だろう。普通の人間の女の子だったら、絶対ベッドから起き上がれないね。そのくらい、セックスって体力を使うんだってことを初めて知った。
顔が熱くて駄目だ。
本当に俺、どうしたんだ。何か、今の俺は変だ。男らしさはどこに消えた?
「ありがとう」
そう言ったケダモノ――ミカエルは、俺から瓶を受け取りながらも素早く俺の耳元にキスをするくらいの余裕はあるらしい。身体中、噛みまくってやったというのに、何でこんなに元気なのか。
あれだけ血を吸ってやったというのに、何だか妙につやつやした肌をしている。さらに、元気いっぱいの様子で俺の着替えを手伝うとかまで言い出したから、軽くその腹を殴っておいた。もっとその腹筋が割れるように祈りながら。
ミカエルは楽しそうにそれを受けて、蘇生薬を飲んでいた。
「……あのさ」
俺は昨夜、脱ぎ散らかしたままの服を拾いながら寝室を出ようとした。さすがにベッドに腰を下ろしたままの裸族に、自分の着替えるところを見せるつもりはない。また襲われそうだし。ミカエルはアバターじゃないのに無駄に元気だし。
「何だ?」
「夕べも言ったけど」
俺の言葉はもの凄く歯切れが悪いだろう。まさか、こんなことを言う羽目になるなんて、誰が思う?
「……中に出すなって頼んだのに」
「子供は三人欲しいと言ったはずだが」
「却下ー!」
「何故?」
「俺、無理、絶対無理」
「だから何故?」
「だって」
ふと、思い出すのは自分の母親の顔だ。
正直なところ、まともな家庭に育ったわけじゃない。理想的な家族像というのは頭の中にあるけれど、最悪な見本をずっと見てきたから、俺が万が一……子供ができてしまったとしても、まともな育児なんかできないし。
それに、妊娠そのものが怖いし。
むしろ、それこそが異世界のような気がする。妊娠とか、できればずっとしないまま終わりたい。
俺の表情が冴えないものに変わったことに気づき、ミカエルがベッドから降りてこちらに近寄ってきた。
……が。
「服、着てくれないかな」
我に返って、そんなことを言ってみる。
何で俺、ミカエルの裸を見て恥じ入ってんの!?
男の身体なんか、見飽きるくらい見てきたわけなのに!
「着替えたら朝食にしよう」
ミカエルは俺を抱きしめてそう言ったが、窓の外はもうすでに陽が高いですが、それは朝食に入るんですかね?
「何だ、お前はここにいたのか」
食堂として使っている大きな部屋に入るとすぐに、そこにいたアルトにミカエルが怪訝そうに声をかけた。
アルトはそれまでのんびりとお茶を飲んでいたようだったが、すぐに立ち上がって頭を下げてくる。しかし、顔を上げた彼の双眸には呆れたような色が浮かんでいた。
「おはようございます、ミカエル様」
――ああ、いたたまれない。
それでも、ありがたいことにリュカのギルド依頼の付き添いという理由で、セシリアもサクラもカオルも離宮の中にはいなかった。サクラはとんでもなく勘がいいから、俺とミカエルの間に流れる空気を読んで察するだろう。昨夜、何があったか。
でも今、何か言われたら俺は憤死するかもしれない。
「言いたくないのですが、ミカエル様……」
アルトがいつものように背筋を伸ばした姿で、礼儀正しく微笑んだ。
「言いたくないなら言わない方がいいな」
ミカエルも同じような笑みを返す。
「婚前交渉はちょっと」
「聞きたくない」
「聞いてくださいね!?」
くわっと目を吊り上げているアルトだったが、諦めるのも早かったらしい。さりげなく彼は俺を見て、どこからどう見ても健康体であると確認し、ほっとしたように息を吐いた。
いや、今、健康体なだけだからね!? あんたの主、すげーケダモノだったからね!?
っていうか、アルトにもバレてるー!?
俺はこっそりミカエルを睨みつけながらテーブルにつくと、食事をしながら午後の予定をどうするかという話を始めた。
俺はマチルダ・シティに引きこもって錬金術に取り組みたかったから、別行動したいと言ったのだが、ミカエルは王都に行かないかと提案してきた。王都にも腕のいい薬師や魔道具技師がいるし、見どころも多いと誘惑してくる。
確かに、フォルシウスが活動拠点になりつつあるから、別のところを見てみるのも楽しいだろう。
あんなことをした後だから、ミカエルと一緒に行動というのは気持ち的に落ち着かないんだよな、と思ったけれど、ごり押しされて行くことになった。
――が。
王都って、ミカエルの顔を知ってる人間が多い。
ミカエルの精霊魔法で午後だけの短い王都観光――と思ったけれど。
ギルドだったり、食事処だったり、妙に可愛い女の子たちに声をかけられているミカエルを見る羽目になった俺は、ちょっともやもやする胸を持て余すことになる。
しかも、その女の子たちに睨まれたし!
「それは嫉妬だね、お兄ちゃん」
と、後日サクラに揶揄われ、口元を変な風に歪ませながら笑い声を堪えていた。何だか、「身体から始まるなんとやら……」とか呟かれたが、聞き間違いだと信じたい。
でもこの辺りから、俺のミカエルへの感情が何なのか本気で悩み始めることになるが、またそれは別の話である。
※※※
――やってしまった。
俺は凄まじいまでの羞恥心と毛布にくるまって、どこかに逃げ出したい衝動と戦っていた。
レジーナの離宮の俺の部屋。ここの寝室はとにかく広いし、映画の中でしか見たことのないような天蓋付きのベッドが置いてある。寝心地は最高だと思うが、今の俺は寝心地どころではなくて、俺の腹に後ろから巻き付いている男らしい腕をどうやって振り払うか、そしてどこから逃げ出すかという考えだけが頭の中を占領していた。
大きな窓の外からは、朝を告げるような鳥の鳴き声が響いていて、それだけが平穏な空気を作り出していたけれども。
くっそ!
これが朝チュンってやつか!
マジか!
昨夜のことは全力で忘れたい!
忘れられないだろうけど!
「おはよう」
変な声を上げそうになって、思わず自分の手で口を塞いだ。
俺の頭の後ろから、とんでもなく嬉しそうな大天使の声が聞こえた。というか、乱れた髪の毛をその指先で避けられ、首の後ろに彼の唇が押し当てられて、とうとう俺は羞恥心が限界突破をしたのが解った。
「お、おはよう、ございます……?」
かろうじてそう返したものの、後ろに目をやることはできそうになかった。
――愛している、アキラ。
そんな彼の言葉を思い出して、見悶えしたくなる。
流された自覚はある。毎日、何度も繰り返される彼の言葉に、慣れてしまったのもある。
あー、はいはい、と適当に流しつつも、ミカエルの声の真剣さに絆された――というか。俺もちょっと、本気で悩み始めたわけで。
このままのつかず離れずの関係でいいのか、とか。
受け入れられないなら、何とかミカエルから離れるべきだ、とか思いつつも、彼に大切に扱われるのが心地よかったのだ。
好きか、と訊かれたら嫌いではないし、好き……だと思う。
でもそれは友人としてだろうか?
少なくとも恋ではないと――男性の意識の俺がそう考えている。いや、そう考えたい。
それなのに、だんだん女性としての肉体が、精神が、ミカエルのことを意識し始めた気がするのだ。
で、昨夜。
見事に、やってしまった。いつも以上に熱情的に口説かれて、多分、流されたのだ。
しかしヤバいだろう、あれは!
恋とか愛とかを抜きにして、とんでもない!
女の身体って何だこれ!
っていうか、俺の身体は女の子だから細い。腰も腕も、どこもかしこも。
そんな華奢な身体で、ミカエルにベッドに押し倒された時、改めて男性の身体って大きいのだ、と実感してしまった。
いや、まずいよな、これ。
俺の腹の上にのしかかったミカエルの体重とかに、心臓が暴れ出した時、自分がか弱い存在なのだとか思ってしまった。俺のアバター、ほぼ最強なのに。魔物だってなんだって、一人で倒せるくらい強いはずなのに。
それなのに、ミカエルが服を脱ぎながら俺を見下ろしてきた時、凄く心細く感じた。
「残念だな」
俺の右耳に唇を押し当てるようにミカエルが囁いて、俺はカオルが慌てた時に上げるような声を漏らした。猫の叫びみたいな、ちょっと情けないやつ。
「ざ、残念?」
「あんなに跡を付けようとしたのに、アキラの身体には残らない」
「跡?」
そこで、ちりっという感覚が俺の首筋に走り、ミカエルがキスマークをつけようとしたのが解った。
ま、まあ、そうだろう。
俺の身体、怪我をしてもすぐに治るし。
だから……。
だから、その。
あんなにとんでもないことをしたのに、身体に違和感が全くないわけで。
――ううううう。
俺は必死に毛布を引っ張り上げ、顔を隠そうとした。しかしそれはミカエルの手で取り払われてしまって、気が付いたら俺はベッドの上にあおむけに転がされている。
当然のことながら、俺は全裸でミカエルも全裸。
見事に割れた腹筋が目の前にあるというのは、何とも気まずいというか、心臓が暴れ出すというか。
しかも、昨夜、女としての初めての快楽に意識が飛んでしまったのか、ミカエルの首や腕には俺がつけたと思われる噛み跡が無数にあった。本当に、申し訳なくなるくらい、色々なところにまで。
そ、蘇生薬をアイテムボックスから取り出した方が……なんて考える余裕はない。
ミカエルは昨夜と同じように、俺の細い腕をベッドに押し当てるようにして、そのまま顔を俺に近づけてきた。
昨日は、男のくせに柔らかい唇をしやがって、と考える余裕もあった。
でも今は、重ねられた唇から彼の柔らかな舌が差し出されて、自分の舌と絡み合うのが妙にエロ過ぎて変な気分になる。冷静さは完全にどこかに消えてしまって、抵抗する気力も失せる。駄目だと意識では叫んでいるのに、俺は目を閉じてそれを受け入れてしまった。
ミカエルのキスは、優しいけれど容赦がない気がする。
だんだん熱のこもるキスと、彼の手が俺の手首から離れて肌をなぞりながら胸に向かうと、俺の身体が昨夜のことを思い出して微かに震えた。
「ちょ、待って」
キスの合間に、何とか俺は理性を取り戻そうとした。ミカエルの胸を手で押し返そうとしたが、あまり力が入らなかった。お腹の中が妙に熱を持ち始めたせいか、意識がそちらに向いてしまう。
何だか本当に俺、女の子みたいだ、と思った。
いや、身体は女なんだけど、女なんだけど!
背中が反ってしまったのは、ぴりぴりとした感覚に反応したからだ。
ミカエルの指が俺の胸を揉みしだき、その――一番敏感な部分を少しだけ乱暴につまんだから。
無理無理無理、本当に無理!
後で我に返ったら、きっと叫んでしまうと思う。
でも今は、それどころじゃなかった。
生まれた快感は、そのまま全身に広がる。胸から下半身へ――というか――。お腹の奥で、熱が生まれた。
それからは、あっという間だった、と言わざるを得ない。
俺の意識がまた昨夜と同じように流されて、ミカエルのやることに追いついていかないうちに、色々されてしまうわけだ。俺でさえ、こっちの世界に来てからやっていなかったこと。
太腿の内側が性感帯だということも初めて知ったし、女性の絶頂とやらまでの時間が凄く時間がかかることも知った。そして一度高みまでいってしまえば、なかなか降りてくることもできない。
それらは全部、昨夜、ミカエルに教えられた。
俺は思わず自分の顔を腕で覆い、唇を噛んで声を殺した。
閉じていた足の間に差し込まれた彼の手と、ゆっくりとした愛撫。
「昨夜は痛くしてしまって悪かった」
「……え」
俺が小さく声を返した瞬間、ミカエルは少しだけ乱暴に俺の足を割り開く。それは冷静に考えれば、情けない格好だろう。俺の左足はいつの間にかミカエルの肩に担ぎ上げられる格好になっていて、見せたくない部分が見事に――ミカエルの前に晒されたわけで。
そりゃ確かに、痛かった。
うん、最初はマジで怖かった。ミカエルの、でかいし。あれを正視するのも無理だったし、腰が引けていたと思う。
でもアバターの修復機能のせいで、無理やり開かれた身体も、すぐに痛みは消えて何もかもが快楽に変わった。認めたくはないが、もの凄く気持ちよかったけども――。
でも、また!?
もう朝なんだけど!
っていうか、昨夜のアレをもう一度!?
昨夜の俺は、もの凄く自分が弱くなった気がしたし、目の前のミカエルの背中に手を回して縋りつかないとどうにかなってしまいそうだった。
そしてミカエルは、俺があられもない格好で乱れるのを嬉しそうに見下ろして、いつもの天使の笑顔を見せた。その後、ケダモノに変わった。
それからは――思い出したくないくらい、オンナノコっぽい叫びを上げた、気がする。
うん、記憶が飛んでるから曖昧だけど。すげー恥ずかしいことをしたはずだし、言ったはずなんだ。
「待って、もう朝だし」
混乱しつつも必死に言う俺。
でもミカエルの耳は竹輪でできているのかもしれない。何も聞こえなかったふりで、にこりと笑う。
「痛くないように、今度はゆっくりやろう」
そう言って容赦なく彼のモノを押し当ててくると、じわじわと俺を押し開いて挿ってきたのだった。
っていうか、熱いよ!
受け入れる部分が、焼けるような気がする。ミカエルのモノと、俺の触れている部分が溶けあうような感覚。本当、何コレ。
「うううー……」
そう唸りながら、俺は必死に顔を手で覆った。
やることやって満足していたんじゃないのか。朝になって大人しくなるかと思ったのに、ケダモノはケダモノのままで。結局俺は、朝っぱらからもう一度、気が狂いそうな『めくるめく』体験をしたのだった。
くっそ、流されすぎにもほどがある!
「ん」
と、俺は蘇生薬をミカエルに渡す。気まずくて顔が見られないが、あれだけ激しくされても毛布を身体に巻いて歩けるのはアバターのお蔭だろう。普通の人間の女の子だったら、絶対ベッドから起き上がれないね。そのくらい、セックスって体力を使うんだってことを初めて知った。
顔が熱くて駄目だ。
本当に俺、どうしたんだ。何か、今の俺は変だ。男らしさはどこに消えた?
「ありがとう」
そう言ったケダモノ――ミカエルは、俺から瓶を受け取りながらも素早く俺の耳元にキスをするくらいの余裕はあるらしい。身体中、噛みまくってやったというのに、何でこんなに元気なのか。
あれだけ血を吸ってやったというのに、何だか妙につやつやした肌をしている。さらに、元気いっぱいの様子で俺の着替えを手伝うとかまで言い出したから、軽くその腹を殴っておいた。もっとその腹筋が割れるように祈りながら。
ミカエルは楽しそうにそれを受けて、蘇生薬を飲んでいた。
「……あのさ」
俺は昨夜、脱ぎ散らかしたままの服を拾いながら寝室を出ようとした。さすがにベッドに腰を下ろしたままの裸族に、自分の着替えるところを見せるつもりはない。また襲われそうだし。ミカエルはアバターじゃないのに無駄に元気だし。
「何だ?」
「夕べも言ったけど」
俺の言葉はもの凄く歯切れが悪いだろう。まさか、こんなことを言う羽目になるなんて、誰が思う?
「……中に出すなって頼んだのに」
「子供は三人欲しいと言ったはずだが」
「却下ー!」
「何故?」
「俺、無理、絶対無理」
「だから何故?」
「だって」
ふと、思い出すのは自分の母親の顔だ。
正直なところ、まともな家庭に育ったわけじゃない。理想的な家族像というのは頭の中にあるけれど、最悪な見本をずっと見てきたから、俺が万が一……子供ができてしまったとしても、まともな育児なんかできないし。
それに、妊娠そのものが怖いし。
むしろ、それこそが異世界のような気がする。妊娠とか、できればずっとしないまま終わりたい。
俺の表情が冴えないものに変わったことに気づき、ミカエルがベッドから降りてこちらに近寄ってきた。
……が。
「服、着てくれないかな」
我に返って、そんなことを言ってみる。
何で俺、ミカエルの裸を見て恥じ入ってんの!?
男の身体なんか、見飽きるくらい見てきたわけなのに!
「着替えたら朝食にしよう」
ミカエルは俺を抱きしめてそう言ったが、窓の外はもうすでに陽が高いですが、それは朝食に入るんですかね?
「何だ、お前はここにいたのか」
食堂として使っている大きな部屋に入るとすぐに、そこにいたアルトにミカエルが怪訝そうに声をかけた。
アルトはそれまでのんびりとお茶を飲んでいたようだったが、すぐに立ち上がって頭を下げてくる。しかし、顔を上げた彼の双眸には呆れたような色が浮かんでいた。
「おはようございます、ミカエル様」
――ああ、いたたまれない。
それでも、ありがたいことにリュカのギルド依頼の付き添いという理由で、セシリアもサクラもカオルも離宮の中にはいなかった。サクラはとんでもなく勘がいいから、俺とミカエルの間に流れる空気を読んで察するだろう。昨夜、何があったか。
でも今、何か言われたら俺は憤死するかもしれない。
「言いたくないのですが、ミカエル様……」
アルトがいつものように背筋を伸ばした姿で、礼儀正しく微笑んだ。
「言いたくないなら言わない方がいいな」
ミカエルも同じような笑みを返す。
「婚前交渉はちょっと」
「聞きたくない」
「聞いてくださいね!?」
くわっと目を吊り上げているアルトだったが、諦めるのも早かったらしい。さりげなく彼は俺を見て、どこからどう見ても健康体であると確認し、ほっとしたように息を吐いた。
いや、今、健康体なだけだからね!? あんたの主、すげーケダモノだったからね!?
っていうか、アルトにもバレてるー!?
俺はこっそりミカエルを睨みつけながらテーブルにつくと、食事をしながら午後の予定をどうするかという話を始めた。
俺はマチルダ・シティに引きこもって錬金術に取り組みたかったから、別行動したいと言ったのだが、ミカエルは王都に行かないかと提案してきた。王都にも腕のいい薬師や魔道具技師がいるし、見どころも多いと誘惑してくる。
確かに、フォルシウスが活動拠点になりつつあるから、別のところを見てみるのも楽しいだろう。
あんなことをした後だから、ミカエルと一緒に行動というのは気持ち的に落ち着かないんだよな、と思ったけれど、ごり押しされて行くことになった。
――が。
王都って、ミカエルの顔を知ってる人間が多い。
ミカエルの精霊魔法で午後だけの短い王都観光――と思ったけれど。
ギルドだったり、食事処だったり、妙に可愛い女の子たちに声をかけられているミカエルを見る羽目になった俺は、ちょっともやもやする胸を持て余すことになる。
しかも、その女の子たちに睨まれたし!
「それは嫉妬だね、お兄ちゃん」
と、後日サクラに揶揄われ、口元を変な風に歪ませながら笑い声を堪えていた。何だか、「身体から始まるなんとやら……」とか呟かれたが、聞き間違いだと信じたい。
でもこの辺りから、俺のミカエルへの感情が何なのか本気で悩み始めることになるが、またそれは別の話である。
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