《 アルファ編 》 時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか? 

南 玲子

文字の大きさ
41 / 57

サクラの回想

しおりを挟む
私は今何をしているんだろう。ドリトス村に来て、村長さんの家でお世話になってて・・・そうだ、お花の世話もしないと・・。

あれ?違った。明日から期末テストだ。全然勉強していない。友達の雪菜ちゃんにノートのコピーを頼もう。やきそばパンで手を打ってくれるはずだ。

剣道部はどうだったっけ、朝練にもいって、そうだ先に塚本くんに道場の鍵を開けてもらわないと・・・。

頭の中がふわふわする。いい気持ち。もうこのまま何も考えたくない。目の前に誰かがいる・・・。だれ?あっ・・・。

おじいちゃんだ!おじいちゃんが目の前にいる!!おじいちゃんの部屋だここ。畳の6畳間に机に、剣道の賞状が天井近くに並べられている。懐かしい・・。

あ・・寝てたみたいだけど、おじいちゃんも私に気がついたみたいだ。なにか言っている。

《 桜か?桜なのか。一体どこにいるんだ。急にいなくなってみんな心配して探しているんだぞ!神隠しだとかマスコミは騒いでおったが、なんだか元気そうで良かった 》

《 うん。おじいちゃん。私、元気だよ。異世界に聖女だって言われて召喚されちゃって、もう大変な目にあったけど、今は大切な人も沢山できて幸せに暮しているよ 》

《 聖女?召喚?なんだ、最近の若者の言葉はわからん。元気ならよかった。いつ帰ってくるんだ? 》

《 それが行くのはできても帰るのはできないんだって。なのでもう帰れないの。でも、私絶対この世界で幸せになるから、安心して 》

《 わかった。帰れないならしょうがない。だが、倉島流剣道だけは絶やすんじゃないぞ。そちらの世界でも続けていくんだぞ 》

《 うん分かった。おじいちゃん・・・なんか姿が遠く・・・な・・・て・・・ 》


そこで目が覚めた。私はドリトス村の村長の家のベットの上にいた。そうだ・・昼間ブレント君に会って、悲しみが減って幸せが増える飴を貰って・・・するとなんだか変な気分になって寝ちゃったんだよね。・・・どう考えても、なんか変な飴だよね。

ふと窓の外に目をやると、外で村人が集まってなにか深刻な話でもしているようだった。そこに、村長さんのハンスさんがいるのも見えた。

何の気なしに、カーデガンを羽織って外に向かった。村長さんに声をかけようとした瞬間、彼らが私の名を口にしたのを聞いた。

サクラ・・・と。

そんな馬鹿な!この村の人やブレント君でさえ、私の本当の名前は知らないはず・・・サクラという名前を知っているということは・・・私が聖女だって事も知っているに違いないってことだよね!

踵をかえして誰にも気づかれないように、再び村長さんの家の自分のベットに戻った。考えろ。考えろ。

私はクリスタルを外して、誰かから伝心魔法が入るのを待ったが、だれもかけてこない。まあ深夜だし、そんなこともあるよね。そう思って次は夜空を眺めてみる。図書館でこちらの天体の位置について読んだ知識を思い出した。この世界では二つの月の角度と距離で、経度がわかるらしい。

月を見てみると、王城で見ていた月と角度が随分違うことに気がついた。王城では[ こ ]の形だった月が、今は [ い ]になっていた!!!

こりゃえらいこっちゃ!!詳しいことは分からないけど、かなり遠くに来ていることは確かだった。そりゃ伝心魔法使えないよ!国内電話じゃなくて国際電話じゃない!

・・・ということはこの飴も、ものすごく怪しい。これ麻薬系の代物じゃないのかな?学校で警察の人が来て説明会があったときに聞いた症状にそっくり。いい気持ちになって脱力感があって眠くなる。

いや、麻薬はいい気持ちになって興奮するんだっけ。じゃこの薬は交感神経じゃなくて、副交感神経を高める系の薬なの?よく分からないけど、なにか入っているのは間違いなさそう。

やばい・・・異世界で麻薬中毒なんてしゃれにならない。しかも聖女って事がばれているとしたら、十中八九私の能力目当てじゃないの!!でもまてよ。この能力ってば、私の意志のみが発生条件だ。誰かが利用できるようなものではない・・・ってことはやっぱりこれ麻薬だぁーーーー。

どうしよう。月の位置を見る限り、アメリカと日本くらい離れていそうだ。時間を止めちゃったら誰にもウェースプ王国までの道を聞けないし、方向音痴の私は絶対に迷子になる自信がある。しかも大陸すら違って、船に乗らないといけないかもしれない。時を止める事しかできない私じゃ脱出は不可能だ!!

よし、ここは様子を見て、誰かが助けに来てくれるのを待とう。とにかく今は自力で逃げる時じゃない。だって私こんな山奥にいるんだよ?!一生、時が止まったまま森でさまようなんて事になりかねないのよ!?

あー本当にこの能力って、殺しか盗みにしか役にたたない。テレポーテーションとかサイコキネシスとかのほうが、よっぽど良かった。

私はその日、怒りに震えながら眠りについた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

ドラゴンに攫われた聖女ですが、このドラゴン、めちゃくちゃ過保護でイケメンです

夏見ナイ
恋愛
聖女アリアは、魔王討伐後は用済みとされ、国から冷遇される日々を送っていた。心も体も疲れ果て、聖女という役割に絶望していたある日、伝説の「終焉の黒竜」が彼女を攫っていく。 誰もが生贄になったと嘆く中、アリアが連れてこられたのは雲上の美しい城。そこで竜は絶世の美青年カイザーへと姿を変え、「お前を守る」と宣言する。 待っていたのは死ではなく、豪華な食事に癒やしの魔法風呂、そして何より不器用で真っ直ぐなカイザーからの過保護すぎるほどの溺愛だった。 これは、全てを諦めた聖女が、世界最強のイケメンドラゴンに愛され、本当の自分と幸せを取り戻していく、極甘ラブストーリー。

処理中です...