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第19話
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店先でめぐを見送った私は沙月ちゃん達のいるロビーへ戻る。
すると香織が男子の一人と言い合っていた。
近くのソファに座って傍観している沙月ちゃんに尋ねる。
「ねぇ、あの2人何かあったの?」
「なんかさ~男子も2人来れないみたいなの。それで柚希ちゃんを除いた私たち4人はいつものメンツになっちゃったってワケ」
合コンだからと張り切って来たのに知り合いしか居なかったら怒っても無理はない。
今日はこれで解散の流れになるだろう。
そう考えた矢先、黙ってスマホを弄っていたもう一人の男子が口を開いた。
「……よし! 阿部~もう一人呼んどいたぞ」
「お、ナイスだ伊藤」
「はぁ? 誰が来るのよ」
「安心しろよ。香織が気に入るヤツだから」
「ホントぉ?」
「まぁまぁそういう事だから! せっかく部屋を借りたんだし先入ってようぜ」
「え……ちょ、ちょっと! もう!」
伊藤と呼ばれた男は香織の腕を引っ張り奥へ行ってしまった。
ちょっと強引な気もするけど……大丈夫かな?
「心配しないで、柚希ちゃん。危ない事は絶対させないから」
「え? う、うん」
「それじゃあ私たちも行こっか!」
沙月ちゃんはそう言うと私の背中を軽く押し進む。
少し戸惑ったものの沙月ちゃんの無邪気な笑顔に観念してしまった。
カラオケルームに入ると香織たちが既に騒いでいた。
「お~結構広い部屋だな! アタリアタリ!」
「だな! 15人くらい入るんじゃないか?」
「あんまりはしゃがないでよ。子供じゃないんだから」
U字のソファが2つ並び、その間には黒の長テーブルが置かれている。
壁に設置された大型のディスプレイには最新の曲が鮮やかに流れていた。
暫くすると、各自頼んでおいたドリンクが運ばれてきた。
それぞれのドリンクが手元に渡りきったところで伊藤さんが確認を取る。
「よーし。みんなドリンク届いたな」
「おう。……って、おい香織~まだふてくされてんのかよ」
「別に~。っていうかあんたらに愛想振りまいたってしょうがないじゃん。ねぇ? 沙月」
話を振られた沙月ちゃんは私をチラッと見た後、
「まぁね。けど後からもう1人来るならいいんじゃない? それに今回は柚希ちゃんもいるワケだし」
「え? う~ん、沙月がそういうなら……」
「それにカラオケも男子の奢りだしね! ということで今日は楽しもう~!」
「おぉ~!……って、えぇ~!」
「俺らが払うのかよ!」
「何よ。女子に払わせる気~?」
沙月ちゃんの一存で場の空気が一瞬にして変わった。
やっぱり沙月ちゃんからはある種のカリスマ性が感じられる。
尚更この子に興味が出てきた。
……よし。
やっぱりこのまま場の雰囲気に乗じて観察させてもらおう。
「「「カンパ~イ」」」
まずはソフトドリンクで喉を潤す。
さぁ、まずはどうやって沙月ちゃんを探ってみようかな。
そんな事を考えていると、正面に座る阿部さんから声を掛けられた。
「そういや柚希ちゃん……だっけ?」
「あ、はい」
「ごめんごめん。自己紹介してなかったね~。俺は阿部で、こっちは伊藤」
「よろしく~」
「佐藤柚希です。よろしくお願いします」
営業スマイルで返すと男子は「うお~。かわいい~」などと盛り上がっていた。
正直、この男子たちには欠片も興味が無い。
私が気にしているのは沙月ちゃんだけだ。
「柚希ちゃんってさ、高校生だよね?」
「はい。今年咲崎高校に入ったばかりです」
「ってことは1年生?」
「そうですね」
うーん。沙月ちゃんに話しかけるタイミングがなかなか見つからない。
「やっぱそうなんだ~。なんつーかこう、儚げな感じ? 残ってる感じだよね」
「え~そうですかぁ? 初めて言われましたよ~」
「マジで? ははは!」
何その意味不明な言い回し?
褒めてるのかすらわからないんだけど。
こういう男は好きじゃない。
「そういや香織。お前と柚希ちゃんって同じ中学だったん?」
「そうそう! 柚希ちゃんってばスゴイんだよ。何やっても1位取っちゃうし、学校のアイドルだったんだから!」
「ちょっと香織~。やめてよぉ」
まるで自分の武勇伝を語るかのように香織は目を輝かせて話す。
まぁ、私自身悪い気はしないからいいけど。
「へぇ~可愛い上に何でもできるとかヤバくね?」
「いやぁ~そこまでパーフェクトなら彼氏くんもむしろ大変なんだろうなぁ」
はぁ、回りくどい。
そんな古典的な探り方しないと彼氏いるのかも訊けないの?
「いえいえ、彼氏なんて居ませんよ」
「え、何々? 柚希ちゃん恋人居ないんだ! 意外~」
香織の陰からひょっこりと顔を見せ、対極に座っていた沙月ちゃんも食いついてくる。
どんな男性が好きなのか?
どうして今まで彼氏を作らなかったのか?
ありふれた質問攻めで恋愛トークが盛り上がる。
香織は私がどれだけ人気者だったかを興奮気味に語っていた。
図らずとも会話の中心は私になっていた。
会話も大分盛り上がっていたところで伊藤さんがスマホを取り出した。
「お! アイツ到着したってよ。迎え行ってくるわ」
「おう、よろしく」
香織と沙月ちゃんは「待ってました」と言わんばかりにテンションが高くなっていた。
一体どんな人が来るんだろう?
間もなく伊藤さんが戻ってきた。
「おまたせ~」
連れてきたのは年上らしき男性。
見た目はスラッとしていて背が高く、服装はラフコーデではあるが流行を抑えてる。
なるほど、若い子ウケしそうではあるかなぁ。
「お~悪いな上杉。急に呼び出しちまって」
「いいっていいって。それにこんなにカワイイ女の子がいるならどこへでも飛んでいくでしょ普通」
「ったくお前は相変わらずの女好きだな」
「いやいや勘違いすんなって。俺が好きなのはカワイイ女の子だけだから」
そう言って〈私と沙月ちゃん〉に視線を向けてくる。
明らかに狙っている視線だ。
やめて欲しい。
……それにしてもこの上杉って男の人、どっかで見たような。
そう考えていると相手もそれに気づいたようだった。
「……あれ? もしかして、柚希ちゃん?」
「あ、初めまして」
「俺のこと覚えてない? 中学一緒だったんだけど」
「え?……あぁ!」
思い出した!
この人はお兄ちゃんと同級生の上杉先輩だ。
特筆するような思い出もないのですっかり忘れていた。
「うわ~柚希ちゃんに忘れられてたなんてショックデカすぎる!」
「ごめんなさい。私、失礼な事しちゃって」
こんなところで中学時代の知り合いと出くわすなんて予想してなかった。
私が立ち上がり頭を下げて謝ると、上杉先輩は冗談めいた笑顔で
「ははは、ウソウソ。気にしないでよ」
とナチュラルに肩をポンポンと叩いてきた。
……少し距離感が近い気がする。
苦笑いでスルーしとこう。
すると香織が男子の一人と言い合っていた。
近くのソファに座って傍観している沙月ちゃんに尋ねる。
「ねぇ、あの2人何かあったの?」
「なんかさ~男子も2人来れないみたいなの。それで柚希ちゃんを除いた私たち4人はいつものメンツになっちゃったってワケ」
合コンだからと張り切って来たのに知り合いしか居なかったら怒っても無理はない。
今日はこれで解散の流れになるだろう。
そう考えた矢先、黙ってスマホを弄っていたもう一人の男子が口を開いた。
「……よし! 阿部~もう一人呼んどいたぞ」
「お、ナイスだ伊藤」
「はぁ? 誰が来るのよ」
「安心しろよ。香織が気に入るヤツだから」
「ホントぉ?」
「まぁまぁそういう事だから! せっかく部屋を借りたんだし先入ってようぜ」
「え……ちょ、ちょっと! もう!」
伊藤と呼ばれた男は香織の腕を引っ張り奥へ行ってしまった。
ちょっと強引な気もするけど……大丈夫かな?
「心配しないで、柚希ちゃん。危ない事は絶対させないから」
「え? う、うん」
「それじゃあ私たちも行こっか!」
沙月ちゃんはそう言うと私の背中を軽く押し進む。
少し戸惑ったものの沙月ちゃんの無邪気な笑顔に観念してしまった。
カラオケルームに入ると香織たちが既に騒いでいた。
「お~結構広い部屋だな! アタリアタリ!」
「だな! 15人くらい入るんじゃないか?」
「あんまりはしゃがないでよ。子供じゃないんだから」
U字のソファが2つ並び、その間には黒の長テーブルが置かれている。
壁に設置された大型のディスプレイには最新の曲が鮮やかに流れていた。
暫くすると、各自頼んでおいたドリンクが運ばれてきた。
それぞれのドリンクが手元に渡りきったところで伊藤さんが確認を取る。
「よーし。みんなドリンク届いたな」
「おう。……って、おい香織~まだふてくされてんのかよ」
「別に~。っていうかあんたらに愛想振りまいたってしょうがないじゃん。ねぇ? 沙月」
話を振られた沙月ちゃんは私をチラッと見た後、
「まぁね。けど後からもう1人来るならいいんじゃない? それに今回は柚希ちゃんもいるワケだし」
「え? う~ん、沙月がそういうなら……」
「それにカラオケも男子の奢りだしね! ということで今日は楽しもう~!」
「おぉ~!……って、えぇ~!」
「俺らが払うのかよ!」
「何よ。女子に払わせる気~?」
沙月ちゃんの一存で場の空気が一瞬にして変わった。
やっぱり沙月ちゃんからはある種のカリスマ性が感じられる。
尚更この子に興味が出てきた。
……よし。
やっぱりこのまま場の雰囲気に乗じて観察させてもらおう。
「「「カンパ~イ」」」
まずはソフトドリンクで喉を潤す。
さぁ、まずはどうやって沙月ちゃんを探ってみようかな。
そんな事を考えていると、正面に座る阿部さんから声を掛けられた。
「そういや柚希ちゃん……だっけ?」
「あ、はい」
「ごめんごめん。自己紹介してなかったね~。俺は阿部で、こっちは伊藤」
「よろしく~」
「佐藤柚希です。よろしくお願いします」
営業スマイルで返すと男子は「うお~。かわいい~」などと盛り上がっていた。
正直、この男子たちには欠片も興味が無い。
私が気にしているのは沙月ちゃんだけだ。
「柚希ちゃんってさ、高校生だよね?」
「はい。今年咲崎高校に入ったばかりです」
「ってことは1年生?」
「そうですね」
うーん。沙月ちゃんに話しかけるタイミングがなかなか見つからない。
「やっぱそうなんだ~。なんつーかこう、儚げな感じ? 残ってる感じだよね」
「え~そうですかぁ? 初めて言われましたよ~」
「マジで? ははは!」
何その意味不明な言い回し?
褒めてるのかすらわからないんだけど。
こういう男は好きじゃない。
「そういや香織。お前と柚希ちゃんって同じ中学だったん?」
「そうそう! 柚希ちゃんってばスゴイんだよ。何やっても1位取っちゃうし、学校のアイドルだったんだから!」
「ちょっと香織~。やめてよぉ」
まるで自分の武勇伝を語るかのように香織は目を輝かせて話す。
まぁ、私自身悪い気はしないからいいけど。
「へぇ~可愛い上に何でもできるとかヤバくね?」
「いやぁ~そこまでパーフェクトなら彼氏くんもむしろ大変なんだろうなぁ」
はぁ、回りくどい。
そんな古典的な探り方しないと彼氏いるのかも訊けないの?
「いえいえ、彼氏なんて居ませんよ」
「え、何々? 柚希ちゃん恋人居ないんだ! 意外~」
香織の陰からひょっこりと顔を見せ、対極に座っていた沙月ちゃんも食いついてくる。
どんな男性が好きなのか?
どうして今まで彼氏を作らなかったのか?
ありふれた質問攻めで恋愛トークが盛り上がる。
香織は私がどれだけ人気者だったかを興奮気味に語っていた。
図らずとも会話の中心は私になっていた。
会話も大分盛り上がっていたところで伊藤さんがスマホを取り出した。
「お! アイツ到着したってよ。迎え行ってくるわ」
「おう、よろしく」
香織と沙月ちゃんは「待ってました」と言わんばかりにテンションが高くなっていた。
一体どんな人が来るんだろう?
間もなく伊藤さんが戻ってきた。
「おまたせ~」
連れてきたのは年上らしき男性。
見た目はスラッとしていて背が高く、服装はラフコーデではあるが流行を抑えてる。
なるほど、若い子ウケしそうではあるかなぁ。
「お~悪いな上杉。急に呼び出しちまって」
「いいっていいって。それにこんなにカワイイ女の子がいるならどこへでも飛んでいくでしょ普通」
「ったくお前は相変わらずの女好きだな」
「いやいや勘違いすんなって。俺が好きなのはカワイイ女の子だけだから」
そう言って〈私と沙月ちゃん〉に視線を向けてくる。
明らかに狙っている視線だ。
やめて欲しい。
……それにしてもこの上杉って男の人、どっかで見たような。
そう考えていると相手もそれに気づいたようだった。
「……あれ? もしかして、柚希ちゃん?」
「あ、初めまして」
「俺のこと覚えてない? 中学一緒だったんだけど」
「え?……あぁ!」
思い出した!
この人はお兄ちゃんと同級生の上杉先輩だ。
特筆するような思い出もないのですっかり忘れていた。
「うわ~柚希ちゃんに忘れられてたなんてショックデカすぎる!」
「ごめんなさい。私、失礼な事しちゃって」
こんなところで中学時代の知り合いと出くわすなんて予想してなかった。
私が立ち上がり頭を下げて謝ると、上杉先輩は冗談めいた笑顔で
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