彼女はオタク男

tsuusan

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そしてついに

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さらに数週間後

愛はいつもの居残りレッスンを受けている。鬼怒の怒号のような波動まじりの声はいつも愛に向かって放たれていた。

鬼怒「愛ぃぃぃ。お前は、何回言ったらわかるんだ。男のパフォーマーじゃねぇんだよ。どうして、そうカクカク動くんだ?柔らかく女の魅力を魂からだせぇぇ。」


所詮こいつは元オタク男の愛。純粋な女の子なら、内に秘めた女の魅力を解放できるだろう。だが、こいつに備わっているはずもなく、秘めたる力はエロ魂だけ。愛はエロ魂を解放し、想像と努力でカバーした。
   
鬼怒(なんか違うけど、まぁ良しとするか)


そして数日後


愛は、アイドルの玉子たちと、レッスンに励んでいた。

レッスン場の扉が開き、1人の男が立っている。
鬼怒は珍しく、レッスン中にもかかわらず、その男に近づいた。みんなは練習を続けている。

鬼怒は少し小さな声でその男と話しをする。
鬼怒「大道さんお久しぶりね。」
大道「先生、お世話になっております。」
鬼怒「ねぇ、大道さん、アイリは?アイリは今どうしてる?」
大道「謹慎も解けて、今は別のマネージャーが付き、細々と営業しております。」
鬼怒「あ、そぅ。良かった。アイリなら大丈夫。また頑張ってくれる。」
大道「僕もそう思います。」

愛は、レッスンに遅れてくる為、いつも扉の近くで練習に励んでいた。2人の会話は、愛の耳に入ってきていた。



加藤アイリ…


平間ひろしが一途に愛した人気アイドル
その愛したアイドルは、自分の恋愛感情に従い、男と交際をしてしまった。

ひろしを裏切り、ファンを裏切った。

支社へ行く時にアイリと同じ会社であることに気付いたが、ひろし改め愛は考えないようにしていた。

だが、アイリの名前を聞くとよみがえる。

愛の中で、憎悪の炎が燃え上がろうとした時、また会話が耳に入る。

大道「ところで愛はどこにいますかね?」
キョロキョロ目を動かし、見た事はない愛を探す。
鬼怒「そこにいる子が愛」
愛のほうを軽く指差す。その言葉が耳に入った瞬間、愛は大道のほうをチラっと見てしまった。大道と目が合う。
君が愛だねと言わんばかりの表情をする大道。
鬼怒の視線を感じ、愛はすぐに目をそらした。

みんなとのレッスンが終わり、愛と鬼怒、大道の3人になった。

大道が愛に話しかける。
大道「君のマネージャーをする事になった。よろしく。」
愛は不思議に思った。まだプロでもないのにマネージャー?とりあえず返事はかえす。
愛「よろしくお願いします。」

大道昇、相田プロダクションの社員
加藤アイリやその他のアイドルを人気ものにしてきた、敏腕マネージャー。

3人での話しは続く…

大道「先生、振り付けのほうはどうですか?」

自信ありげに鬼怒は答える。
鬼怒「大丈夫です。」

よし。という顔をした大道が愛に話しかける。
大道「愛、今日でレッスンは終わり。明日からレコーディングに専念してもらうから。振り付けは忘れないように、自主練な。」

突然のレッスン終了宣告、愛はちょっと混乱した。
愛「…レコーディングですか?」

大道「そうだよ。愛が歌詞を歌って入れなきゃ完成しないでしょ。」
あたりまえだろ顔で愛に言う大道。

鬼怒はほんの少しだけ申し訳なさそうな感じで愛に言う。
鬼怒「愛、こないだからの居残りでレッスンしてたのは、デビュー曲になるやつ。愛に言わないで練習させてたんだ。」

愛は驚いた。いつの間にかできていた自分の曲。

その曲に合う素晴らしい振り付けをずっと練習していた事。

実は、音楽プロデューサー、有岡尊に会った時に愛の曲は作られ始める。

愛を見た瞬間、有岡はこの子に曲を作ると決めた。
愛に名刺を渡す時には、音符と歌詞が頭の中でできあがってきていた。

愛が練習に励んでいた裏では、デビューに向けての準備が進められていたのだった。

次の日からレコーディングスタジオに入った愛。
音楽プロデューサー、有岡の指示をうけながら歌を歌って行く。有岡も、なかなか厳しかったが、愛は必死に歌を歌い続けた。そしてついに、愛のデビュー曲のCDは完成した。



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