おいでよ、最果ての村!

星野大輔

文字の大きさ
165 / 168
第4章 異世界からの訪問者

しおりを挟む


古代遺跡サンタワー。
その姿は外から見ることは出来ない。全てを山の中に隠しているため、見えるのは入口のみ。
元は草木に覆われていただろうが、何度も冒険者たちがやって来たためであろう入口はすっかり顕となっている。
2m四方の小さな入口は大理石に似た不思議な物体で出来ている。

「ちーちゃん、もう一回言っておくぞ。
 中に入ったら必ずわたしの後ろにつくこと、決して先に行かない。
 約束を破ったらすぐに外に連れ出すからな。」
「はーーーーい♪
 しょーぶ、たのしみぃー♪」

勝負を単なる競争と勘違いしているちーちゃんはただワクワクしているようだった。
その周りをケルベロスが跳ね回る姿は、実にほのぼのしている。
死蔵依頼リストとなっている古代遺跡前なのに。

二人と一匹が入口を潜る。
日光が入ってこないというのに中は明るい。
照明がたかれているわけではない、壁自体が明るさをもっている。

「不思議な場所だねーアリスお姉ちゃん。」
「ああ、事前調査でも分かっていたがこれはかなり古い、超古代文明の遺跡だな。
 世界が最も栄えていた時代の遺跡、今の文明を遥かに凌ぐと言われた『天涯の時代』。
 実際に見るのは初めてだが、これは驚きだな。」

通路は遥か遠くまで続いており霞んで見えない。
山の頂上の広さからすれば、端が見えないなんてことはないはずだが、そこが古代遺跡の超文明。

(これは下手に迷えば二度と出れなくなる可能性があるな。。。)

アリスは気を引き締め、腰にぶら下げた布袋から赤いペンを取り出す。
そして壁に文字を書き始めた。
アリスは不思議そうにその様子を見ていた。

「何しているのお姉ちゃん?」
「こういったダンジョンでは迷いやすいからな、曲がり角ごとに目印をつけるのさ。
 ほら、そっちにも他の冒険者がつけた印があるだろう。」
「ほんとーだ、たくさん落書きしてある!
 ねーねー、ちーちゃんもかく!」
「こらこら、遊びじゃないんだ、それに落書きじゃない。」

アリスは苦笑いしながら通路を進んでいく。
剣を鞘に納めたまま、自らの前へ突き出し床や壁をコンコンと叩きながら慎重に罠を確かめる。

「いいか、ちーちゃん。
 こうやって罠がないか確かめるんだ。
 代表的な罠としては、矢、酸、そして落とし穴。」

そう言いながら剣先で床をこつりと叩いた瞬間。
アリスのうしろでガチャリと大きな音がした。
瞬間的に振り向いた視線の先では、ポッカリとあいた床、そこへ吸い込まれるように落ちていくちーちゃんとケルベロス。

「あれっ?」
「・・・ちっ、ちーーーちゃーーーーんっ!!!」

ぽけーっとした顔をしながら、ちーちゃんは深い落とし穴の底へ落ちていった。
アリスも追いかけようとしたが、落とし穴は次の瞬間に閉じてしまう。
もう一度罠を作動させようとするが、何の反応もなく落とし穴は開かない。

アリスは汗をたらしながら、誰ともなくつぶやく。

「どどど、どうしよう。」


---------------------------------

ちーちゃんが解き放たれました。


しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...