勘違い聖女とドS鬼畜王の攻防 

南 玲子

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ドM嬢 ドS王に惨敗する

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そのデューク王の言葉で戦闘が開始した・・・らしい。らしいと言うのは私は未だにデューク王の左腕に抱かれ何も見えない状態のままだからだ。

そこかしこで剣と剣がぶつかる音がする。誰かの悲鳴や怒声があちこちであがっている。なのにデューク王ときたら、私をその左上腕で逃がさないように抱きながら、器用に右腕で戦っているようだ。私といえばあちこち振り回されて、まるで先の見えないジェットコースターに乗っている感じで気分が悪くなってくる。おえっ・・。

「デュ・・・デューク・・・殺しちゃだめだよ・・・。シューリ、敵の剣を・・ぐふっ・・全部燃や・・して・・・」

「心配するなユリカ。お前の願いならこいつら殺さずに生かしておいてやるから、大丈夫だ」

おお、デューク王ごめんよぅ。私、誤解してたかも。対外的には賢王で、その裏は実は腹黒ドS鬼畜王、・・・なのは演技で実際は優しい人だったんだね。

暫くして辺りが静かになり、デューク王も足を止めてくれたお陰でなんとかデューク王のシャツに吐かずに済んだ。よかったこのシャツ高そうだからね。

戦いが終わったのかな?デューク王の腕の力が弱まったので恐る恐る振り向いてみる・・・とそこには両脚の腱を切られて地面に伏しているブレダ王国の王女付き騎士達と、その傍らでデューク王に剣を喉元に突きつけられ、震えながらたたずんでいるエリョリーナ王女が見えた。

「さあ。どうしようかなこれ・・・。ミンチがいい?それとも細切れ?」

そういいながら剣先を左右に動かして楽しんでいる。やっぱ鬼畜だ!!!!その容姿端麗の顔に張り付く冷笑に、私は悪魔を見たと思って背中に電流が走る。

エリョリーナ王女は恐怖のあまり、微動だにしない。

このままだと私の精神上良くないことが起こるに違いない。どうにかして回避しなければ!!!このままでは私のトラウマになる程の、挽肉ばらばらミンチ死体になることは間違いない。私は未だにデューク王の胸の中で肩を抱かれながら、日本黒鱗鷲に向かって言う。

「ドイール!!あなたこの人たち全員を乗せてブレダ王国に届けてきてあげることできる?」

ドイールが私の質問にあわせて、本来の巨大な黒い鱗を持つ竜に変化する。

「造作も無い。ユイカの為ならなんでもするぞ、俺が役に立つって所をみせてやらないとな」

「お願い!!あとで肩揉んであげるからよろしく」

デューク王とその近衛兵達は、巨大な竜がぽいっぽいっと動けないでいる騎士達を背中に乗せて、最後にエリョリーナ王女の首の後ろを、まるで猫が子猫を運ぶような要領で咥えたかと思ったら一瞬で飛び去っていく様を呆然と見ていた。

「よかった。なんとか命は助けられた」

私は安心して大きな溜息をついた。するとデューク王がいたずらっ子のような顔で言った。

「よかったのかな? あの騎士達は両脚の腱が完璧にきれてるから、もう二度と歩けないだろう。一度最上級階級の騎士だったものが、そんな状態になるっていうのは死ぬより辛いことだと思うよ。殺して上げるのも優しさだからね。まあ、だからこそ私は殺さなかったんだけど・・・・」

・・・そうか・・・そうなのかもしれない・・・。この世界は私のいた世界とは違う。二度と歩けないことがどんなに辛いことか分からない。車椅子や義足なんかも無いのかもしれない。歩けなければ明日食べるご飯も買えなくなるのかもしれない。

私はただの偽善者だというのか?いや違う。これは悪魔の囁きだ・・・鬼畜悪魔の声に惑わされてはいけない。私は自信を持ってこう答えた。

「バカですか!?死なないのが一番にきまっているじゃないですか!二度と歩けなかろうが、もう一度家族に会えて家族と一緒に暮らしていけるのが一番の幸せなんです。死んだら何も感じられなくなりますからね」

デューク王がまたいつもの驚愕して、信じられないものを見るような目で私を見る。

「辛さや悲しさを感じるのも生きているからですけど、楽しみや喜びを感じるのもまた生きているからなんですよ!!だから死ぬほうがいいなんてことは絶対にありません!!」
私はドヤ顔で目前にある麗しいお顔を見ながら言い切った。

危なかった。この鬼畜悪魔にもう少しで殺人が善のように思わされるところだった。ひゅー。そういえば最近イケメンには対性ができてきたのかも・・・こんな近距離でも、吐き気をもよおさなくなったわ。

「ところでどうして私は未だに、デューク王に抱かれたままなんですか?いい加減離してください。どうせ私を盾に使ったのでしょう?」

私はものすごく嫌そうな目で訴えた。いつもは私がこんな顔で言うとすぐ腕を離すのだが今回は違ったようだ。なんだか思考が遠くに行っているみたいで、微動だにしない。

顔の前で手を振ってみるが、反応が無い。こりゃどうしたことだ???

私はその端正な顔の両頬に手を当て目を覗き込むようにして瞳の中を見る。
いかん。瞳孔ってどこにあるものだっけ・・・?これ開いてるの閉じてるの?

あまりに良く分からないので、顔を両手でホールドしたまま揺すってみた・・・するとデューク王の視線がばっちり私の視線と絡まって、その頬に一気に赤みがさした。

なんだ!これ恋愛フラグってやつか!?私は驚きのあまり両手で思いきりその顔を前方に放り投げた。

やばいやばい。こんな鬼畜ドSデューク王に惚れられては、私がユリカ・スミスになる野望はどうなるというのだ。

普通が一番好きな私にとって鬼畜ドSデューク王は鬼門でしかない。

私はそのまま未だに呆然としているデューク王と、それを不思議そうに見つめる近衛兵達を尻目に早々に退散した。

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