星のない夜を共に唄おう

エビフライ

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第三章

出会い

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「炉凜空、大丈夫?」煠癒が炉凜空の顔を覗き込みながら聞く。
「え、あ、うん、」炉凜空はボーとしたまま言う。煠癒は溜息をつくと、首を傾げる。
「さっきからずっと、間抜けな顔をしているよ。私が言ったことの半分も聞いていないでしょ?」
「……ごめん」炉凜空が正直に謝ると、心配そうに煠癒は炉凜空の顔を見つめる。
「君が闇に強いのは知っているけど、そんなにボーっとしていると、心配するだろう。………でも、そっか。本当に朝の始まりを見てきたんだな」
煠癒はパンを口に運びながら言う。
炉凜空は、朝になると共に急いでドームに戻ると、自分の家ではなく従姉妹の煠癒の家に入り、こっそり煠癒の部屋に入った。部屋では煠癒が、炉凜空の帰りを待っていた。そして今さっき一部始終を煠癒に語り終えたのだ。それでも興奮は冷めきれない。
「にしても、よく見張りに見つからなかったな。君が夜ドームを抜け出すって言った時、すごい心配だったけど、本当に運がいいな」
煠癒は白い長い髪の毛を櫛でとかしながら言う。そんな些細な動きでも、とても絵になる。
「それはね、うん。私もすごい心配だった」炉凜空はそう言いながら煠癒のベッドの上にバフん、と倒れ込む。
眠い。ものすごく、眠い。
「眠るなよ?君は今、自分の家で朝ご飯を食べていなきゃならないんだからな。君が私の部屋に居ることは、私達2人しか知らないんだから」
「……大丈夫だよ。おばさんも、今パン屋さんに働いている時間だし」
「それでも、もう少し警戒しなよ」煠癒は薄い黄緑色の目を、細める。
煠癒は皆と違い、炉凜空を普通に接してくれる。煠癒のお母さんもだ。両親のいない炉凜空を娘同然におもってくれている。他の人は炉凜空の髪の毛や瞳、体質を気味悪がり距離を置こうとする。それでも、煠癒は平等に接してくれる。そんな、優しくて親切なところも、中性的で整った顔も、サッパリしていて、女の子なのにサバサバした物言いも、炉凜空は好きだった。
「そろそろ学校に行く時間が近づいてるけど、その格好で行くのか?」煠癒が聞く。炉凜空は自分の姿を見る。袖のないフワッとしたサーモン色のワンピースに、白い毛布を被っただけの格好だ。
「まずいか?」「まずいな。白い毛布を羽織っていくのが流行りならまだいいけど」
そう言いながら、煠癒は自分の服を閉まっている棚から薄いクリーム色をした、羽織りを出すと炉凜空に差し出す。ありがとう、とそれを素直に受け取る。
「じゃ、行くか」そう煠癒は言うと、玄関へと向かい家の外にでる。ドームは石造りで、あちこちに蝋燭がおかれている。なので、いつも蝋の臭いが漂っていた。ドームの出口に行くために長い階段を下っていく。あちこちにドアがあり、様々な生活の音が聞こえてくる。下の方に近づくにつれて、人が増えていく。そのぶん、炉凜空の姿はたくさんの人の視線を浴びる。どれも、好意が感じられる視線ではなかった。周りの皆が、真っ白な髪の毛をしているのに、一人だけ灰色の髪色は嫌でも目立ってしまう。だが、生まれてき12年も経ち、そんな事にはもう慣れていた。やっと1番下まで着く。出口から、太陽の光が漏れていて上にいたよりも周りが明るかった。出口付近にいたぽっちゃりした少年がこちらに向かって手を振った。
「おーい、炉凜空!煠癒!」「あ、睹允」煠癒がそう言いう。睹允は2人の幼なじみで、白い髪色に薄い茶色の瞳をしていた。睹允が2人に駆け寄る。
「おはよう、2人とも!炉凜空、それで、君は、夜に…」そう、言いかけた睹允の口元をる凜空が手で塞ぐ。
「ちょいちょいちょい」炉凜空は焦って辺りを見渡す。睹允はもごもごと口を動かす。「ごえん」
「見られてる」煠癒が静かに囁く。ちらりと煠癒の目線の先を見ると数人の大人がこちらを見ていた。3人はさりげない様子で外にでる。ふう、と炉凜空は息を吐き出した。
「勘弁してよ、もー」「ごめん、つい…」睹允は申し訳なさそうに謝る。
「その、それで、あの…」もじもじと睹允が聞く。昨日からずっと気になっていたのだろう。
「行ってきたよ、もちろん。当たり前じゃん」炉凜空は得意気に答えた。
「うっわあ。すごい、本当に行ったんだ!それじゃあ、アレも見た?星とか」睹允は慌てて声を潜める。それを見て煠癒が苦笑しながら言う。
「気持ちは分かるけど、とりあえず学校に行ってからにしないか?」
煠癒の言う通りだろう。街ではどうしても炉凜空は目立ってしまうのだ。
「あ、うん!そうだね!ごめん…」睹允がすぐに謝る。
「ついでに、その謝り癖もどうにかしろ」煠癒がふざけて言うと、睹允がまた慌ててごめんと言う。
それが可笑しくて煠癒と炉凜空は笑ってしまう。つられて睹允も恥ずかしそうに笑う。
街には人がたくさんいて、様々な音が聞こえてくる。
朝が始まる前の街とは全然違う。花屋もパン屋も、活気で溢れている。まだ炉凜空の中で、先ほどの光景が頭に染み付いて、離れない。
そういえば、ランプを下水道に忘れてきてしまった。チラッと不安がよこぎったが、また後で考える事にした。

3人は喋り合いながら学校へと向かった。



~~~~『出会い』続く~~~~~~~~

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