妹プロIFストーリー 柚希END

白石マサル

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第32話

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 今日は日曜日。
 ターミナル駅行きの電車の中、お兄ちゃん達と並んで腰かけている。
 文化祭の出し物で必要な買い物をするために藤宮のドンキに行くためだ。
 2年生の買い出しに1年生である私が紛れているのにはワケがある。

 話は数日前に遡る――


      *  *  *  *  *  * 


 学校から帰宅してゴロゴロしているとスマホが鳴った。
 水瀬先輩だ。

〈藤宮市にあるコールドデイズってかき氷屋さん知ってる?〉
 
 そんなテキストと一緒にお店の写真が送られてきた。

〈もちろん知ってますよ~。美味しいって話題のところですよね〉
〈それそれ! 実は日曜日に楓達と行くんだけど、柚希ちゃんも行こうよ!〉
〈いいんですか? 行きたいです!〉
〈オッケー。じゃあ詳細送っとくね~〉
 
 こうして水瀬先輩達と日曜日に遊ぶこととなった。 
 送られてきた詳細を確認する。

〈日曜13:00 ターミナル駅西口 遅刻厳守!〉

 遅刻【厳守】って……。
 水瀬先輩らしいなぁ。
 
「にしても、ターミナル駅かぁ」

 先週のDQNの件が頭をよぎる。
 もしまた絡まれたりしたらどうしよう。
 そんなことを一瞬思ったけど、考え過ぎだと無理やり払拭した。

  

 夕食を終え、お兄ちゃんと部屋で会議をした。
 インスタの流行や最近の女子高生の傾向などをレクチャーした後

「ところで、文化祭の出し物決まったか?」

 と他愛もない事を聞いてきた。

「演劇だよ。配役はまだ決まってないけど。お兄ちゃんのクラスは?」
「メイド執事喫茶。日曜日にみんなで藤宮まで買い出しに行くんだ」
「みんなって、水瀬先輩と新島先輩も?」
「そうだけど……そういえば、ついでにかき氷も食べるとか言ってたな。ほら、あの有名な店の」

 そう言うとお兄ちゃんはインスタの写真を見せてきた。
 やっぱり水瀬先輩が話してたお店と同じだ。

「柚希も一緒に行くか?」

 一抹の不安もあった。
 けど、またみんなで遊びに行けると思うとそんな不安は消えていた。

「当たり前でしょ」

 私は笑顔でそう答えた。


      *  *  *  *  *  * 

 
 ターミナル駅のホームに着く。
 休日なだけあって大勢の人混みに流されるように改札を通る。

「ふい~、毎度の事だけどスゴイ人の数だね~」
「都内出んのに藤宮で乗り換えるヤツもいるし当然っちゃ当然だな」

 真っ先に改札を出た田口先輩と中居先輩が並んで背伸びをしている。

「そうそう! それにこの辺じゃ藤宮が一番遊べる場所だしね~」
「水瀬、今日は遊びに来たんじゃないからな」
「はーいわかってますよーだ」

 そんな会話をしながら水樹先輩と水瀬先輩も遅れて改札を通ってきた。

「これで全員集合……ってわけじゃないみたいだな」
「ったく。佳奈子の遅刻癖は治らねーな」
「これは中居の旦那不行届だな」
「ぎゃはは! さ、佐藤くん! それウケるっしょ――いてっ!」
「おい田口うるせーぞ」
「なんで俺だけ~」

 いつもと変わらないやり取りで盛り上がっていると

「ご、ごめーん」

 という声と共に及川先輩の姿が見えた。
 あ、コケた。
 
「いてて~待たせてごめん~」
「大丈夫ですか? 先輩」
「うん大丈夫! ありがと、柚希ちゃん」
「柚希は及川と面識があったのか?」
「うん。部活隣のコート同士だし」
「そっか」
「そうそう。ということで行きますか」  

 そう言って仕切り出す及川先輩の頭に中居先輩がチョップした。

「いたーい。も~チョップしないでよ~」
「遅刻しといて仕切るんじゃねーよ」
「だって遅刻厳守って書いてあるもん。ほら」

 そう言ってスマホのLINE履歴を見せてきた。
 あぁ、確かに遅刻厳守って送られてきてたなぁ。
 まさか本気にするなんて。

「南……やっぱり犯人はお前だったのか」
「あ、これは……あはは~」

 笑ってごまかそうとする水瀬先輩に、みんな頭を抱えている。

「ま、まぁこれが南の平常運転だし、な?」
「そうそう! そーゆーこと!」
「友也君。それは優しさじゃなくて甘やかしよ?」
「うぅ~、せっかくトモが励ましてくれたのにぃ~」

 お兄ちゃんに泣きつく水瀬先輩の頭を私は優しく撫でる。 
 頑張れ、水瀬先輩。

「全くもう。それにしても、思ったより暑いわね」
「そうだな。それなら先にかき氷食べに行くか」
「「「さんせーい」」」
 

 そういうわけで先にコールドデイズに来た。
 この暑さの中で考えている事は皆同じようで、既に行列が出来ていた。 


「お、なんだ友也じゃないか」

 と、スーツ姿の綺麗な女性が声を掛けてきた。
 しかもお兄ちゃんと知り合いっぽい。
 おまけに、かき氷を頬張る姿が可愛らしい。
 ここに来て大人のライバルが出てくるなんて想定外だ!

「ま、真弓さん!?」
「こんなところでバッタリ遭遇するとはな。学校の友達か?」
「はい、クラスメイトと、こっちは俺の妹です」
「初めまして。佐藤柚希です。兄がいつもお世話になってます」
「おーこれはどうもご丁寧に」

 真弓さんはかき氷を片手にお辞儀を返してくれた。
 それからお兄ちゃんの手引きもあり、その場の全員が挨拶を交わした。

「さてと、ちょっと失礼」

 挨拶を終えると真弓さんは私達の間に割り込んできた。

「あの~真弓さん」
「なんだ?」
「なんで並んでるんですか?」 
「そりゃあかき氷が食べたいからに決まってるだろ」
「それは見ればわかるんですけど、割り込みは良くないですよ」
「固い事言うなよ。お前と私の仲じゃないか」

 真弓さんはお兄ちゃんの肩をバンバン叩く。

「っていうか、さっき食べてたじゃないですか。……もしかして2つ目?」
「4つ目だが?」
「4つ!? 食べ過ぎですよ!」
「仕方ないだろ。忙しいからお1人様1つまでって言われたんだから」

 そう言って真弓さんは口を尖らせる。
 まるでお預けを喰らった子供みたいで可愛い。

 話を聞くと、真弓さんはインスタ映えを狙って何種類も買っているらしい。
 そういえばお兄ちゃん、前に『職場で真弓さんからインスタを勧められた』って言ってたっけ。

「む、友也もようやくインスタ始めたか」
「そうなんですよ。始めてみると結構面白いですね」
「わかってるじゃないか。ちなみにほら、これがさっき食べたかき氷だ」
 
 お兄ちゃんと真弓さんがお互いにマイページを見せ合いっこしている。
 するとお兄ちゃんが
 
「ところで、どうして真弓さんが藤宮まで? お店はどうしたんですか?」

 と、不思議そうに問いかけた。
 確かに、咲崎から3つも離れた藤宮市でバッタリ出くわすのはすごい偶然だ。
 しかもファミレスの店長さんなら日曜も忙しいはずだし。

「それがな、今日たまたま店長会議がこの近くでやっててな。その合間にかき氷買いに来たんだ」
「そ、そうなんですか……」

 真弓さんは当り前だろと言わんばかりに言い切る。
 その勢いにこちらが納得せざるを得なくなる。

 っていうか4つって言ってたよね? 
 合間って量じゃない……よね?

 内心ツッコんでいるとお兄ちゃんが
 
「真弓さん、珍しく店長会議に参加したのはかき氷屋が近いからだよきっと」

 と私にだけ聞こえるように囁いてきた。
 真弓さんはちょっとズボラらしい。

「聞こえてるぞ~友也」

 ついでにかなりの地獄耳らしい。

「あ、いや、これは――いててて!」

 お兄ちゃんはあっけなく捕まりプロレス技を掛けられている。
 それを見た先輩達はあたふたしたり大笑いしたりで大騒ぎだった。

 その後、みんなで一緒にかき氷を食べてから真弓さんと別れた。
 ふと振り返ると、真弓さんはまた列に並んでいた。
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