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塔の中の王妃様 後編
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王妃様が泣き続けて一週間程経った頃、お城の中がとても騒がしくなりました。
どうやら月食が近づいているようです。
この国では月食はとても不吉とされていた為、神官達が必死に祈祷を行っている声が、塔の中にまで聞こえてきました。
それに‥‥王妃様を生贄として月の神に捧げよう、という声がたくさん聞こえてきました。それに応えるかのように、こちらに向かってくる沢山の騎士達の足音も聞こえてきました。
「‥ああ、ついに私も死ねるのね。」
王妃様はここ最近になって、やっと自分がこの塔に閉じ込められている理由について、納得できる答えを導き出せたのです。
近いうちに起こる「月食」の際の生贄として、自身が月の神に捧げられるのだ、という答えを‥‥。
生贄は処女でないといけないので、王様はその為に王妃様と初夜を迎えなかったのだ、という事も察する事ができました。
でも、次にある疑問が生まれました。
「何故私が月の神への生贄にならないといけないの?私はわざわざ生贄になる為にこの国へ嫁がされたの?」
‥王妃様は母国では五人目の王女でしたし、両親である王様夫妻ともそんなに交流がなかったので、そうであってもおかしくはないのでした。
「‥もうどうでも良いわ。」
王妃様は、覚悟を決めて騎士達が部屋の扉を打ち破って入ってくるのを待ちました。
‥ですが、扉を開けて部屋に入ってきたのは‥騎士達ではなくて、なんと王様でした。
「王妃‥いや、モモ!待たせてごめん。やっと迎えに来れた。」
王様は王妃様の手をとると、お城の王様の部屋まで連れていきました。
「‥王様、どうして私をここへ?‥それに「モモ」って‥どうしてその名で私を呼ぶのですか?」
王妃様が混乱した様子で尋ねると、王様はにっこり笑って全てを教えてくれました。
「モモ、僕は「ダン」なんだよ。そして、本物の王なんだよ。」
「では、私を塔へ閉じ込めた王様は‥。」
「ウシガエルの魔物だよ。側近達や側妃もそうだ。奴らは私達に化けて、この国を乗っ取ろうとしていたんだ。この月食の最中に繁殖して、沢山の卵を産んで育てようとしてたんだ。」
「‥知らないだろうけど、君は聖なる力を秘めた聖女として、この国に嫁いで来てくれたんだよ。この国には聖女がいないからね。‥それを嫌がったウシガエルの魔物‥この国の魔物達の長は、君を殺そうとしてたんだ。」
「‥‥。」
「だから僕が奴らに見つからないように君を塔へ避難させた。だが、その事がバレると、今度は君の食べ物に毒を入れるようになった。」
「‥もしかして、毒の入った食べ物を時々捨ててくれていたの?」
「ああ。」
「‥だが、君の泣き声が‥君の涙が僕にかけられた呪いを解いたんだ。」
「‥ダン!あなたが私の夫なのね!この国の本当の王様なのね!」
「そうだよ。モモ、これからは僕の王妃としてずっと側にいてくれ。」
「勿論です。」
こうして王様と王妃様は、今度こそ無事に初夜を迎えることができたのでした。
それから二人は、お城で末長く幸せに暮らしたそうです。
一方ウシガエルの魔物達は、モモの聖なる嘆きによる浄化魔法で魔力を失い、もとの醜いウシガエルの姿に戻ってしまいました。そして、ウシガエルの姿で無力になって狼狽ているところを、お城の騎士達によって一匹残らず退治されてしまったのでした。
end.
どうやら月食が近づいているようです。
この国では月食はとても不吉とされていた為、神官達が必死に祈祷を行っている声が、塔の中にまで聞こえてきました。
それに‥‥王妃様を生贄として月の神に捧げよう、という声がたくさん聞こえてきました。それに応えるかのように、こちらに向かってくる沢山の騎士達の足音も聞こえてきました。
「‥ああ、ついに私も死ねるのね。」
王妃様はここ最近になって、やっと自分がこの塔に閉じ込められている理由について、納得できる答えを導き出せたのです。
近いうちに起こる「月食」の際の生贄として、自身が月の神に捧げられるのだ、という答えを‥‥。
生贄は処女でないといけないので、王様はその為に王妃様と初夜を迎えなかったのだ、という事も察する事ができました。
でも、次にある疑問が生まれました。
「何故私が月の神への生贄にならないといけないの?私はわざわざ生贄になる為にこの国へ嫁がされたの?」
‥王妃様は母国では五人目の王女でしたし、両親である王様夫妻ともそんなに交流がなかったので、そうであってもおかしくはないのでした。
「‥もうどうでも良いわ。」
王妃様は、覚悟を決めて騎士達が部屋の扉を打ち破って入ってくるのを待ちました。
‥ですが、扉を開けて部屋に入ってきたのは‥騎士達ではなくて、なんと王様でした。
「王妃‥いや、モモ!待たせてごめん。やっと迎えに来れた。」
王様は王妃様の手をとると、お城の王様の部屋まで連れていきました。
「‥王様、どうして私をここへ?‥それに「モモ」って‥どうしてその名で私を呼ぶのですか?」
王妃様が混乱した様子で尋ねると、王様はにっこり笑って全てを教えてくれました。
「モモ、僕は「ダン」なんだよ。そして、本物の王なんだよ。」
「では、私を塔へ閉じ込めた王様は‥。」
「ウシガエルの魔物だよ。側近達や側妃もそうだ。奴らは私達に化けて、この国を乗っ取ろうとしていたんだ。この月食の最中に繁殖して、沢山の卵を産んで育てようとしてたんだ。」
「‥知らないだろうけど、君は聖なる力を秘めた聖女として、この国に嫁いで来てくれたんだよ。この国には聖女がいないからね。‥それを嫌がったウシガエルの魔物‥この国の魔物達の長は、君を殺そうとしてたんだ。」
「‥‥。」
「だから僕が奴らに見つからないように君を塔へ避難させた。だが、その事がバレると、今度は君の食べ物に毒を入れるようになった。」
「‥もしかして、毒の入った食べ物を時々捨ててくれていたの?」
「ああ。」
「‥だが、君の泣き声が‥君の涙が僕にかけられた呪いを解いたんだ。」
「‥ダン!あなたが私の夫なのね!この国の本当の王様なのね!」
「そうだよ。モモ、これからは僕の王妃としてずっと側にいてくれ。」
「勿論です。」
こうして王様と王妃様は、今度こそ無事に初夜を迎えることができたのでした。
それから二人は、お城で末長く幸せに暮らしたそうです。
一方ウシガエルの魔物達は、モモの聖なる嘆きによる浄化魔法で魔力を失い、もとの醜いウシガエルの姿に戻ってしまいました。そして、ウシガエルの姿で無力になって狼狽ているところを、お城の騎士達によって一匹残らず退治されてしまったのでした。
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