ごんぎつねが悪役令嬢に転生して、兵十の生まれ変わりの王子様にお詫びをし続けるお話

みるみる

文字の大きさ
21 / 21

私とニーチェ様、その後‥

しおりを挟む

私とニーチェ様が隣国から帰国した後、バラードが私に謝罪に来ました。これまでの私に対する罪を認め、巷に広がっている私の悪い噂を無くす事を約束してくれました。

それから程なくして、バラードは魔物討伐の功績や農業改革の功績が正式に認められ、一度は剥奪された貴族の身分でしたが、国王から辺境伯の役職を与えられました。

バラードは隣国との国境付近の魔物が発生しやすい地域に住み、国の安全の為にその生涯を捧げました。

バラードのおかげで魔物が侵入してきて暴れる心配もなくなり、国中が落ち着いてきた頃、ニーチェ様は、国王の次期後継者として正式に認められて王太子となりました。

そして、私とニーチェ様は結婚し、結婚式も盛大に行われました。



コンコン、

ニーチェ王太子の執務室に、ゲーテがやって来ました。

「兄さん、ルナールに赤ちゃんが出来たって聞いてお祝いに来たよ。おめでとう。」

「‥ああ、ありがとう。」

王太子の執務室には、いつか見た魔道具がありました。鏡面に映し出されていたのは、ルナールの結婚式の映像や、ルナールの日常の様子でした。

王太子は、ルナールが倒れた日の魔道具の記録を、ゲーテの弾劾裁判に使おうと思っていたのですが、結局使わずじまいでした。ゲーテ自ら改心してしまった為です。

その為、この魔道具の盗撮機をゲーテの部屋から外してルナールの行く先々につけては、盗撮してその映像を楽しんでいました。


「‥兄さんが隠れてルナールを撮ってる事、ルナールは知ってるの?」

「いや、言う訳がない。言ってしまったら、ルナールは嫌がるに決まってる。そうなったら、僕の楽しみが減るじゃないか。」

ゲーテは、驚きました。全てが完璧で非の打ち所がなかったニーチェ兄さんが、ルナールを盗撮して楽しむ変態だったとは、夢にも思わなかったのです。

「‥兄さん、僕は知ってるんだ。ルナールの聖なる力が尽きたなんて、嘘なんだろう?」

「嘘だとしたら、何だと言うんだ。ルナールの聖なる力を使いすぎたら、ルナールの寿命が縮むだろ。そもそも聖なる力なんてルナールが使わなくても、この国の平和は軍事部や警備部が守るべきものなんだ。この国は今までルナールに甘え過ぎていたんだ!」


「‥兄さん。僕は兄さんの事を凄く勘違いしてたみたいだ。清廉潔癖で、正義感が強くて、国に対し忠実な人間だと思ってた。その為にルナールの聖なる力が必要だから、ルナールと結婚したのかと思っていた。あっ、もちろん兄さんがルナールを好きだった事は知ってるけどね。」


「そうかい?僕はルナールがゲーテの婚約者に決まってからはしばらく遠慮してたけど、昔からルナールの事が好きでたまらなかったんだ。だから、ルナールの為になるならなんでもするさ。国の規則だって変えてみせる。それに、ルナールの幸せの為に僕がつく嘘の一つや二つぐらい可愛いもんだろ?」


王太子はそう言うと、時計を見て立ち上がり、窓の下を眺めました。

「フフ、もうじきこの下をルナールが通って、僕に手を振るんだ。‥いつもこの時間なんだ。」

そう言って、王太子は窓からルナールに向かって手を振りました。ルナールが通り過ぎて、その姿が見えなくなるまで‥‥。
 

「‥兄さん、ほどほどにね。」

「何の事だい?」

ゲーテは、王太子の執務室を退室し、帰り際にルナールの姿を一目だけ見てから帰りました。

「さようなら、「ごん」とルナール。」





「‥あら、今ゲーテ様のお姿が見えたようだけど。」

「奥様、今日ゲーテ様は王太子殿下の執務室にみえたようです。奥様の御懐妊のお祝いの為だと思います。」

「そう、私もご挨拶しなくて良かったのかしら。」

「大丈夫だと思います。」

ルナールは、まだそんなに膨らんでいないお腹を愛おしむようにさすりました。

このお腹の中に私とニーチェ様の赤ちゃんがいるなんて、夢みたい。

ふと、庭の片隅に植えられてるヒマワリに目がとまりました。

ヒマワリ、ニーチェ様が私と婚約した時にプレゼントしてくれたお花だわ。このお庭にも植えられていたのね。そういえば、ヒマワリの花言葉ってなんだったかしら?

そんな事を考えながら、ルナールは護衛と共に、庭をまた歩き出しました。

医師から安定期に入るまでは、ほとんどの動作を禁止されていた為、散歩だけが今のルナールにとっては唯一の楽しみでした。

そして、そんなルナールの姿をお城の窓からずっと眺めていたのは、ニーチェ王太子。



ヒマワリの花言葉は、「私の目はあなただけを見つめる」
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

とっと
2020.07.14 とっと

思いがけず(前半)涙ポロリな作品でした(´;ω;`)

…ハッピーエンド…?

いや…結局、ヤンデレでも(確かに)主人公の為?に、一人の力に依存しないように改革?したし…皆正すべき所は正され良い未来に進んでるっぽいけど(´・ω・`; )ゥゥッ

前半の涙ポロリが…ラストのお話で…汗ブワリなのは私だけ…??

ゴホン=3

何はともあれ…面白かったです♪

2020.07.14 みるみる


話を書いてるうちに、ニーチェ様が正義感の強いストーカーになってしまいました💧

でもルナールは天然なところがあるので、ニーチェ様の愛を素直に受けとめて、一生幸せでいてくれると思います🌻✨

面白かったとの感想嬉しいです😊✨


解除

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。