ごんぎつねが悪役令嬢に転生して、兵十の生まれ変わりの王子様にお詫びをし続けるお話

みるみる

文字の大きさ
19 / 21

バラード

しおりを挟む

魔物討伐隊に参加して最初のうちは、うまく立ち回れなかったバラードでしたが、何日かすると主力メンバーとなっていました。

負けず嫌いの性格のせいか、底辺まで落ちた男のハングリー精神のなせる技か、とにかくバラードは死に物狂いで頑張りました。

魔物と向き合うと、強い精神力で怯む事なく立ち向かい、魔力を込めた剣で次々と切り倒していきました。

‥ルナールに変な嫉妬をして見苦しい事をしたり、リリーにうつつを抜かさなければ、バラードは本来優秀な魔法剣士だったのです。

バラード自身も自分の隠れた能力に驚いてる様子でした。そして夢中になって魔物と闘っていくうちに、いつしかやりがいを感じていました。

そして魔物討伐隊が出発して一週間後、とうとう魔物のボスを倒す事ができました。

魔物討伐隊は堂々と王都へ凱旋しました。

その討伐隊の中に、一番の活躍をしたバラードの姿はありませんでした。

彼は魔物討伐後に貴族の身分を剥奪され、平民になっていました。

そして、ゲーテ王子のいる領地に農民として暮らし始めたようです。

ゲーテ王子がニーチェ王子にした話では、バラードは農民としての枠を超えて、様々な農業改革を推し進めているようです。

繰り返しますが、バラードは下らない嫉妬や悪女にうつつを抜かさなければ、本来優秀な男だったのです。



その頃ルナールは、侍女達に体を綺麗にしてもらい、ドレスアップして自分の部屋で、ニーチェ王子が訪れるのを待っていました。

コンコン、

ノックの後に護衛の一人が扉を開けて、ニーチェ王子が部屋に入って来られました。

「ルナール、すっかり元気になったね。今日は一緒に食事をしよう。‥そうだな、僕の部屋に運んで貰おうか。ゆっくり二人だけで食事を楽しもう。」

「ええ、嬉しいです。」

私はニーチェ様にエスコートされて、ニーチェ様のお部屋に通されました。

お部屋のテーブルには、すでに二人分の食器がセッティングされていました。

「ルナール、僕と同じワインで良いかい?」

「はい。」

グラスに赤ワインが注がれました。ワインの芳醇な香りを堪能しつつ、前菜を頂きました。

しばらく食事をしていなかったせいなのか、ワインが美味しい為か、私の食欲がとまりません。ニーチェ様の前だというのに、私は無心で食べ続けていました。

「ルナールは可愛いなぁ。料理を美味しそうに食べる女性は好きだよ。」

「あっ、はしたない姿をお見せしました。すみません。あまりにも美味しかったので‥。」

「いや、良いんだよ。料理も病み上がりの君がたくさん食べても、体に負担がかからないような物を用意したんだ。それにデザートは、君の好きなティラミスを用意したよ。」

「ニーチェ様、私がティラミスが好きなのをご存知なんですね。嬉しいです。」

「アハハ、僕は君の事なら何でも知っているんだよ。例えば、君の初恋の人の事とかね。」

「!」

「隣国のランクス王子、だろ。」

「‥‥。」

「そういえば、その隣国のランクス王子が結婚式を行うそうだよ。僕達にも招待状が来ている。勿論この国の代表としてね。

君とランクス王子は、昔から仲が良かったから、僕はてっきり君達がいつか結婚するものだと思っていたんだよ。勿論ゲーテと婚約破棄をした後にね。

だけど、僕に自国へ帰って君と結婚するように勧めてくれたのは、彼だよ。

だから、君がランクス王子の事を気にしていたのなら、無用の心配だ。

君が僕と愛し合って結婚をするように、ランクス王子も婚約者と愛し合って結婚をするのだから。」


「‥ニーチェ様。本当に何もかもご存知なんですね。ええ、私は隣国のランクス王子に恋しておりました。とはいえ、何も後ろめたい事はしておりません。ただ、心の中で想っていただけですの。

私がゲーテ王子やリリー達に虐げられていた事を、ランクス王子は不憫に思っていてくれたのです。そして、いつか私を隣国へ連れて行ってくれるとまで言って下さったのです。

‥なのに、私はニーチェ様を愛してしまいました。もうニーチェ様以外の方を愛する事はできません。

‥‥私はランクス王子を裏切ってしまいまったのです。‥ランクス王子には、とても申し訳ない気持ちでいるのです。」

私はニーチェ様に隠し事をしたくはなかったので、ランクス王子の事を素直に話してしまいました。

ニーチェ様は、やはり少し傷ついた顔をされてました。

「ニーチェ様、でも私は今はあなた以外の方をもう愛せません。これからだって、一緒にいたいのはニーチェ様ただお一人だけです。」

私は必死になってニーチェ様に訴えました。すると、ニーチェ様は、私に優しく微笑んで下さいました。まるで何もかも許してくれたかのような穏やかな微笑みでした。

「ルナール、大丈夫だ。僕は君を信じている。だから、君の過去にいちいち嫉妬はしないよ。それにランクス王子の事を裏切っただなんて、君がそんなふうに彼に対して罪悪感を感じなくても良いんだ。

さっきも言っただろう。ランクス王子が僕と君の結婚を願ったんだ。そして自分は自国の令嬢と結婚した。そういう事だよ、ルナール。」

「‥ええ、分かりました。」

「分かってくれて良かったよ。僕達でランクス王子の結婚をしっかり祝ってやろうじゃないか。」

「はい。」


それから何日か後に、私達は隣国へ向かいました。ランクス王子の結婚式の為に。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...