星のない夜を共に唄おう

エビフライ

文字の大きさ
2 / 4
第一章

夜の者

しおりを挟む
辺りは闇に染まっていた。明かりがあるとすれば空に散らばる複数の星々と、薄い雲にかかる月くらいだ。風が吹き、砂那の真っ黒な長い髪の毛を宙に漂わす。ぶるりと身体を震わせ、空を見上げる。最近肌寒くなってきた。息を吐いてみる。さすがにまだ白い息はでなかった。砂那は闇が好きだ。安心する。よく女の子と間違われるが自分の黒く長い髪の毛も、黒い瞳も、好きだった。よく人に、ここにピッタリだと、褒められる。夜に生きる者として、ピッタリだと。
あと少しで夜が終わり、朝が始まる。東の方角が少し薄いオレンジ色に染まっている。急いで戻らなければならない。だけど砂那は身につけていた黒い布を頭から被り、東の方角へ足を向ける。空に散らばっていた星々が薄く、見えなくなる。砂那は丘の上に登り辺りを見渡す。東はすでに薄いピンクがかった空をしていた。砂那は目だけをだし他はキッチリと布を巻き付ける。そして遠くのほうに目を向ける。かすかだが、遠くの方に大きな街が見える。朝に住まうもの達が暮らす街だ。砂那は目を細め、その光景を見詰めた。
夜が好きだ。夜でしか生きられないとゆう理由もあるが、闇に浸っていると安心する。自分を、闇が守ってくれている感覚になる。だけど、朝も好きだった。憧れた。ギリギリ太陽に焼かれないこの時間帯が、他の生き物達が起き出す時間帯が、澄んだこの空気が。空はだんだんと明るみ始める。戻らなければならない。急いで戻って、眠りに着く。砂那が抜け出していることを知っている人はまだいないが、いつバレるかは分からない。砂那は来た道を走りながら戻る。他の夜の者達と、自分達が生きることができない朝を、寝て過ごす。朝の者達が生きている時、夜の者達は静かに光が届かないところに身を潜める。そして、また夜が来るのを待つのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...