おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第3章 偽りの王

王と対面

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静まった部屋にパチパチと、手を鳴らす音が聞こえる。
ちーちゃんは音の鳴る方へ目を向けると、長身の男性の姿があった。
ローミン王の臣下マッキーである。

「おじさんもお兄ちゃんたちをいじめにきたの?」

キッと睨みつけるちーちゃんの視線をマッキーはかるくいなす。

「いえいえ、私が用あるのはあなたです。
 少々手違いがあったようで、このような形になってしまったことお詫びしましょう。」

ぺこりと頭を下げる。
その姿は様似になっており、ちーちゃんも少し警戒を解いた。

「まあ、お詫びだけというのもなんですから、そちらの方々の治療を私が致しましょう。」

マッキーは懐から袋に入った粉を取り出す。それを手のひらに一握り乗せ、そっと息を吹きかける。

粉は煌めきを帯びながら、怪我をしているラックとケルベロスの二人を覆う。
一瞬、煌めきが増すと、傷は目に見えて癒え始めた。

「いかがでしょう、これが私の魔法でございます」
「わーーー、すごーーい!」

ちーちゃんはすっかり大はしゃぎ。
先程まで警戒していたのは嘘のように、マッキーの周囲をクルクルと興味深げにまわりはじめた。

「おほん、お気に入りいただけたようで。実はあなたにお願いがありまして」
「なーに?」
「私が仕える主が、あなた様をお呼びしています。宜しければご足労願えるでしょうか?」
「ごそくろう??」
「つまり、ついてきてほしいと言うことです」
「うーーん…いいよ!
 お兄ちゃんたち治してくれたし!」

マッキーはニコリと微笑むと「それは何より」と返した。




二人は誰もいない王城内を歩いていく。
数分もしないうちに大きな扉の前にたどり着く。

「ここで王様がお待ちです。
 ここから先はお一人でお進みください。」
「うん、わかった」

マッキーが重い扉を開け放ち、ちーちゃんへ入室するよう促す。

「わーーっ!」

中に入ったちーちゃんは感嘆の声を出す。
豪華絢爛に誂えられた広い謁見の場は、ちーちゃんが初めて見る煌びやかなものであった。

その最奥。
この国の王様のみ座ることが許される玉座に、足を組み頬杖をついている若い男がひとり。

ハッカータ国 国王ローミン。
鋭い眼光は見た目の年齢からかけ離れた凄みがある。
並の兵士であれば、唾を飲むことすら出来ぬほど震え上がらせるであろう畏怖。
そんな中、まるで、物怖じしないちーちゃんに「ふっ」と笑い、語りかけた。

「すまないがお前にはここで死んでもらう」
「やだっ!」

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