自己顕示欲の強い妹にプロデュースされる事になりました

白石マサル

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第一章~始まり~

プロローグ

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 春、俺は無事二年生に進級できた。
 校門の前で感動で立ち尽くしていた。
 という訳ではなく、緊張して足がすくんでしまっていた。
 何故なら今年からある目標に向かって頑張る事になったからだ。

 『ヲタぼっちの俺がリア充になる!』

 今まで俺はリア充の事を心の中で馬鹿にし、自分の好きなアニメやゲームさえ出来れば人間関係なんてどうでもいいと思っていた。
 そんな俺の信条を変える出来事が3月の終業式の後に起こった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 体育館で校長先生の話を聞いた後、教室で短めのホームルームが終わり、それと同時に高校一年が終わろうとしていた。
 クラスの連中は帰りに一年最後のカラオケに行こう等と話したり、二年になっても同じクラスだといいね! などと話している。
 ぼっちの俺にはそんな話をする相手も居ないし、必要ないとも思っていたのでさっさと身支度を整え学校を後にした。
 3月といってもまだ寒く、身を縮みこまて家に帰って何をしようかと考えながら歩いていると、前方に見える公園からギャルっぽい高笑いが聞こえてきた。
 結構人数がいるのか、沢山の笑い声が聞こえる。
 一体何がそんなに楽しいのかと思いながらギャルたちに気づかれない様に通り過ぎざまにチラリと公園の中を見た。
 すると5人のギャルたちが居た。
 妹の制服と同じだった為、中学生だろう。
 そう考えながら公園を通り過ぎようとした瞬間、一人の女子が目に飛び込んできた。
 ギャル5人に囲まれる様に地面に座り込んでいるのは紛れもない俺の妹だった。
 最初に見た時に妹に気づかなかったのは妹だけ座っていてみえなかったのだ。
 しかし、なんで妹は地面に座り込んでいるのだろう? 
 それに何だか雰囲気が良くない感じがある。
 気になった俺はギャルたちに気づかれない様に公園の中に入り近くの繁みに隠れ会話を聞く事にした。

「マジうけんだけど~」
「何すわっちゃってんの~?」
「お腹でも痛いんですか~?」
「「ぎゃはははは」」

 何だこれは? もしかして妹はいじめられてるのか? 人懐っこくていつも楽しそうに学校の事を話すあの妹が?
 俺は状況を把握するため更に会話に耳を傾けた。

 「まさかアンタにあんなキモイ兄貴がいたなんてね~」
 「思い出しただけで吐きそうー」
 
 どうやら俺の事を言ってるみたいだが、それと妹になんの関係があるんだ?と思っていると、口論が始まった。

「だからどうしたのよ! それより私の事蹴った事謝りなさいよ!」
「は?どうでもよくないっしょ~!」
「そうそう」
「まさかアンタが佐藤友也さとうともやの妹だったなんてね~」
「どうしてかくしてたのかな~?佐藤柚希さとうゆずきちゃ~ん」
「それは、私は私だし! お兄ちゃんは関係ない!」

 妹が力強く反論するが、ギャルたちはそれを嘲笑う。
 っていうか、俺ってそんなに悪評がひろまってるのか。

「いや、関係大ありでしょ~」
「そうそう」
「あんなキモイ兄貴いるやつと一緒に居たくないし~」
「実はアンタもヲタクなんじゃね?」
「きゃはは、言えてる~」

 なんだそれ。俺がキモイから妹もキモイって事なのか?

「私は違う!」
「ふ~ん。ま、どっちでもいいけどね~」
「どういう意味よ?」
「アンタ高校兄貴と同じ所行くんだろ?アタシたちは学校ちがうからさ~」
「だから何?あなた達に関係ないでしょ?」
「そ。もう関係ないね~」
「だから二度と友達面しないでね~」

 そういいながら足で地面を蹴って妹に砂を掛ける。
 そして「兄貴となかよくね~、きゃはは」 と言いながらギャルたちは去っていった。
 妹を見ると悔しそうに俯き握りこぶしを作って震えている。
 思わず駆け寄りそうになるがグッと堪える。
 今俺が出て行けば妹は更に惨めになると思ったからだ。
 しばらく様子を見ていると妹は立ち上がり砂を払って家に向かって歩き出した。
 その足取りはしっかりしていて、とてもさっきまで苛められていたとは思えない程だった。
 妹が完全に見えなくなってから俺も帰路に着いた。
 
 家に着き、「ただいま~」と言って自分の部屋に向かう途中でリビングに居る妹をチラリと見て自分の部屋へ入った。

「はぁ……」

 部屋に入るなり俺は大きなため息を吐いた。

「チラッとしか見えなかったけど、泣いてたよな……」

 俺は今まで自分さえ良ければいいと思っていた。
 周りからどう見られようと全く気にしなかった。
 そんな事よりもゲームやアニメの方が大切だった。
 でも、そんな俺でも妹の柚希は大事にしてきたつもりだった。
 シスコンと思われるかもしれないが、柚希だけが俺にとっての大切な存在だった。
 だが、そんな柚希を俺のせいで泣かせてしまった。

「きちんと話した方がいいよな……。」

 そう思いリビングに向かうと柚希はもう泣いておらず、いつも通りの笑顔でスマホを弄っていた。
 やがて俺に気づき

「あ、お兄ちゃん帰ってたんだ。おかえり~」

 いつもの調子で声を掛けてくる。
 あんな事があった後なのに。
 俺はなるべく普段通りに話しかけた。

「おう、ただいま」

 いつも通りにソファーに腰を掛けてから、少し真剣なトーンで聞いてみる。

「今日で中学最後だったろ? どうだった?」
「う~ん、特別変わった事は無かったかな~。カラオケに誘われたけど今月ピンチだから断ってそのまま帰って来た感じ」
「そっか」

 いつも通りの柚希だ。
 そしてギャルたちの一件には一切触れなかった。
 無理をしている様子でも無さそうに見える。
 だから俺は確信を突く事にした。
 
「柚希、俺の事で虐められたりしてないか?」

 俺の言葉に一瞬ビックリするような表情を見せたが、直ぐに笑顔になった。

「なに言ってるのお兄ちゃん、そんな事ないよ~」

 笑いながらそう言う。
 だが、俺の次の一言で柚希から笑顔が消えた。

「さっき公園でギャルグループに囲まれてただろ?」
「……」

 笑顔が無くなり、目線を下に下げた。

「見てたんだ……?」
「偶然な」
「そっかぁ……」

 そう言った後少しの沈黙が続いたが、柚希が意を決した様に話し始めた。

「私ってさ、自分で言うのもなんだけど、男子からも女子からも好かれてて、お兄ちゃんが言う所のパーフェクトヒロインだと思うんだ」

 俺もそう思う。柚希は勉強や運動も出来て交友関係も広いからな。

「クラスのトップカーストにも属してるしね。私凄いリア充でしょ?」

 そう言ってまた「ふふふ。」と笑う。

「それでね、クラスにはもう一つのトップカーストのグループがあるんだけど、それがお兄ちゃんが見たギャルグループなんだよね」

 そうだったのか……。

「ウチのグループとそのグループはそんなに仲良く無くて、たまに衝突する事はあったけどそれ以外ではお互いに干渉しないようにしてたんだ。」

 柚希の事だから衝突するたびに間に入って仲裁していたのだろう。

「お兄ちゃんって悪い意味で中学の時有名だったじゃん? いつも一人で居てマンガ読んだりゲームしてたりしてて、話す時もぼそぼそと何言ってるかわからないキモヲタクだって。」

「ああ……。」

 俺が遠慮気味に相槌をする。

「私とお兄ちゃんて全く正反対じゃん? だから私がお兄ちゃんの妹だって分からなかったみたい。お兄ちゃんも学校では絶対に私に近づこうともしなかったしね。」

 俺が兄貴だと知れたら柚希に迷惑かけると思ってたからな。

「それでね、去年の入学式の後、お母さんに頼まれて一緒にスーパーに買い物に行ったでしょ? それをギャルグループの一人が見てたらしくて、私が妹だってばれちゃったんだよね。

 あの時見られてたのか。 迂闊だった。

「次の日にギャルグループがウチのグループに接触してきて、私がお兄ちゃんの妹だって皆にバラしたの。皆凄いおどろいてたなぁ。」
「それで虐められる様になったのか?」

 俺がそう訊ねると

「ううん。武田君っていうグループのリーダーが庇ってくれたから。実質3年のトップのリーダーの言う事には他クラスも含めて逆らえないっていう状況になって、それ以降私がお兄ちゃんの妹という事で私をいじるなっていう暗黙の了解が出来たんだ。」

 それならなんで……?

「なら今日の出来事はどうして?」
「中学最後だからこれまでの分も含めてのお礼参りだってさ。今時お礼参りなんて笑っちゃうよね~。」

 そう言いながら柚希は笑った。
 でも、俺には泣いている様に見えた。
 
 だから俺は決心した。

「柚希! どうすればリア充になれる?!」

「……、ええええぇぇぇぇ?!」
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