おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2章 彷徨う森

眠る聖獣

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ちーちゃんに拳骨をくらったケルベロスはすっかりおとなしくなり、アリスやラックにまで尻尾をふるはめとなった。

落ち着いたアリスは改めてケルベロスに問いかける。

「ケルベロスよ、あなたはこの森に眠る獣の事を知っているか?」

コクン。

ケルベロスは3つの頭を同時に縦に振った。
アリスとラックはその答えに、互いに目を開わせた。

「…そいつはあなたの言うことを聞くか?
 もしくは撃退することが出来るか?」

フルフル。

今度は首を横に振る。

その答えは二人にとって絶望。

ハッセル・フォンの手記に書かれていた獣はケルベロスよりも強いということだ。
そんなもの、きっちりと訓練された討伐用の大規模な軍隊をぶつけたりでもしない限り倒せないだろう。

「ちなみに、この森から出ることは出来るか?」

フルフル。

だからと言って無視することは出来なさそうだ。

「アリス、とりあえず近づいてみるしかないだろう。
 どんなやつかこの目で見ないことにはな。
 手記の通りであれば、近づいただけでは何もされないだろう。」

ラックは、そんなこと本当はしたくないけどな、といった雰囲気を顔いっぱいに出しながらも、渋々提案した。

その目で見てしまっては本当に絶望しそうで怖かったのだ。




ケルベロスの後ろについていくまま、やってきましたご一行。
(正確にはちーちゃんはケルベロスの上に乗っていたが)

空を覆っていた森は、そこだけぽっかりと空いていた。

日の光がさんさんと降り注ぎ、牧歌的な雰囲気を感じさせる。
その中央には一本の大きな樹と、根元に一匹の獣がいた。

5mはあろうかその巨体を丸めて、犬のように気持ちよさそうに寝ている獣。
真っ白い毛並みは日差しを反射させ煌めいており、撫でてみればきっと絹のような細やかな手触りであろう。
額から伸びた一本の角は、神格を感じさせる。
閉じた瞼の奥には、どのような瞳が眠るのだろう。

あまりも神秘的は迫力にアリスとラックはたじろいだ。

ケルベロスは自分よりも上位の存在に悔しそうにしている。
いつか必ず~などと、やはり下っ端めいたことを思っているのだろう。

「うん、とりあえず帰ろう」
「ああ、これ以上ないくらいに賛成だ。
 さあ、ちーちゃんも帰ろう」

二人は本能のままらこの場を後ずさろうとした。

「わー、もっこもこー♪」
「「ち、ちーちゃん!!」」

二人が制止する間もなく、ちーちゃんはパタパタと眠る獣に走り寄っていった。


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