月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第32話 月女神の意識

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月の魔女とよばれるまで

第32話 月女神の意識

古代魔法士は既に絶えている。だが、エーベルが沙更に教えた知恵と魔法は、古代魔法士と名乗るのに十分なものであった。

そして、沙更が扱う詠唱法も古代魔法士と同じ物。それ故、月女神の眷属がそう言うのも無理は無かった。

「古代詠唱にその魔力、まさに古代魔法士が復活したような物。こんなところで、これだけの人間に会うことになろうとはな」

ほとんど魔に落ちている月女神の眷属は、沙更とセーナの魂に気がつかない。既に主を失って幾星霜。魔に落ちたことで、月女神とのつながりも切れてしまい別存在となってしまっていたからだ。

復活させる為の儀式も、実際神を復活させるなら人の血はいらない。その信仰さえあれば、神は復活出来るのだ。月女神もその理に属する。

邪神と呼ばれているため、復活させる事は今は出来ない。信仰が戻れば、あるいは可能になるかも知れないと言った話であって、そもそもからして間違っていたのだ。

沙更とセーナの魂が結合した結果、月女神の器は徐々に復活しつつあった。それに気づけないあたり、既に眷属を名乗る資格を失っていることに気づいていなかったのだ。

そこで、いきなり空間が歪む。月女神の眷属は、それに驚くしかなかった。

「この力、まさか御方!?」

そこまで言ったところで、沙更とセーナの魂だけ別空間に飛ばされる格好となった。

別空間で、待っていたのは月女神の意識だった。銀色の長い髪と折れそうなほどの細い肢体、そして白銀に輝くドレスをまとって。

(沙更、セーナ。貴女たち二人を巻き込んでごめんなさい。私は月女神と呼ばれていた者です)

いきなり、月女神の意識から謝罪をされる二人。沙更とセーナは余りの事に驚くしかなかったが少し経ってから口を開いた。

(エーベルさんから聞いています。最後の神であったと)

(月女神様?凄い綺麗な人・・・)

沙更とセーナの魂に直接話しかける月女神。器はこの時点でほぼ復活していたことから、魂が結合したことにより彼女もまた意識を復活させることが出来ていたようだ。

(既に、神の器は出来ています。そして、私はこの世に戻る気はもうありません。神としての役割を終えました。人間たちを見守ると言う役目をです。そして、それは神としてこの世界に残った最後の役割でした)

月女神は沙更とセーナにそう伝える。

そもそも、月女神が残ったのはこの世界の人間たちが未成熟で、見守らなければならないと主神に頼まれたからだったそうだ。

そんな月女神を邪神としてあげつらい、挙げ句の果てに殺した人間たち。殺された時に、神がこの地を去った理由を月女神も悟っていた。

もう、神はこの世界には必要ないのだと。だから、殺しに来たのだろうと思ったと月女神は話してくれた。

(なので、もう私が目覚める必要はありません。しかし、神の器は出来てしまいました。なので、その神の器は沙更さんとセーナさんが使ってください)

(月女神様、もし今の人間が貴女を必要としたら起きてくれますか?)

(沙更、その問いに私が言えることはいいえです。もう、この世界は神の手を離れました。なので、願われても顕現することはないでしょう)

月女神の意識は沙更の問いをあっさりと否定する。けれど、沙更はそこに待ったをかけた。

(どちらにしろ、セーナちゃんや私がこの魔力を使っていれば、いずれ神に至ってしまうかもしれません。その時に、神の先輩として導いてもらうのもなしですか?)

(沙更、そこまで私を思ってくれなくても良いのですよ?でも、その時には手助けすることを約束しましょう。貴女たちは、私と同一存在なのですから)

月女神はそこまで言うと沙更を見た。

(やはり、異世界の理を知る貴女は神を知っているのでしょうね。それとも、貴女がいた世界は神が多かったのかも知れません。それだけに、この世界は異質に見えると思います)

(この世界を見てみないことには、判断しかねます。でも、助けたい人が居れば助けたいと思います)

(そう思ってもらえれば、私として嬉しいです。セーナさん、私のせいでいろいろと巻き込んで不幸にさせてしまってごめんなさい)

(女神様、セーナは女神様に謝られることされてないよ?だって、ずっと起きられなかったんでしょ?)

話しかけられたセーナは、月女神の問いにそう答える。自身が願ったわけでも無く、勝手に思って暴走されてる状態であるからして、月女神自身に責任があるかと言えばない。生きていないのに責任を負えるわけもないのだから。

そう答えるセーナに月女神はセーナの頭を撫でてあげる。くすぐったそうにするセーナに、月女神の表情が曇る。

(魔に落ちたあの眷属を止めてください。沙更、貴女の魔力なら魔法の神刀、ディバインブレードを呼べるはず。あの魔法があれば、退けられるほどの力を持ちます。もの凄い力でもありますから、飲み込まれないで)

月女神の意識はそこまで言ったところで、途切れた。
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