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猫公爵との結婚 1
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ドッグマン王国のラブラドール侯爵家の長女サアラのもとに、ある日突然結婚の話が舞い込みました。
「‥お父様、今なんとおっしゃいました?」
「サアラ、喜ぶがいい。猫好きのお前にぴったりの縁談だ!あの難攻不落の猫公爵が、お前に結婚を申し込んできた。」
「‥いえいえ、喜びませんよ。‥猫公爵って、あの猫狂いで有名な公爵様でしょ。猫好きが過ぎてなかなか結婚できないと評判の‥。それに、そもそも私は猫好きではありませんし。」
「‥えっ?」
「‥えっ?って。‥まさかあちら側は私が猫好きだと勘違いしての結婚の申し出だったとか?」
「‥‥でも、お前が道で泥だらけの猫を見つけて、馬車から降りてドレスが汚れるのもきにしないで拾い上げて車の通りの少ないところへ移動させて助けてやった話を猫公爵が聞いたらしいんだ。」
「‥いえいえ、猫だから助けた訳ではありませんし。それに善意で助けた訳ではないんです。‥馬車の通り道をその泥だらけの猫が塞いでいたんです。服を汚すのを気にして誰もどかさないから、私が猫を退かしたんです。‥どうしても見たい歌劇が始まる時間だったので‥。」
「‥‥。」
「‥お父様?」
「‥まあ、あれだ。お前は猫が嫌いな訳ではないし、動物好きに悪い人はいないし、きっと公爵様は優しい方だろう。お互いにこれほど良い縁談はないだろう。それにお前こそ劇団の若い演者に惚れて、この歳になるまでいい縁談に恵まれずに嫁ぎ遅れてて困ってたところじゃないか。」
「‥そうね。この家は弟のジュエルが継ぐし、私も結婚して安泰な老後を迎えたいし、このお話をお受けします。」
「サアラ、よく言った!いいか、お前は猫が好き!分かったか?」
「はい。私は猫が好きです。‥本当は犬の方が好きだけど‥じゃなくて、猫が好きです!」
‥こうして、サアラは猫公爵の元へ嫁ぐことを決めました。
サアラが結婚の申し出を承諾したと聞いてすぐに、サアラは猫公爵家から公爵家に住み込みで花嫁修行をするように申し付けられました。
「‥何故かこれまでたくさんの令嬢がこの段階で、猫公爵家との縁談を断ってるのよね‥。何があったのかしら?私も気を引き締めなきゃ!」
猫公爵の言いつけ通りに公爵家でしばらく暮らす為にやってきたサアラは、猫公爵家で何が起こるのかを心配しながらも、どこかワクワクした気持ちで公爵家の門をくぐりました。
何故なら、公爵家のお屋敷の外観は真っ白でゴージャスでとても素敵でしたし、外壁からのぞく赤い薔薇の花々がとてもロマンチックだったのです。
(こんな素敵なお屋敷に住めるなんて、まるで劇の中のヒロインになったみたい。となると、差し詰め猫公爵様がヒーローね。フフフ。)
サアラが猫公爵家の豪華さに見惚れていると、執事がやってきました。シルバーヘアーの色っぽい中年の長身の執事でした。彼はサアラを公爵様の部屋に案内すると、ぼーっとしているサアラを部屋に一人残してさっさと去ってしまいました。
「‥えっと、ここで公爵様を待てと言うことかしら?勝手にソファーに座ることも出来ないし‥誰もいないし。‥はっ!?まさか、私がこれまでの令嬢のように逃げないように閉じ込めたのかしら!?」
サアラは警戒心いっぱいのまま、部屋の中をウロウロとせわしなく歩き回りました。
「ああ、落ち着かないわ。‥‥あっ。」
サアラは歩き回っている自分の足元を、何かがさっと横切るのを見ました。その何かは、黒い大きな猫でした。猫は公爵様の机に飛びのると、赤インクの瓶に肉球をちょんちょんと突っ込み、勝手に書類に肉球印を押し始めました。
「キャーッ!大変!誰か来て下さい!」
サアラは重要書類らしきものが、自分の目の前で猫に悪戯されているのに驚き、思わず大声で人を呼んでしまいました。
するとすぐに扉が開けられて、部屋に剣を携えた護衛が1人入ってきました。
「どうしました?」
「‥猫が、猫が大切な書類で遊んでいたので、心配で‥。」
「あっ、そうでしたか。安心しました。てっきりもっと大変な事が起きて、サアラ様が危ない目にあっているのかと思ってしまいました。」
護衛は構えていた剣をおさめると、そう言って優しい笑顔でサアラに微笑みかけました。彼は笑うと目が細くなり、口元に窪みができました。
(この人も素敵な方ね。薔薇騎士伝の劇に出ていた騎士様にそっくり。)
サアラは護衛の男に思わず見惚れてしまいました。
サアラには変な癖がありました。見るもの全てが歌劇の役者やその世界に見えてしまい、すぐに自分の世界に浸ってしまうという致命的に痛い癖でした。
サアラは、この時自分に向けられた強い視線を感じてハッと我に帰りました。
「はっ、私ってば。またぼーっとしちゃった。」
そう言って、自分に向けられた強い視線の先をたどってみると、そこには先程の猫がいました。相変わらず肉球でスタンプを押して遊びながら。サアラは、ハラハラしながら護衛に尋ねました。
「‥あの猫、大事な書類に肉球で赤インクを押しつけていますよ。止めなくていいんですか?」
「‥いいんです。あれも我々の大切なご主人様のお仕事ですから。」
「えっ!?ご主人様?」
「‥そうです。ですので、何も心配はいりません。‥では、私はまた扉の外に控えておりますので‥。」
護衛はそう言ってさっさと部屋から出て行こうとしました。
「あっ、待って。部屋の鍵は開けておいて下さいね。」
「‥鍵ですか?この屋敷の部屋にはどの部屋にも鍵はついていませんよ。しかも猫の姿のご主人の力でも開けられるように軽い扉にしてありますから。」
「そうですか。」
護衛はサアラの言葉に少し怪訝そうな表情を浮かべたものの、すぐに営業用の笑顔をサアラに見せました。そしてサアラに一礼してから退室してしまいました。
サアラは護衛が退室した後しばらく扉をぼーっと眺めていましたが、相変わらず自分を凝視し続けている猫の方を振り向き、恐る恐る近づいて話しかけました。
「‥この部屋には誰もいないと思っていたけど、そうじゃなかったんですね。あなたが私の旦那様になる猫公爵様なのですね。‥猫公爵って猫好きの公爵って事じゃなくて、猫の公爵様って事だったのですね。ただの猫扱いをして失礼な態度をとってしまい、申し訳ありません。‥本当に反省しています。‥ですから、そんなに怖いお顔で私を睨まないで下さい。」
サアラが旦那様に謝罪すると、それに対して猫公爵は‥
「ニャー。」
と鳴いて答えてくれました。そして、机から降りるとサアラの足元に駆け寄り、抱っこをせがむように上目遣いでサアラを見ながら、爪を立ててサアラの足をかるく引っ掻いてきました。
「だっ旦那様、まさか私に抱っこをせがまれているのですか?」
サアラは顔を赤らめながらも、辿々しく猫を抱き上げ、自身の胸元へと抱き寄せました。
すると、猫はサアラの鼻の頭をペロリと舐めてきました。
「旦那様!なんて事を!まだお会いしたばかりだというのに、そんな破廉恥な事をされるのならば、もう抱っこをやめて床に下ろしてしまいますからね!」
サアラはびっくりして、思わず少し強めの口調で旦那様を叱ってしまいました。
「ニャー‥。」
それに対して旦那様は、床に下さないでと言うように、甘えるような声で泣き返してきました。
「可愛い‥。私の旦那様があざと可愛いわ。しかも、人間じゃなくて猫だなんて‥‥私は特別猫好きというわけではないけど、猫の姿の旦那様と暮らすのも悪くないわ。」
サアラは猫の旦那様を抱きながら、再び妄想の世界へ入ってしまいました。
(ああ、きっと旦那様は悪い魔女の呪いで猫に変身させられたのだわ。それで、真実の愛を見つけて熱いキスを交わすと人間の姿に戻るのよね。‥でも、物凄い不細工なお顔だったらどうしよう。‥それならもういっそ、このまま猫の姿のままの旦那様のがいいわ。‥子供を作ることは出来ないけど、それも養子を迎え入れれば問題ないわね。)
サアラは心の中での妄想が一段落すると、猫の旦那様と共にソファーに腰かけて、旦那様のもふもふの背中を撫でてやりました。
「ああ、やっとソファーに座れたわ。疲れた‥。でも旦那様を撫でていると癒されるわ、それになんだか眠たい‥‥。」
サアラは猫の旦那様の背中を撫でながら、うとうとと眠ってしまいました。
「‥お嬢さん、寝たのかい?俺の背中のもふもふの撫で心地にやられたのかい?ハハハ、俺の背中のもふもふにはどんな令嬢もイチコロだからな。仕方ないな。」
猫の旦那様はそういうと、扉を開けてメイドと護衛を呼び出してサアラを部屋まで運ばせるように言いました。
「‥ご主人様、サアラ様に全て打ち明けましたか?」
そう尋ねる護衛に、猫公爵はそっない返事を返しました。
「‥まだ彼女を信用した訳じゃないからな。何も話していない。それにしばらくはまだ猫のフリをしておくよ。」
「‥分かりました。」
護衛はサアラを横抱きに抱えると、メイドを引き連れてサアラの部屋に向かいました。
サアラがいなくなり部屋に一人きりになった猫公爵は、悪そうな笑顔で独りごちていました。
「サアラ嬢、君がこの屋敷の女主に相応しいか、この猫の姿で俺が直々に見定めてやろうじゃないか。」
猫公爵はそう言うと机に飛び乗り、再び書類に肉球のスタンプを押し始めました。
「‥お父様、今なんとおっしゃいました?」
「サアラ、喜ぶがいい。猫好きのお前にぴったりの縁談だ!あの難攻不落の猫公爵が、お前に結婚を申し込んできた。」
「‥いえいえ、喜びませんよ。‥猫公爵って、あの猫狂いで有名な公爵様でしょ。猫好きが過ぎてなかなか結婚できないと評判の‥。それに、そもそも私は猫好きではありませんし。」
「‥えっ?」
「‥えっ?って。‥まさかあちら側は私が猫好きだと勘違いしての結婚の申し出だったとか?」
「‥‥でも、お前が道で泥だらけの猫を見つけて、馬車から降りてドレスが汚れるのもきにしないで拾い上げて車の通りの少ないところへ移動させて助けてやった話を猫公爵が聞いたらしいんだ。」
「‥いえいえ、猫だから助けた訳ではありませんし。それに善意で助けた訳ではないんです。‥馬車の通り道をその泥だらけの猫が塞いでいたんです。服を汚すのを気にして誰もどかさないから、私が猫を退かしたんです。‥どうしても見たい歌劇が始まる時間だったので‥。」
「‥‥。」
「‥お父様?」
「‥まあ、あれだ。お前は猫が嫌いな訳ではないし、動物好きに悪い人はいないし、きっと公爵様は優しい方だろう。お互いにこれほど良い縁談はないだろう。それにお前こそ劇団の若い演者に惚れて、この歳になるまでいい縁談に恵まれずに嫁ぎ遅れてて困ってたところじゃないか。」
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「サアラ、よく言った!いいか、お前は猫が好き!分かったか?」
「はい。私は猫が好きです。‥本当は犬の方が好きだけど‥じゃなくて、猫が好きです!」
‥こうして、サアラは猫公爵の元へ嫁ぐことを決めました。
サアラが結婚の申し出を承諾したと聞いてすぐに、サアラは猫公爵家から公爵家に住み込みで花嫁修行をするように申し付けられました。
「‥何故かこれまでたくさんの令嬢がこの段階で、猫公爵家との縁談を断ってるのよね‥。何があったのかしら?私も気を引き締めなきゃ!」
猫公爵の言いつけ通りに公爵家でしばらく暮らす為にやってきたサアラは、猫公爵家で何が起こるのかを心配しながらも、どこかワクワクした気持ちで公爵家の門をくぐりました。
何故なら、公爵家のお屋敷の外観は真っ白でゴージャスでとても素敵でしたし、外壁からのぞく赤い薔薇の花々がとてもロマンチックだったのです。
(こんな素敵なお屋敷に住めるなんて、まるで劇の中のヒロインになったみたい。となると、差し詰め猫公爵様がヒーローね。フフフ。)
サアラが猫公爵家の豪華さに見惚れていると、執事がやってきました。シルバーヘアーの色っぽい中年の長身の執事でした。彼はサアラを公爵様の部屋に案内すると、ぼーっとしているサアラを部屋に一人残してさっさと去ってしまいました。
「‥えっと、ここで公爵様を待てと言うことかしら?勝手にソファーに座ることも出来ないし‥誰もいないし。‥はっ!?まさか、私がこれまでの令嬢のように逃げないように閉じ込めたのかしら!?」
サアラは警戒心いっぱいのまま、部屋の中をウロウロとせわしなく歩き回りました。
「ああ、落ち着かないわ。‥‥あっ。」
サアラは歩き回っている自分の足元を、何かがさっと横切るのを見ました。その何かは、黒い大きな猫でした。猫は公爵様の机に飛びのると、赤インクの瓶に肉球をちょんちょんと突っ込み、勝手に書類に肉球印を押し始めました。
「キャーッ!大変!誰か来て下さい!」
サアラは重要書類らしきものが、自分の目の前で猫に悪戯されているのに驚き、思わず大声で人を呼んでしまいました。
するとすぐに扉が開けられて、部屋に剣を携えた護衛が1人入ってきました。
「どうしました?」
「‥猫が、猫が大切な書類で遊んでいたので、心配で‥。」
「あっ、そうでしたか。安心しました。てっきりもっと大変な事が起きて、サアラ様が危ない目にあっているのかと思ってしまいました。」
護衛は構えていた剣をおさめると、そう言って優しい笑顔でサアラに微笑みかけました。彼は笑うと目が細くなり、口元に窪みができました。
(この人も素敵な方ね。薔薇騎士伝の劇に出ていた騎士様にそっくり。)
サアラは護衛の男に思わず見惚れてしまいました。
サアラには変な癖がありました。見るもの全てが歌劇の役者やその世界に見えてしまい、すぐに自分の世界に浸ってしまうという致命的に痛い癖でした。
サアラは、この時自分に向けられた強い視線を感じてハッと我に帰りました。
「はっ、私ってば。またぼーっとしちゃった。」
そう言って、自分に向けられた強い視線の先をたどってみると、そこには先程の猫がいました。相変わらず肉球でスタンプを押して遊びながら。サアラは、ハラハラしながら護衛に尋ねました。
「‥あの猫、大事な書類に肉球で赤インクを押しつけていますよ。止めなくていいんですか?」
「‥いいんです。あれも我々の大切なご主人様のお仕事ですから。」
「えっ!?ご主人様?」
「‥そうです。ですので、何も心配はいりません。‥では、私はまた扉の外に控えておりますので‥。」
護衛はそう言ってさっさと部屋から出て行こうとしました。
「あっ、待って。部屋の鍵は開けておいて下さいね。」
「‥鍵ですか?この屋敷の部屋にはどの部屋にも鍵はついていませんよ。しかも猫の姿のご主人の力でも開けられるように軽い扉にしてありますから。」
「そうですか。」
護衛はサアラの言葉に少し怪訝そうな表情を浮かべたものの、すぐに営業用の笑顔をサアラに見せました。そしてサアラに一礼してから退室してしまいました。
サアラは護衛が退室した後しばらく扉をぼーっと眺めていましたが、相変わらず自分を凝視し続けている猫の方を振り向き、恐る恐る近づいて話しかけました。
「‥この部屋には誰もいないと思っていたけど、そうじゃなかったんですね。あなたが私の旦那様になる猫公爵様なのですね。‥猫公爵って猫好きの公爵って事じゃなくて、猫の公爵様って事だったのですね。ただの猫扱いをして失礼な態度をとってしまい、申し訳ありません。‥本当に反省しています。‥ですから、そんなに怖いお顔で私を睨まないで下さい。」
サアラが旦那様に謝罪すると、それに対して猫公爵は‥
「ニャー。」
と鳴いて答えてくれました。そして、机から降りるとサアラの足元に駆け寄り、抱っこをせがむように上目遣いでサアラを見ながら、爪を立ててサアラの足をかるく引っ掻いてきました。
「だっ旦那様、まさか私に抱っこをせがまれているのですか?」
サアラは顔を赤らめながらも、辿々しく猫を抱き上げ、自身の胸元へと抱き寄せました。
すると、猫はサアラの鼻の頭をペロリと舐めてきました。
「旦那様!なんて事を!まだお会いしたばかりだというのに、そんな破廉恥な事をされるのならば、もう抱っこをやめて床に下ろしてしまいますからね!」
サアラはびっくりして、思わず少し強めの口調で旦那様を叱ってしまいました。
「ニャー‥。」
それに対して旦那様は、床に下さないでと言うように、甘えるような声で泣き返してきました。
「可愛い‥。私の旦那様があざと可愛いわ。しかも、人間じゃなくて猫だなんて‥‥私は特別猫好きというわけではないけど、猫の姿の旦那様と暮らすのも悪くないわ。」
サアラは猫の旦那様を抱きながら、再び妄想の世界へ入ってしまいました。
(ああ、きっと旦那様は悪い魔女の呪いで猫に変身させられたのだわ。それで、真実の愛を見つけて熱いキスを交わすと人間の姿に戻るのよね。‥でも、物凄い不細工なお顔だったらどうしよう。‥それならもういっそ、このまま猫の姿のままの旦那様のがいいわ。‥子供を作ることは出来ないけど、それも養子を迎え入れれば問題ないわね。)
サアラは心の中での妄想が一段落すると、猫の旦那様と共にソファーに腰かけて、旦那様のもふもふの背中を撫でてやりました。
「ああ、やっとソファーに座れたわ。疲れた‥。でも旦那様を撫でていると癒されるわ、それになんだか眠たい‥‥。」
サアラは猫の旦那様の背中を撫でながら、うとうとと眠ってしまいました。
「‥お嬢さん、寝たのかい?俺の背中のもふもふの撫で心地にやられたのかい?ハハハ、俺の背中のもふもふにはどんな令嬢もイチコロだからな。仕方ないな。」
猫の旦那様はそういうと、扉を開けてメイドと護衛を呼び出してサアラを部屋まで運ばせるように言いました。
「‥ご主人様、サアラ様に全て打ち明けましたか?」
そう尋ねる護衛に、猫公爵はそっない返事を返しました。
「‥まだ彼女を信用した訳じゃないからな。何も話していない。それにしばらくはまだ猫のフリをしておくよ。」
「‥分かりました。」
護衛はサアラを横抱きに抱えると、メイドを引き連れてサアラの部屋に向かいました。
サアラがいなくなり部屋に一人きりになった猫公爵は、悪そうな笑顔で独りごちていました。
「サアラ嬢、君がこの屋敷の女主に相応しいか、この猫の姿で俺が直々に見定めてやろうじゃないか。」
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