《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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クラウス騎士団総長の愛の形

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私が淑女教育に王城に来てから3日がたった。

ユーリが魔獣退治を終えて帰ってくるとの連絡を、クラウス騎士団総長から受けとった。彼は今日、たまたま報告会議があったので王城にきていたらしい。そこに魔獣全滅の報告を受け、すぐさま私に知らせてくれたのだ。

私は王家の歴史の勉強の最中だったのだが、急きょクラウス様に会うということになって、歴史のジュリエス先生を待たせて、応接室に今クラウス様と二人きりで座っている。クラウス騎士団総長はユーリの長兄なので、表向きはユーリの婚約者であるセシリアにとって、彼は未来の義兄という立場になるのだ。

豪華なオークの丸テーブルに、クラウス様と私は向かい合わせに座っていた。王城にある応接室だけあって、どんな高貴な来客にも対応できるように、贅沢の限りを尽くされている。惜しげもなく使われている金の置物や装飾。天井から床に至るまで、余すところなく豪華に飾り付けられていて、半年前まで日本で超庶民の生活をしていた私は、未だに慣れない。まるで自分がテーマパークにでもいる気になる。

私は侍女が淹れてくれた紅茶に口をつける。その姿をクラウス様は温かい目で見守っている。

淑女教育のお陰で、私のマナーは完璧のはず・・。だけど私クラウス様と話をする時はいつも緊張する。何と言うか外見はユーリと一緒で柔和で、いつも唇に微笑みを浮かべているんだけど、目が笑ってないというか・・・。物凄い威圧感を感じる。やっぱり騎士団総長だけあるなぁ・・。

「我が弟が無事に帰ってきてくれて嬉しいでしょう。ユーリスのやつ一刻も早くセシリア譲に会いたいがために、3日で43体の魔獣を殆ど一人で倒したらしいですよ。ユーリスは君以外、何も目に入っていないようだ」

クラウス様は目の前に用意された、湯気の立っている紅茶を無視したまま、私の顔を探るような眼で見ている。

「ユーリス様の心配はしていません。彼なら魔獣が何体でようとも大丈夫でしょう」

これは嘘ではない。ユーリには出征に行く前に必ず伝えていることがある。もしその身に危険が及べばすぐに伝心魔法で私に伝えてほしいと・・・。そうすれば私がすぐに時を止めるから、その隙に魔獣だろうが何だろうが倒すことができるだろう。

クラウス様も私の時を止める能力を知っている数少ない内の一人だ。しかも時を止める能力に干渉されない、3つの宝飾の一つであるネックレスを身に着けている。

「全くユーリスの愛の表現は直接的過ぎて、こっちが恥ずかしくなりますね。3日で43体はありえない記録だ。私には到底真似できない」

確かにユーリの愛の表現は恥ずかしいものばかりだ。それは認めよう・・・。後で思い出して悶絶するほどに恥ずかしいレベルの事を、さらりとやってのける。だけどクラウス様があんまり面白そうに言うものだから、私は少し仕返しのつもりで聞いてみた。

「クラウス様にも婚約者様がいらっしゃるとお聞きしましたが、クラウス様はどういった愛情表現をなさっているのですか?」

ふふふ。これを言わせられるのは恥ずかしいはずだ。後ろに控えている侍女達だって、いま耳をダンボにして聞き耳をたてている。齢27にして騎士団総長に就任し、現在30歳の独身の公爵様だ。ユーリのお兄さんだけあって、顔立ちも整っている。婚約者がいたとしても、もてない訳がない!

「私の場合は、見守る形の愛ですかね。もう7年もあの人を見守って待ち続けています。あの人が自分の夢に満足して、最後に私の隣に戻ってきてくれるのを待っているのです。そのために騎士団総長にもなりましたしね」

うわぁ・・・なんて素敵な愛の形なんだろう。うーん。やっぱりクラウス様は大人だなぁ。直球勝負のユーリとは大違いだ。

その後、アルに寂しそうな顔をされながらも、王城を後にしてアイシス様のお屋敷ルベージュ子爵家に護衛付きの馬車で戻った。これでセシリアとして王城で淑女教育を受ける日々は終わって、騎士団訓練場の雑用係クラマとしての生活が始まる。

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