《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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恐ろしい伝染病 ツエウブ病 

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私が目を覚ますと、そこはセシリアの寝室のベットの上だった。いつもと違うのは目の前にアイシス様のドアップの顔があったという事だ。私は朝一番で悲鳴を上げた。

「ひゃぁぁぁぁ!!ア・・・アイシス様ぁぁぁ?!!どうしてこんな所に?!!」

朝の光がさんさんと照らす室内に、お色気どばーん、胸の谷間ぼよーんのアイシス様がいたので余計に驚いた。少し冷静になって私の体を見回すと、ちょうどアイシス様が新しい寝間着に着替えさせてくれた後らしい。そばに、着替えが置いてある。

「もう、驚かせないでよね。あなた高熱を出して倒れたのよ。わたくしが三日三晩付きっ切りで看病したのですわ。もう国王陛下の葬儀のセレモニーもとっくに終わって皆さん帰ってしまわれましたわよ」

「えっ!私そんなに眠り続けていたんですか?」

そういえば、お腹が凄く減っている気がする。アイシス様の話によると、私はパーティーの夜泣き疲れて気絶するように倒れこんだらしい。その後ぐんぐん熱が上がって、一時は王室医療班の医療魔術まで受けたくらいに緊迫した事態に陥っていた。

「そ・・・それって、命の危険もあったってことですか?」

私がびっくりして聞くと、アイシス様はあっさりと認めていった。

「そりゃあそうでしょう?あなたツエウブ病にかかっていたのだもの」

はい?ツエウブ病ですと?!!この病気は聞くところによると、この世界では殆どの人が子供のうちに済ませておく伝染病らしい。子供のうちにかかれば症状もたいしたことは無いらしいが、大人になってかかると命の危険もある恐ろしい病気だそうだ。40度の高熱が続いて発疹が出て、10人に7人は死に至る恐ろしい病気らしい。

ひぇぇぇ、よく生きてたもんだ私。そうか異世界から来たからそういった病気に免疫がないんだ。私はまだ薄っすら肌に残る発疹の痕を見て体を震わせた。

「ちょ・・・ちょっとアイシス様・・・私の腕についているものの先にあるあの黒い物体は何ですか・・・!!」

私はぎょっとして聞いてみた。自分の体を見て見ると腕のあたりに針が刺してあり、点滴の要領で何かの液体が血管に送り込まれているのは間違いなさそうだったが、その先についているものがあまりにも異様だったからだ。

「ああ・・・それはデルカですわ」

アイシス様は何ともなしに答えるが、点滴の先についているそれは黒くて大きい毛玉のような物体で、しかも目が二つ付いている。その物体と目が合う。

「ひゃぁぁぁぁ、今、デ、デルカと目があいましたけど、大丈夫なあのでしょうかぁぁぁ???」

アイシス様がいうには、デルカは魔獣の森に生える魔植物で、とても高価なものらしい。はじめはサッカーボール大だが、使うと3センチくらいの大きさになるそうだ。そうなったらまた魔獣の森に植えに行くらしい。

目が見えるのはただの擬態で、捕食されるのを防ぐ目的だといっていたが、その目が動いたり瞬きしたりするのを私は見逃さなかった。

こ・・・これはあかんやつだぁ・・・絶対だめだぁ、人間の使っていいものじゃない!!

私は大慌てで点滴を抜こうとしたら、アイシス様に怒られた。なんでも途中で抜くとデルカは怒って爆発するらしい。爆発の威力は全く無いのだが、ただ周囲にデルカの中身が飛び散って掃除に長時間を要するらしい。デルカの中身の液体は、とても臭くてなかなか取れない油汚れのようなものだそうだ。

・・・・っていうかぁ、怒るってことはやっぱ生きてるんじゃんこれ?!

私はそんな得体のしれない魔植物の中身が自分の体に入っているという事実に、気を失いそうになりながらも、なんとか耐えた。というか、女王様に軽く脅されて仕方なく従った。

アイシス様。私とあの時、ヤンデレ・・・じゃなくて、病んでるムスカ騎士団長と一緒に戦ったの覚えてないんだよね。そうして私をかばって瓦礫の下敷きになっちゃって・・・。

あの時の光景を思い出して、私はだんだんと涙が溢れてこぼれてきた。アイシス様が私が突然泣き出したので驚く。

「どうしたの、お腹でもすいたの?早くお食事を運ばせるからお待ちなさい」

「アイシス様!!ありがとうごさいます。ありがとうございます」

いっときアイシス様の豊満な胸に抱かれて思い切り泣いてすっきりした私は、少しまだしゃくりあげながらだけれども、アイシス様におずおずと尋ねてみた。

「あの・・・私そろそろベットから出て着替えたいんですけど、先にお風呂をいただいていいですか?」

アイシス様が私の方を含みのある表情で見る。私・・・変な事いったのかな?

「貴方、ツエウブ病にかかって死にかけたって言ったわよね」

はい、聞きました。10人に7人が死に至る病気です。怖い怖い。

「アルフリード王子やユーリス様、他の方々も尋常ではないくらいに心配したのよ」

ああ、確かにアルやユーリの反応は予想できる。すごく心配したんだろうなぁ。

「その方達が貴方が目が覚めるのをどれだけ心待ちしていたかも分かってるんでしょうね」

う・・・だからお風呂に入って着替えてからお礼に伺おうと・・・。

「皆さんこの扉の向こうで、寝ずに貴方の目が覚めるのを待っていらっしゃるわよ」

えーーーーー!!!この扉の向こうって、2メートルも離れてない!そこに皆、勢ぞろいって事!?

「ちょっとアイシス様どういった事なので・・・」

私が言い切るよりも前にアイシス様がその扉を開けると、真っ先にアルとユーリが飛び込んできた。目の下に隈が見える。心配かけちゃったんだなぁ・・・と罪悪感に駆られる暇も無く、上半身だけを起こしてベットに座っている私の左手をユーリが握る。

「目が覚めたんですね、良かった!!神様!本当にどうなるのかと思って心配しました」

そして右手を私の足元の方から回ってベットの上に体を置いたアルが握る。

「突然あの夜倒れたと聞いて、しかもツエウブ病だっていうじゃないか。もう死んでしまうのかと心配でこの三日間、殆ど寝ていないんだぞ。心配かけやがって!」

その背後にクラウス様、ヘル騎士様、リューク騎士様にギルア騎士様、ルーク補佐官様が揃っていらっしゃって、私を見て笑ってくれている。

みんな、みんな生き返ったんだね!!本当に、もう心配ないんだよね!!私は一人一人の顔を見て、再び涙を流す。

「うぇぇぇぇん!!」

私は思いっきり泣いた。みんなが心配して声をかけてくれたが、私はこういい返した。

「これは、うれし泣きですぅぅ・・・みなさん、ありがとうございました・・・ふぇぇぇ・・・うぅ・・」

アルとユーリはもうある程度、私の涙の訳を知っているのだろう。私が泣き止むのを待ってくれている。私は朝の光の中で、たくさんの大事な人達に囲まれて幸せをかみしめていた。もう少しで失われるところだった、この温かみを心に刻みつけた。

「ありがとう。みんな!!みんな大好きだよ!!!」

私は皆に向かってそういった。

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