《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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クラウス騎士団総長の愛の行方

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あの非公式会議では、かなり有意義な情報が手に入った。そうだ、ヘル騎士が・・・ヘルミーナが私を生き返らせるために、命を張ってサクラを助けたというのだ。

私の愛する彼女が、私の為に命を賭してくれた。こんな奇跡があっていいのだろうか!!

私はいま騎士団総本部の自分の机に座して、ある人の来訪を待っている最中だ。騎士団総隊長室は意外と狭い。王国の安全を護る機関なので、余計な装飾は必要ない。質素だが頑強な物質を用いて建物が造られている。そんな実用主義の殺風景な部屋に私と、ジャン・ルカ副総長がいる。

私の背後の壁には歴代の騎士団総長の肖像画がところ狭しと並んでいて、その殆どが年配の総長ばかりだった。そう、私は最年少、最短コースで騎士団総長にまで上り詰めた。そのために使えるこねはすべて使い、もてる自分の時間のほとんどをこの目的の為に費やした。

そう…私が騎士団総長になったのは、ひとえにヘルミーナの為だった。彼女はジリアーニ学園を卒業するとき私に言った。男装して兵士になって、ゆくゆくは騎士になりたいと。騎士になれないうちは、結婚する気もないと・・・。

私は彼女の希望を尊重し、彼女が騎士になるのを待った。その間に彼女をサポートできるように、将来宰相になる為に入った王国諜報情報室の仕事を辞し、騎士団の騎士試験を受けた。ダイクレール家の者は、ほとんどの者が生まれつき戦闘向きの魔力の才を持っている。なので騎士の称号を手に入れるのは簡単だった。

だがそれからが大変困難な道のりだった。頭の固いお偉い連中を、王国諜報情報室で培った知識と行動力で上層部から一掃した。騎士団本部を改革し、私はこの王国にこの騎士団ありと言わしめるほどに、騎士団構造改革に功績を残した。その結果、3年前に念願の騎士団総長の称号を得た。

だがそれも、目的の単なる布石にしか過ぎない。私の真の目的・・・それは・・・・・。

「騎士団8番隊、 ヘル騎士が参りました!!」

騎士団総本部の総長室に、待ちかねた声が響く。私は入室を許すとヘル騎士が私の机の前に立って敬礼をする。私はあらかじめ考えてあったポーズで、彼女を迎えた。隣に立つジャン・ルカ副総長が、私のその姿を見て何やら含み笑いを漏らす。うるさい、邪魔をするな。今は私が7年待ちに待った大事な瞬間なんだぞ。

「クラウス騎士団総長、ご機嫌いかがでしょうか。私ヘル騎士は騎士の矜持に従い王国に忠誠を誓います」

彼女が騎士流の挨拶をすると、私はジャン・ルカ副総長に目配せをした。彼が一枚の書類を彼女に手渡しする。その内容を見て、彼女の顔色が変わったのを見た。

「ヘル騎士。昨日、王国防衛庁会議である騎士法案が可決された。それは、女性騎士も認めるという法案だ。現在までウェースプ王国の騎士団では女性は騎士にはなれなかった。だが、ギルセア王国やブレダ王国は女性にも騎士の称号をあたえている。我が国が諸外国に後れを取るわけにはいかん」

「・・・・・これは・・・では」

ヘル騎士・・・いやヘルミーナの手にある書類が震えている。恐らく内心もの凄く喜んでいるに違いない。私はこの瞬間の為に、実に7年を費やした。彼女の喜ぶ顔を見る為に!!私と結婚すると言ってくれるその言葉を聞くために!!

「その書類は、ヘル騎士。君が我が王国で、最初に認められた女性騎士だという事を証明する書類だ。署名をして提出しておいてくれたまえ」

良し!決まった!あとはヘルミーナとの抱擁が待っている。7年ぶりにこの腕に抱く彼女は一体どんな感じなのだろうか。待ちきれない。

「ヘル騎士・・・いやヘルミーナ騎士。署名を・・・」

ジャン・ルカ副総長が、彼女に署名を促す。彼は私の右腕である人物で、以前からヘルミーナの正体を知っている。彼には私が影からさりげなくヘルミーナを観察するときには、いつも協力してもらっている。彼はとても有能で、ヘルミーナを一番いい角度で観察できる場所を教えてくれる。

しばらくしてヘルミーナの持つ書類のみならず、体全体まで震えてきた。それ程までに喜んでくれたのか・・。私は感動に浸った。すると突然思わぬ怒声が、地の底から響くように狭い部屋を震わせた。

「この・・・クラウスのドアホがぁぁぁぁぁ!!!!」

あれ・・・?!

突然ヘルミーナは声を上げて私の椅子の隣にまで回り込んできた。襟首をつかんで顔を寄せてきた。ああ、怒った顔も美しい・・・。

「お前はもしかして、この法案の為に吸えもしない煙草を吸って、飲めもしない酒を飲んで、ローズクラブに通っていたのか!!!」

そうだ、ローズクラブには防衛庁の上層部のものが良く通っている。そこに私は3年間欠かさず毎夜通いつめ、やっと防衛庁の連中と繋がりを持ったのだ。一緒に酒や煙草を飲みかわすのは、頭の固い連中の考えを改めさせるのには一番いい方法だ。

私が何も答えずに沈黙を保ったまま、7年ぶりに至近距離にいる彼女に見惚れていると、突然彼女が苦しそうに言葉を発した。

「お前はどうして・・・どうして、そんなっ・・・!!」

「ヘルミーナ・・・・・」

私は彼女の名前を呼ぶ事しかできなかった。どうして彼女が騎士を続けることができるというのにも関わらず、喜びもせずそんな悲しい顔をするのかが分からなかったからだ。

「・・・・結婚してほしい・・・ダメか・・・?」

小さい声で聞いてみた。さっきまであった自信が全て崩れた。私にはもう彼女に直接結婚をこう事しかできなかった。

「あははははははは・・・・!!」

彼女は、予想に反して大きな声で笑い始めた。それはイエスという事でいいのだろうか、それとも・・・・。

「はは・・・クラウス、私は7年前に結婚を既に受け入れているはずだぞ。ただまだ時期ではなかっただけで、私はいつだってお前と結婚するものだと思っていた。お前は違ったのか?」

どういう意味なのか?ヘルミーナ!という事は、もしかして・・・・・。

「結婚しよう、クラウス!!盛大な式を挙げよう!ヘルミーナ・マリア・ルボタージュ伯爵令嬢はお前と結婚する!どうだ、満足か!」

ヘルミーナは未だに私の襟首をつかんだまま離さずに、大輪のような微笑みを浮かべると突然私の体を襟ごと引き上げて、キスをした。

すぐに唇は引き離され、私はまた体重を椅子に戻した。彼女は放心したままの私に構わずに、ジャン・ルカ副総長に渡された書類に署名し、机に大きな音を立てて押し付けた。

「クラウス騎士団総長、我が栄光の騎士団にかけて、我は仲間と永遠に共にある。私はここに誓う!私はクラウス、お前と永遠に共にあると・・・!!!」

そういうと、ヘルミーナは騎士団長室を颯爽とした足取りで出て行った。ジェン・ルカ騎士団副総長は気を利かせて、いつのまにか退室していたようで、私は部屋に一人残された。

どのくらい放心していたのだろうか…やっと気を取り戻したときに、机の上の書類が目に入った。その書類にはヘルミーナの字で自分の名が署名されていた。

そう・・・ヘルミーナ・マリア・ダイクレールと・・・。

私は永遠にヘルミーナには勝てないようだ。

我がミューズ。愛しの人よ・・・。


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