《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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ウェースプ王国 国王崩御

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緊急会議が開かれてから1週間がたって、襲撃者の神殿への襲撃はぱったりとやんだ。いつ王城を襲いに来るのかと不安な毎日を送っていた時に、突然ルーク補佐官が早朝私の部屋に来たかと思うと、国王陛下が崩御されたことを伝えられた。私はすぐにアルの様子が気になったが、王城内の人たちもバタバタとしていて、会うことはできなかった。

私はあの事件の後、何度か聖女として国王陛下に非公式でお会いしたことがある。その時見た陛下はもうかなり衰弱していて、あまり長くはなさそうだった。

私は一度アルにだけこっそり提案してみたことがある。私が3種の宝飾の指輪で過去に戻ればどうかということだ。国王陛下が病気になる前まで戻れば、もしかしたら陛下の命を助けられるかもしれないと思ったからだ。

でもその考えはすぐにアルに却下された。国王陛下が病気を患ったのは5年前からだということ。過去に戻っても国王陛下が病気にならない保障はないということ。過去に戻ればまた私は今までの記憶を持ったまま東京に戻って、5年間をやり過ごさ無ければならないということ。過去に戻って歴史が変わって、もしかしたら私が異世界に召喚されることも起こらないかも知れない事。全てのリスクが考えられて、結局過去に戻る案は却下された。

国王陛下の崩御はウェースプ王国に多大なる悲しみを運んだ。王国中で半旗が揚げられ、国王の思い出を語る人たちが溢れた。実際の王国の統治は、もうずいぶん前からアルフリード王子が行っていたため、実際の生活に対する影響はあまりなかったが、王国中で慕われていた国王の崩御は国内外を問わず反響をよんだ。

数日後に友好国である近隣諸国の王族を招いて、盛大な葬儀が行われることになった。私はといえば、突然の大きなセレモニーの為の準備で大忙しだった。淑女教育であらかたの王国内の貴族のデータは頭に叩き込まれていたが、王国外の王族はまだなにも準備ができていなかった。

再びマナーの先生であるフリオニール先生の特別授業が、一日を通して行われることになった。ユーリが部屋の隅で護衛をしながら、気の毒そうな目で私を見ている。うっうっ・・・・。

「はい、これが我が王国と並べて称される3大王国。ギルセナ王国と、ナイメール公国です。ギルセナ王国のレンブレント王は独裁王として有名で、現在5人の側室がいらっしゃいますが正妃はまだ迎えていらっしゃいません」

ほうほう、お盛んなことで・・・。こういった一夫多妻制は、もうすぐ18歳の乙女の私には破廉恥極まりなく聞こえる。もしかして、ユ・・ユーリもたくさん奥さんが欲しい人なのだろうか・・・?!でも、訓練場の騎士様達はみんな奥様一筋だった。きっと騎士様と王様では立場が違うのだろう。私は胸をなでおろした。

「次にナイメール公国のユリアナ皇女様。この国は皇女様が代々国を統治する伝統です。しかも皇女様は殆ど公式の場にさえ姿を現しません。そのお顔も一部の者しか拝顔できません。なので別名幻の皇女様ともいわれています。恐らく今回の葬儀にも来られないと思います。皇女様の配偶者である、ソルデア王おひとりで参加されるでしょう」

ほうほう、このお二人はもう40台半ばであるに関わらず仲睦まじいらしく、ソルデア王に側室はいないようだ。しかも二人の間には世継ぎさえもできていないというのに、感心なことだ。なのでソルデア王の弟の息子に、王位継承されることが決まっている。

「あれ、なんだかおかしくありませんか?代々皇女様が国を統治されるのではないのでしょうか?」

私が質問すると、フリオニール先生がその先の細い眼鏡を指で押し上げながら答えてくれる。

「そうですよ。ですから王の妻になられる方が、皇女様になるのです。皇女様を選ぶ基準は決まっているようで、毎回同じ血筋の貴族から選ばれているようです」

ふうん、そうなんだ。でも血が濃くなってよくないんじゃないかな?


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