おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2章 彷徨う森

森での再会

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それから二日間。
三人は森の中をさまよった。

アリスとラックはすっかり意気消沈し、へたり込んでしまった。
元気なのはちーちゃんだけである。

「どうしたのふたりとも。
 元気でないの?」
「なんだって、こいつはこんなに元気なんだ。
 いまの状況を理解できていないんじゃないのか?」
「…ちーちゃん、少しばかり休ませてくれ」

木の枝をぶんぶんと振り回しながら歩くちーちゃんは、立ち止まった二人をみて少しつまらなさそうにした。

「そうだ、元気がでるようにちーちゃんが果物さがしてくるよ!!」

ちーちゃんはそういうと、森の中に一人消えていった。

「おい、ちーちゃん一人で行動するな!」
「ほっとけよ、二日歩いて魔物一匹いないんだ。
 それにこのままだと、俺たちは死ぬんだから、好きにやらせなよ」
「まだ、でれないと決まったわけではない!」

ラックにつかみ掛かろうとしたアリスだが、疲労困憊でたちあがることすらままならなかった。




「るららーん、るららーん、もりのなかー♪」

二人の心配などつゆ知らず、ちーちゃんは鼻歌交じりに森の中を散歩していた。
果物を探そうとあちこちの木を眺めてあるが、それらしきものは見あたらない。

「おかしいなー、村の近くの森だったらたくさんみつかるのに」

上を向きながら歩くちーちゃんは、何かに足を取られ転んでしまった。

「わわわっ!」
「ぎゃううんんっ!!」

獣の鳴き声。
森の中で木の陰に身を潜めるようにしていたケルベロスがそこにいた。

不注意であるいていた、ちーちゃんに尻尾を踏まれ涙目になっている。

「あっ、わんちゃん!」
「!!」

ケルベロスは二度も辛酸を舐めさせられた相手との三度目の邂逅。
一瞬ひるんでしまい逃げ出そうとしたが、それではいけないと自分を奮い立たせ、なんとか萎える気持ちを抑えた。

自分は誇り高きケルベロス。
人間ごときに負けたまま、逃げてはいけないのだ。
そんなケルベロスの決意など全く感じることもなく、ちーちゃんは嬉しそうにケルベロスに近づく。

「もしかして村の近くにいたわんちゃんかな?
 どうしてこんなところにいるのかな?
 迷子かな?」
「グルルルルッ!」

威嚇など意に介さず、不用意に近づいてくるちーちゃん。
ケルベロスは一手目から全力で襲いかかった。

常人にそのスピードを捉えることは出来ない。

だが、ちーちゃんは常人ではない。
じゃれてきたものと勘違いして、襲い来るケルベロスを真正面から抱きしめた。

「もう、寂しいからってそんなにじゃれてこないでよー」

そういいつつ顔は嬉しそう。
ケルベロスは、全力の一撃をいとも簡単に捉えられたが、怯むことなくちーちゃんに襲いかかった。

全力で攻撃するケルベロスと、じゃれて遊んでると思ってるちーちゃん。

しかしあまりにも落ち着かないので、ちーちゃんは躾のためケルベロスに命じた。

「もう、ちょっとおすわり!」

もちろん、聞かないケルベロス。
じゃれ続けるケルベロスにちーちゃんはムスッとして、その腰を掴む。

そして、思い切り地面へと叩きつけた。

「おすわりっ!!!」
「キャウウーーーーーン!!」

周囲の木々をなぎ飛ばし、地面は深くえぐれ、土ぼこりが宙を舞った。

ケルベロスはクレーターの真ん中、下半身を地面に埋めながら口をパックリと開き、呆然としていた。

認めたくはなかった。
自分よりも強い者がいるなどとは。

だが、認めざるを得ないだろう。

ケルベロスは地面から抜け出すと、ちーちゃんの前にテクテクと歩み寄った。
そしてころりと転がり、おなかをちーちやん見せた。

ケルベロス族に伝わる、服従のポーズ。

「わんっ!」

ケルベロスが犬畜生に成り下がった瞬間であった。

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