時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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サクラ 男の子になる

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「う・・ん・・。もう朝か」

小さくけ伸びをすると、早速その身を隠していた細い路地から這い出てきた。
昨晩、町の裏通りに捨て置かれてから、比較的安全そうな家と家の小さな隙間に潜り込み、薄いマントを上からかぶって眠りに着いた。

もう町は動き出していて、たくさんの人が通りをあるいていた。
パンを配達に行く者、仕事先に向かう者、この活気を見て理解できることは、この王都はかなり発展しているようだ。

異世界に来てから見る、初めての町の光景に感動したが、その後自分の身に置かれた状況を思いだして、気を引き締めた。

まず、ここで生き延びていくには仕事を探さなくちゃね。
この世界の常識や生活方法も、さっぱり分からないのも問題だわ。

硬い地面に寝て、痛くなった腰をさすりながら考えを巡らす。
でも一番に確認したいのは、時間を止める能力についてだ。この能力を使ったのはただ一度きり。またいつ発動できるのか、どれくらいの時間止めていられるのか、疑問は尽きなかった。

試しに一度やってみることにした。


「時よ、止まれ!!」


すると周りの景色が一瞬にして凍った・・・ように見えた。そこここにいた人々が瞬間を切り取ったように停止している。
ある者は隣人と会話したままの仕草で、ある者は走っていた足を上げたままで、不自然な格好のまま時を止めていた。

そして静寂。

朝の喧騒の中、突然やってきた静寂に、息を呑んだ。

すごい!すごい!


この機会に、能力について疑問に思っていた答えを探す。

それで分かったことは、私が動かす意思を持って触れたものは、静止した世界にあっても、再び時を刻み始めるってことだ

人で試すのは怖かったので犬で試してみた。
動けと念じながら触れれば、飼い主に飛びかかろうとした瞬間に時が止まり、そのまま宙に浮いていた犬が再び動き始めた。また止まれと念じながら触れば、また止まった。

それと時を止めている間は、お腹が減りもしないしトイレに行く必要もなかった。
ってことは漫画とかでよくある、時を止めすぎてしまって、一人だけすごい速さで年をとっていくってことにもならなそうで、ほっとした。そういえば、そんなドラマあったよね。

わざわざ時間を止めているのだからと、私は子一時間町を観光・・・もとい観察することにした。

この世界で生きていくには、神官達に気づかれてまた命を狙われてはたまらない。
幸い私の顔を見知った神官や神殿つき侍女たちは、基本神殿をでることが稀らしいので気づかれる可能性は少ないだろうけど、用心するに越したことはない。
私の命など、瑣末な虫けらのように思っているであろうセアイアスの冷たい瞳を思い出すと、ぞくりと冷たい感覚が背中をおそう。

つかまるわけにいかない。

幸い桜の黒髪は、珍しいものではないらしいことが、町の人を観察して分かった。だが桜のように透き通るように輝く黒くてまっすぐな髪を持った者は、あまりいないようだ。
その黒曜石のような瞳もしかり。

街中の時を止めたまま観察しながら、一軒の店に目をとめた。そこは美容関係のお店らしく、なんと髪の色や眼の色、しかも肌の色までも自在に魔法で替えられるらしい。
1ヶ月そのままの色を保って200ルーラ。
1ヵ月後にはまたお店で施術してもらわなければいけないらしい。

しかしこれを使ってしまうと、所持金は殆ど底をついてしまう。
かなり悩んだがやっぱり身バレは一番避けたいことだ。。

時を止める魔法で、食べ物やお金をどこからか取ってくるのは簡単だけど、それって盗みではないか。
それを必要とし、所持している正当な持ち主から拝借するのは、倫理観に大いに反する。
いついかなるときでも人間としての最低限の尊厳は保っていたかった。たとえ自分の命がかかっていたとしても・・・。


私はどんなことがあってもこの能力で、盗みは絶対にしない。
これだけは守ろう。

そう決意した。

時を止めていた力を解放し、再び時を動かした後、黒髪をこの世界ではあまり目立たない金髪に、その黒い瞳を青い眼に替えて貰った。
鏡に映った自分の顔を見た時、ものすごい違和感を感じた。


うわー。典型的日本人のっぺり顔に、金髪、青い眼ってなんか雑誌で見たコスプレイヤーみたいだ。おじいちゃんが見たら勘当されそう。あっ・・・コスプレイヤーの人、ごめんなさい。

ついでに美容員のお姉さんに、住み込みで働くならどこがいいのか聞いてみた。もちろん自分は田舎から出てきた天涯孤独の身で、王都に着の身着のまま出てきて職を探しているという作り話をでっちあげてだ。

「そうねえ。住み込みとなると、どこかのお屋敷の侍女っていう手もあるけど、紹介状が必要だし、どこかの宿とかならあるかもね。そうそう、騎士団の訓練施設の雑用係募集って言うのはこの間見たけど、あれは男子限定だから。」

「えーーー!どうして男子のみなんですか?男女雇用均等法違反です。」

私は騎士団と聞いて剣豪の血が騒ぎ、間もおかずに突然叫んだ。

この世界の剣の技。見てみたい!!なのに男子のみなんて!!

「男女きんとー・・・。なにそれ。だって、あたりまえじゃない。あそこは上級騎士専用の宿泊施設も兼ねた訓練場だから、住み込みで朝から晩まで騎士さんの面倒を見るのよ。女の子なんて募集したら、騎士さんとあわよくば結婚したい女の子がいっぱい群がって、収拾つかなくなっちゃう」


この世界では騎士という職業は花形で、たくましい体に騎士という地位、しかも良い給金に惹かれて女の子からは引く手あまたらしい。
その中でも上級騎士は貴族出のものが殆どなので、普通の人では一生その顔すら拝めないようなくらい、雲の上の存在らしい。

くぅ。羨ましい。私なんかいくら剣が強くても全然もてなかったわ!!

訳の分からないところで、悔しがってみる・・・が、はたと思った。


そうだ、男の子の振りをしてそこで働けばいいんだ。そうしたら住み込みでお金を貯めながらこの世界の暮らしを学べるし、剣技もみられて一石二鳥。
しかも男の子に変装してたら、あの神官達にも私が生きているって気づかれる心配はゼロに近くなる。

なによりも、騎士の訓練場という響きが、抗えない魔薬のように惹きつけられる。
あの道場の埃っぽい空気、皆の汗や防具の入り混じった香り。
あーまたあの空気に触れたい!

そこからの私には、一切の迷いはなかった。

美容員のお姉さんに場所を聞きお礼を言うと、すぐに最後のお金をはたいて、少年の着る服を買った。
その服に着替えて肩まで伸びる髪を、麻紐で一つに結ぶと、そこには13歳くらいの少年がいた。胸はそんなに大きくはないが、17歳の乙女ほどには多少あるので、なんとか布で締め付けた。

うーん。
これはどこからどう見ても少年で通用する。

嬉しいのか悲しいのか分からないが、夢に一歩近づいたので良しとしよう。
そう自分を励ました。



私の今の持ち札。   チートな時を止める能力。少年の容姿
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