ごんぎつねが悪役令嬢に転生して、兵十の生まれ変わりの王子様にお詫びをし続けるお話

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夜会での出来事

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ゲーテ王子にエスコートされて、私は王宮の夜会に来ていました。ドレスはゲーテ王子が用意してくれたものです。

「ゲーテ様、素敵なドレスをありがとうございます。」 

「いや、婚約者として当然の事をしたまでだ。気にしないでくれ。」


それは‥‥ゲーテ王子は暗に、私に対して婚約者の義務だから、ドレスをプレゼントしてエスコートをしたのであって、決して愛情がある訳では無い、とでも言いたいのしょうか。

それとも私が穿った捉え方をしているだけなのでしょうか‥‥。

「ルナール、君はフルーツジュースが好きだったね。」

ゲーテ王子は給仕を呼んで私にジュースを下さいました。

「僕は挨拶があるから少し失礼するよ。君も楽しんで。」

そう言ってゲーテ王子はバルコニーの方へ向かわれました。

バルコニーには、いつもの三人がいました。

やはりゲーテ王子は私の事よりも、あの方達を優先されるのですね。ええ、良いのです。私はもうあなた達の邪魔は致しません。それよりも‥‥


私は王宮に着いてすぐに王様と王妃様にご挨拶をするべきでしたのに、すっかりゲーテ王子のペースにはまってしまい、出遅れてしまいました。

私は勇気を出して一人でご挨拶へと向かいました。


「国王陛下、王妃陛下、この度は御招待頂きありがとうございます。」

「おお、ルナール。相変わらず美しいな。公爵も鼻が高い事だろう。」

「ルナール、一人でいるの?ゲーテはどこにいるのかしら‥‥。」

「‥‥殿下は挨拶にまわられてます。」

「‥まあ、バルコニーで挨拶ねぇ‥。あの子達一体いつまでお友達ごっこを続けていくつもりかしら。」

「‥‥。」

「まあ、ダンスが始まれば戻ってくるでしょう。ルナールも楽しんでいってね。」

そう言うと、両陛下は別の方と話し始められました。


私は再び壁の花となりました。


いつの間にかダンスは始まっていて、フロアーでは何組かの男女が、すでに踊り始めています。

私はゲーテ王子を待ちました。

ですが、ゲーテ王子は待てども待てども私のもとへは来ては下さいませんでした。

だって、リリー様とあんなに楽しそうに何曲分も踊ってらっしゃるのですから。

私は楽しそうに踊る二人を、ただただ見ていました。

「まあ、ルナール令嬢よ。ゲーテ王子とリリー令嬢の事をあんなに睨んで、怖いお顔。」

「ゲーテ王子がリリー令嬢に惹かれるのも当然の事ね、見てよ。お二人はとてもお似合いですもの。」

「愛し合うお二人の仲を割くなんて、本当に酷い方よね。」

壁の花と化した私に、わざと聞こえるように悪口を浴びせる令嬢達。

すると、一人の令嬢が私の元へやって来て、赤ワインを私のドレスにこぼして行かれました。

私は赤い染みのついたドレスを着替えに行く事もせず、謂れのない悪口に抗う事もせず、わざとドレスにワインをこぼされても騒ぐ事もなく、ただただ壁の花となり、ゲーテ王子とリリー令嬢のお二人を見守っておりました。


ゲーテ様、今とてもお幸せそうですね。


喜ぶべきなのに、何故私の目から涙がこぼれてきてしまうのでしょう。
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