ごんぎつねが悪役令嬢に転生して、兵十の生まれ変わりの王子様にお詫びをし続けるお話

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ニーチェ王子とゲーテ王子

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コンコン、

ノックと共にルナールの部屋の扉が開かれました。ニーチェ王子が、またルナールに会いに来てくれたのです。

ニーチェ王子は、ルナールのベッドの脇に腰をおろして、ルナールの顔に手をやります。

「ルナール、大分顔色が良くなった。ゆっくり休んだんだね。良い子だ。」

ニーチェ王子は、ルナールの頭を優しく撫でます。

「ええ、ありがとうございます。それで、ニーチェ様、国の結界を‥‥。」

「ルナール、それの事だが‥君はもう結界を張らなくても良い。

君の張る結界の中で、何も知らずに平和でぬくぬく暮らしてた奴らに思い知らせてやればいいんだ!君の結界がないと、国はこんなにも簡単に魔物の侵入を許してしまうのだと。

魔物が侵入してきたら、本来なら討伐隊が闘ってやっつけるべきなんだ。やつらは、魔物が侵入してくるなんて夢にも思わず、ずっと訓練もさぼっていたから、きっと今頃は慌てているだろうがな。」

「ニーチェ様、では私はもう聖女として国を守らなくても良いのですね。‥だとしたら、私がこの国にいる理由はもうなくなりますね‥‥。」
 
私はもし自分が聖女じゃなければ、ニーチェ様に婚約を破棄されるのではないかと不安になりました。

ですが、ニーチェ様は違ったようです。

「ルナール、君はもう聖女ではない。力を使い果たした後、体力は回復しても聖なる力は回復する事はなかったんだ。‥‥だが、僕は嬉しいよ。これでやっと、君が色々なしがらみから解放されて、ただのルナールになれるのだからね。」

そう言うと、ニーチェ様は私の頬を触りながら、優しいキスをして下さいました。

「ルナール、君が聖女じゃないなんて、最高だ。これで誰からも君を奪われずに済むんだから。ルナール、君が好きだ。君も僕を好きになってくれるかい?」

知らない内に私の頬を伝っていた涙を、ニーチェ様が拭って下さいました。

私は‥聖女じゃなくていい。何もしなくても、ニーチェ様のそばにいて良い‥‥なんて嬉しい言葉なのでしょう。ニーチェ様の姿を見るだけで心は弾み、その手で触れられるだけで私はこの上なく幸せな気持ちになるのです。

「ニーチェ様、私もあなたの事が好きです。」

ニーチェ様は、私の言葉を聞くなり、強く抱きしめ熱いキスをされました。

ニーチェ様は、その美しい唇と長い舌で長い時間私の口を弄んだ後、やっと唇を離して私を解放してくれました。

恍惚とする私を見て、ニーチェ様は満足そうに微笑みました。そして私の頭をそっと撫でてから、また部屋を出て行かれようとしました。

「待って下さい。ニーチェ様、私はいつまで部屋にいれば良いのでしょうか。私は本当に何もしなくていいのですか?」

私がニーチェ様を呼び止めてそう言うと、ニーチェ様は、黙って頷いて、部屋を出て行かれました。

ニーチェ様、私の知らない所で何が起きているのですか?ゲーテ王子やリリー様はどうなりましたか?

聞きたい事がたくさんありますのに‥‥。



その頃、ゲーテ王子はニーチェ王子の部屋に呼び出されていました。

「ニーチェ兄上、何か御用ですか?」

「ああ、お前とはたくさん話す事がある。僕に魔女の呪いをかけた理由は?」

「兄上が両親の愛を独り占めするからですよ。僕は優秀な兄上が羨ましくて、憎らしかった。‥兄上を差し置いて自分が王太子になる事で、大嫌いな兄上を見返したかった。‥‥それだけです。」

「まだ僕を呪いたいか?」

「いいえ、もう気が済みました。それに他人を呪えば、必ずかけた呪いがこの身に返ってくると分かりましたから。」

「お前‥変わったな。人が違うみたいだ。何があった?」

「‥さあ、リリーの魅了の魔法が完全に解けただけですよ。」

「‥それだけじゃないだろ。まぁ、いい。それと、ルナールの事は今はどう思っている?まだ彼女の事を利用したいと思うか?」

「いえ、彼女は僕を命がけで助けてくれました。今は感謝の気持ちしかありません。願わくば‥‥もう一度だけ会って謝罪と感謝の念を伝えたいです。」

「お前はこれからどうしたい?」

「‥リリーと婚約破棄したいです。それから、田舎で暮らすのもいいかもしれませんね。」

「本気か?」

「アハハハ、本気です。僕は負け戦はもうしたかないんです。だから、この城に僕がいる理由はもうないんです。ニーチェ兄上、これまでの事、本当にすみませんでした。」

「‥領地の方に隠居すると言うのだな。良いだろう。ルナールもお前の事を気にしていた。最後に会うのを許そう。‥ただし、ルナールには護衛付きで。」

ニーチェ王子の言葉を聞くと、ゲーテ王子は礼をして退室しました。
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