32 / 57
クラウスの災難
しおりを挟む
質実剛健な造りの部屋の一角に置かれた机で、一心不乱に仕事の手を休めることなく、クラウス騎士団総長は膨大な書類に目を通す。
普段は騎士団本部にいる筈なのだが、サクラの失踪以降、王城で騎士団の仕事とサクラの捜索に忙殺されていた。
そこに誰かが扉をノックする音が聞こえる。クラウスが返事をするのもまたずに、その扉は乱暴に開かれた。
そこにいたのは、蒼いドレスに身を包み長い銀の髪をはためかせながら腰に手を当てて仁王立ちしている、ヘルミーナ伯爵令嬢だった!
「久しぶりだな、クラウス。お前クリスティーナとかいう女に随分傾倒していると聞いたぞ?私との婚約は破棄という事でいいんだな」
クラウスにとってヘルミーナと直接話をするのは、実に7年ぶりのことだったのだが、未だクリスティーナの転換の魔法が効いている現在、クラウスは何の感慨も浮かんでこなかった。
婚約破棄?
「ああ、私の婚約者のヘルミーナか。念願の騎士にもなれたようでお祝いを言っておくよ」
婚約破棄・・・。
クラウスは目の前で悠然と立つヘルミーナを一瞥して冷静な話し方で言う。それに答えるように、ヘルミーナが軽快に話し出す。
「クラウス。お前はアホか?あんな女にしてやられるとは、それでよく騎士団総長が務まるものだ。まあいい、婚約破棄のことは拳3発で許してやる。甘んじて受けろ」
婚約破棄?!
ヘルミーナは突然クラウスの腰掛けている脇に回りこみ、返事も聞かないうちにその襟首を掴んで引きずりあげたかと思うと、腹に全体重を込めて拳を打ち込んだ!
「まっ待てっ!!ヘルミ・・・ぐほっ!!がはっ!!ぐへっ!!」
クラウスの部屋に3回。大きな音が響いた。ヘルミーナがいくら女性であろうとも、上方から全体重を込めて打たれた拳はかなりの力がこもっていた。クラウスの脳裏に、昔の思い出がよみがえってくる。
この拳。初めてではない・・・以前にも受けた事がある。そうだ、ヘルミーナの鼻をかんだちり紙を額縁に入れてコレクションしていたのを見つかった時、ヘルミーナが使った後のスプーンを全てコレクションしていたのを見つかった時に受けた痛みと同じだ。
ヘルミーナ・・・私のミューズ!!・・・婚約破棄だと!!?そんなもの受け入れられるはずが無いではないか!私が何の為に血反吐を吐くような努力をしてまで、騎士団総長になったと思っている!
クラウスは暫く痛みに耐えた後、なんとか顔を上げてヘルミーナに懇願した。
「ヘルミーナ!婚約破棄だけは勘弁してくれ。産まれた時から私が愛しているのは君だけだ!他の女などただの置き物にすぎん!!」
ヘルミーナは顔にかかったその輝く銀色の髪を片手で払うと、そのクールな顔をほころばせていった。
「ようやく元にもどったか。良かったな、命拾いをしたぞ、クラウス。さあ、ギルセナ王国に殴りこみに行くぞ。準備しろ。ちなみにお前が産まれた時には、私はまだこの世に存在すらしていなかった。そこは訂正しておけ」
クラウスは戦の女神のような、神々しい姿をしたヘルミーナを見て、更に彼女への愛を深めた。
ああ・・・未来永劫愛している。
我がミューズ、ヘルミーナ伯爵令嬢。
普段は騎士団本部にいる筈なのだが、サクラの失踪以降、王城で騎士団の仕事とサクラの捜索に忙殺されていた。
そこに誰かが扉をノックする音が聞こえる。クラウスが返事をするのもまたずに、その扉は乱暴に開かれた。
そこにいたのは、蒼いドレスに身を包み長い銀の髪をはためかせながら腰に手を当てて仁王立ちしている、ヘルミーナ伯爵令嬢だった!
「久しぶりだな、クラウス。お前クリスティーナとかいう女に随分傾倒していると聞いたぞ?私との婚約は破棄という事でいいんだな」
クラウスにとってヘルミーナと直接話をするのは、実に7年ぶりのことだったのだが、未だクリスティーナの転換の魔法が効いている現在、クラウスは何の感慨も浮かんでこなかった。
婚約破棄?
「ああ、私の婚約者のヘルミーナか。念願の騎士にもなれたようでお祝いを言っておくよ」
婚約破棄・・・。
クラウスは目の前で悠然と立つヘルミーナを一瞥して冷静な話し方で言う。それに答えるように、ヘルミーナが軽快に話し出す。
「クラウス。お前はアホか?あんな女にしてやられるとは、それでよく騎士団総長が務まるものだ。まあいい、婚約破棄のことは拳3発で許してやる。甘んじて受けろ」
婚約破棄?!
ヘルミーナは突然クラウスの腰掛けている脇に回りこみ、返事も聞かないうちにその襟首を掴んで引きずりあげたかと思うと、腹に全体重を込めて拳を打ち込んだ!
「まっ待てっ!!ヘルミ・・・ぐほっ!!がはっ!!ぐへっ!!」
クラウスの部屋に3回。大きな音が響いた。ヘルミーナがいくら女性であろうとも、上方から全体重を込めて打たれた拳はかなりの力がこもっていた。クラウスの脳裏に、昔の思い出がよみがえってくる。
この拳。初めてではない・・・以前にも受けた事がある。そうだ、ヘルミーナの鼻をかんだちり紙を額縁に入れてコレクションしていたのを見つかった時、ヘルミーナが使った後のスプーンを全てコレクションしていたのを見つかった時に受けた痛みと同じだ。
ヘルミーナ・・・私のミューズ!!・・・婚約破棄だと!!?そんなもの受け入れられるはずが無いではないか!私が何の為に血反吐を吐くような努力をしてまで、騎士団総長になったと思っている!
クラウスは暫く痛みに耐えた後、なんとか顔を上げてヘルミーナに懇願した。
「ヘルミーナ!婚約破棄だけは勘弁してくれ。産まれた時から私が愛しているのは君だけだ!他の女などただの置き物にすぎん!!」
ヘルミーナは顔にかかったその輝く銀色の髪を片手で払うと、そのクールな顔をほころばせていった。
「ようやく元にもどったか。良かったな、命拾いをしたぞ、クラウス。さあ、ギルセナ王国に殴りこみに行くぞ。準備しろ。ちなみにお前が産まれた時には、私はまだこの世に存在すらしていなかった。そこは訂正しておけ」
クラウスは戦の女神のような、神々しい姿をしたヘルミーナを見て、更に彼女への愛を深めた。
ああ・・・未来永劫愛している。
我がミューズ、ヘルミーナ伯爵令嬢。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで
渡里あずま
恋愛
アデライトは婚約者である王太子に無実の罪を着せられ、婚約破棄の後に断頭台へと送られた。
……だが、気づけば彼女は七歳に巻き戻っていた。そしてアデライトの傍らには、彼女以外には見えない神がいた。
「見たくなったんだ。悪を知った君が、どう生きるかを。もっとも、今後はほとんど干渉出来ないけどね」
「……十分です。神よ、感謝します。彼らを滅ぼす機会を与えてくれて」
※※※
冤罪で父と共に殺された少女が、巻き戻った先で復讐を果たす物語(大団円に非ず)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる