121 / 168
第3章 偽りの王
裏切り3
しおりを挟む
かびの臭いが鼻の奥を刺激する。
長い間まともに換気がなされていない、不衛生な室内のよう。じめっと湿った空気が殊更不快感を煽る。
未だ眠気の冷めない重い思考。再度微睡みに落ちそうな所を、アリスは頭を降り追い払った。
目覚めて見ると、先ほどまでいたはずのそこは豪奢な室内とは打って変わり、石壁で覆われた暗い室内。
いや、前面に広がる鉄格子がここが牢屋だと告げている。
(どうしてこうなった)
アリスは意識を失う前の出来事を思い出す。
城へ招かれ王の都合が整うまで、客室で待機していた。すぐにあのとき飲んだ紅茶に睡眠薬が仕込まれていたのだと気づく。
(ここには私しかいないのか?
ほかの二人は?)
あたりを見渡しても誰もいない。
(少し離れたところに気配がする。
牢番か?)
なぜ自分が牢屋へ閉じこめられ、ほかの二人がいないのか。
まるで心当たりのない状況に、アリスはひとまず情報入手を優先した。
(まさか密航の手引きがばれて、捕まったんじゃないよな・・・。
だとしたら恨むぞラックよ)
牢屋の中でもぞもぞと人が動く気配を感じた牢番は、イスから立ち上がり鉄格子の中をみた。
両手を後ろで縛られ、装備は全てはぎ取られた女性・アリスが起きあがっていた。
鎧の下は肌に張り付くような薄い服のみで、女っ気のない牢番を幾ばくかそそらせた。
しかし組織の末端とはいえ、プロである。
少しゆるんだ口端を締め直し、女性に声をかけた。
「目が覚めたかい。
大人しくしていれば時期に解放してやる」
奥の方でもぞもぞと動くアリスの姿ははっきりとは見えない。
(ちっ、何だって監禁なんぞ上は命令してきたんだ。解放するとはいえ、後味悪いぜ)
決してお天道様の下を胸張って歩けるような仕事をしているわけではないが、彼らにもポリシーはあった。
弱者にチカラを振るわない。
(とはいっても、上の命令を破るほどの豪気も持ち合わせてない。だから俺は下っ端なんだな)
牢屋の中では相変わらずアリスがもぞもぞしている。
「ったく暴れるなっていってんだろう、俺の手を煩わせるんじゃねぇ・・・っ!」
気づけば喉元に突きつけられる銀色の先端。
縄で縛られていたはずの両手も解放されている。
「一体いつの間に!」
「私の手を煩わせるな。
声を失いたくなければ、さっさと鍵を開けるんだ」
解放されたアリスは手早く牢番を気絶させ、お返しにとキツくフン縛った後、牢屋の中へ押し込んだ。
「見たところまともな職業の人間ではなさそうだし、国の衛兵ということはあるまい。
さてと、急いでほかの二人を探さなければ」
この部屋には牢屋は一つしかない。
ほかに部屋でもあるのだろうか、と入り口を開けるとそこは貧困街であった。
先ほどまでいたはずの城は遠く向こうにある。
「無闇に探しても仕方ない、一度城へ戻るか。
ちーちゃんよ、無事でいてくれよ!」
アリスは装備を身につけると、城を目指し走り出した。
長い間まともに換気がなされていない、不衛生な室内のよう。じめっと湿った空気が殊更不快感を煽る。
未だ眠気の冷めない重い思考。再度微睡みに落ちそうな所を、アリスは頭を降り追い払った。
目覚めて見ると、先ほどまでいたはずのそこは豪奢な室内とは打って変わり、石壁で覆われた暗い室内。
いや、前面に広がる鉄格子がここが牢屋だと告げている。
(どうしてこうなった)
アリスは意識を失う前の出来事を思い出す。
城へ招かれ王の都合が整うまで、客室で待機していた。すぐにあのとき飲んだ紅茶に睡眠薬が仕込まれていたのだと気づく。
(ここには私しかいないのか?
ほかの二人は?)
あたりを見渡しても誰もいない。
(少し離れたところに気配がする。
牢番か?)
なぜ自分が牢屋へ閉じこめられ、ほかの二人がいないのか。
まるで心当たりのない状況に、アリスはひとまず情報入手を優先した。
(まさか密航の手引きがばれて、捕まったんじゃないよな・・・。
だとしたら恨むぞラックよ)
牢屋の中でもぞもぞと人が動く気配を感じた牢番は、イスから立ち上がり鉄格子の中をみた。
両手を後ろで縛られ、装備は全てはぎ取られた女性・アリスが起きあがっていた。
鎧の下は肌に張り付くような薄い服のみで、女っ気のない牢番を幾ばくかそそらせた。
しかし組織の末端とはいえ、プロである。
少しゆるんだ口端を締め直し、女性に声をかけた。
「目が覚めたかい。
大人しくしていれば時期に解放してやる」
奥の方でもぞもぞと動くアリスの姿ははっきりとは見えない。
(ちっ、何だって監禁なんぞ上は命令してきたんだ。解放するとはいえ、後味悪いぜ)
決してお天道様の下を胸張って歩けるような仕事をしているわけではないが、彼らにもポリシーはあった。
弱者にチカラを振るわない。
(とはいっても、上の命令を破るほどの豪気も持ち合わせてない。だから俺は下っ端なんだな)
牢屋の中では相変わらずアリスがもぞもぞしている。
「ったく暴れるなっていってんだろう、俺の手を煩わせるんじゃねぇ・・・っ!」
気づけば喉元に突きつけられる銀色の先端。
縄で縛られていたはずの両手も解放されている。
「一体いつの間に!」
「私の手を煩わせるな。
声を失いたくなければ、さっさと鍵を開けるんだ」
解放されたアリスは手早く牢番を気絶させ、お返しにとキツくフン縛った後、牢屋の中へ押し込んだ。
「見たところまともな職業の人間ではなさそうだし、国の衛兵ということはあるまい。
さてと、急いでほかの二人を探さなければ」
この部屋には牢屋は一つしかない。
ほかに部屋でもあるのだろうか、と入り口を開けるとそこは貧困街であった。
先ほどまでいたはずの城は遠く向こうにある。
「無闇に探しても仕方ない、一度城へ戻るか。
ちーちゃんよ、無事でいてくれよ!」
アリスは装備を身につけると、城を目指し走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる