《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

文字の大きさ
51 / 53

セイアレス大神官の想い

しおりを挟む
私は生まれた時から天賦の才を持っていた。特に神力が膨大にあり、学者や教授らを驚かせた。生家は伯爵家で血筋も財もうなるほどあったが、愛情だけは与えられなかった。愛人に興じる父に、お茶会と夜会にしか興味のない母。

初めて読んだ本の中の聖女に、憧れを抱いたことも自然な流れであったと思う。聖女は私が初めて見る理想の女性だったからだ。私は聖女に理想の母を見、理想の姉を見た。

15になった頃、私は既に大神官の職を得ていた。私の神力を考えれば当然の処遇だろう。私よりも年上の神官が私の足元にひれ伏す。

女性と縁がなかったわけではなかった。私は父と母の遺伝子のお陰か、美醜に関してはとても優れていた。皆が私を一番に美しいと形容する。馬鹿な、私よりも美しいものがいるではないか。それは聖女だ・・・。聖女こそが世界で一番美しく、穢れのない唯一のものなのだ。

私は何年も聖女を召喚することを望んで研究をつづけた。私の生涯を終えない内に成功するのだろうか心配したが、とうとう私は聖女召喚に成功した。

しかし、正確に計算し周到な準備をしたのにも関わらず、聖女は二人召喚された。おかしい。そんなことがあるはずがない。私は失敗したのだろうか?

片方の聖女が魔力ゼロだという決断が下された。私は失敗したのだ。けれども、私にはもう一人の聖女が残っている。理想に近い清楚な聖女が・・・。

私は私の失態を隠すために、偽の聖女を放逐した。恐らくあの少女は長くは生きられないだろう。ウェースプ王国は豊かな国だが、何の後ろ盾もない口のきけない少女の行きつく先は想像がつく。

エルドレッド第二王子を王に据え、聖女ユイカを王女にする企みは、最近うまくいっていない。アルフリード第一王子が最近エルドレッド王子と接触をはかっているようで、そのせいでエルドレッド王子の鬱屈した劣等感を刺激することが難しくなってきた。

それに、最近聖女ユイカの修行もうまくいっていない。彼女は享楽的で、私の母を思い起こさせる。そんな筈ではない。聖女はもっと清らかで無垢で清楚な女性なのだ。どこかで間違ったのだろうか?

聖女ユイカが襲撃者に襲撃された。おかしなことに聖女の命を狙っていたはずの賊は、彼女の命を取る寸前で中断したようだ。この時点で私の疑惑は確信に変わった。

聖女ユイカは偽物だ。私は聖女召喚に失敗したのだ。

その真実は私を苦しめた。もう私が生きている間に聖女召喚は叶わないだろう。そんな時に、私はアルフリード王子の執務室で、信じられないことを耳にした。

男爵令嬢のセシリアが自分が本物の聖女だといい始めた。そういえば彼女の姿には覚えがあった。そう、最初の聖女召喚の時に私が偽物だと判断して放逐した少女だ。

彼女が目の前で凛とした姿で立つ彼女は、美しい長く黒い髪をなびかせて黒曜石のように輝く瞳で言った。彼女には時を止める能力があると・・・。

そう、これは誰にも知られていないが、前聖女ハナ様には時を止める力があったと、代々、大神官の間で秘かに伝えられている秘密中の秘密だ。

私は確信した、彼女こそが聖女であると。私の聖女召喚の儀式は成功していたのだと・・・・。

聖女サクラ様・・。私の理想の女性。願わくばアルフリード王子と結婚していただいて、ウェースプ王国を繫栄に導いてほしい。それが私の願いだ。

私は今日も神に祈る。私に聖女を授けていただいた感謝を・・・。

ああ・・・私の聖女様・・・。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

私は、聖女っていう柄じゃない

蝋梅
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。 いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。 20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。 読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)

処理中です...