月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
37 / 365
古代遺跡の出来事

第33話 神刀と呼ばれし魔法

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第33話 神刀と呼ばれし魔法

月女神との会話を終え、空間魔法が閉じるとそこは先ほどまでの古代遺跡であった。時間はどうやらほぼ動いていなかったらしい。

月女神の眷属が、あれだけの魔法を操れるのが月女神本人だと言うことに気付いたからだ。

「何故、御方が目覚めている!?」

気付いたことから、考えるに目覚めていることが分からないわけがない。だが、既に月女神の眷属は月女神とのつながりが切れていた。それだけに、気付くことも出来なかった。

「月女神様から、貴方を止めて欲しいと言われた。魔に落ちた貴方をね」

「まさか、あの時から御方との繋がりは無くなっていたと言うのか!?」

その事実に、月女神の眷属は衝撃を受けることになった。まさか、繋がりを絶たれているとは思っても居なかったからだ。認識してしまえば、余りの異常ぶりに納得するしかない。

そして、自らが神に片足を踏み込んでいることも気付く。

「御方との繋がりは絶たれていても我が神になれば同じ事」

やけになったかは分からないが神になれば、神を復活させることも出来ると思ったようだ。だが、それは出来る話ではない。しかも、意識を持たないならまだしも既に月女神は意識を取り戻している。

その状態で無理矢理器に収めると言うことがどれだけの負担をかけるかが分かっていない。それでも強行するのなら、それは敵対すると同義だと言うことにもだ。

「強引な男性は女性に嫌われますよ。神でもそれは一緒です」

沙更が静かにそう言うと同時にセーナが一気に魔力を集めていく。

(沙更お姉ちゃん、魔力をもっと集めるけど大丈夫?)

(セーナちゃん、大丈夫?余り無理はしないでね)

(大丈夫、沙更お姉ちゃんの魂に守られてるからこれくらいしか出来ないの。だから、魔力だけならセーナがどうにかするからね)

沙更の周囲に、超高濃度の魔力が集まる。セーナの魂が一気に魔力を集めている為、魔力がない人間でも容易に魔力があることを視認することすら出来る状態になっていた。

「なっ、これだけの密度の魔力を集めるなんて」

「もの凄い大技を出そうって言うのは分かるぜ。それにしても、とてつもないな」

「こんな魔力、扱いきれると言うの!?本当に、あの子は何者なの?」

パウエルやガレム、ヘレナもこれだけの魔力を集めるのを見るのは初めてだ。この時代の魔法士で、これだけの濃度の魔力を扱うことなど出来ない。沙更だから出来る荒技とも言える。

古代魔法士でも、これだけの魔力を集めての大魔法はまずもって使わないだろうからだ。

そこに、沙更がミリアに声をかける。

「ごめんなさい、ミリアお姉さん。一分だけ、時間を稼げますか?」

「セーナちゃんが必要なんでしょ?いいよ、頑張ってみる」

「ありがとうございます」

「セーナちゃんがお礼を言うことじゃないって」

ミリアはそれだけ言うと、白の直刀を握り直して月女神の眷属に向かう。

余りの濃度の魔力に、月女神の眷属は何の魔法を使うか予想が付いたがその魔法を扱えることに驚愕する。古代魔法士でも扱える人間がほぼいなかった魔法だったからだ。

「この魔力の濃度、まさか!?まさか、あの光魔法最上級である神の刃を呼ぶ気か!?させぬ、させぬぞ!!」

気付いた月女神の眷属が、紫の大剣を振るうがミリアの白の直刀に阻まれる。マイティアップの魔法の効力が凄まじいと言うしか無い。人間が神に片足を踏み込んでいる存在と互角に戦える時点で、おかしいと言うしかなかった。

紫の大剣の横から胴抜きの一撃が飛ぶが、瞬時にミリアの白の直刀が煌めいたと同時に交錯。威力を打ち消されたのを気付いた月女神の眷属が、力に任せた唐竹割りを放つ。

それに対応するように、ミリアは白の直刀を握って待ち構える。襲う唐竹割りを力の点を白の直刀を使い、動かすことで受け流した。

慌てる月女神の眷属の攻撃が荒くなっていく。一分、されど一分。ミリアはここは耐える場だと自分に言い聞かせていた。ずっと、対応しきれるとミリア自身思っていなかったからだ。

人間と神に片足を踏み入れている存在とでは、体力が違いすぎる。だが、焦りが相手にあることでなんとか防戦を仕掛けることが出来ていると本人は思っていたのだ。

そんな風に思っていたミリアが月女神の眷属から一分をもぎ取るとそこに、沙更の詠唱が聞こえてきた。

「無より生まれし光たち、我が声に応じてその姿を現せ。その力は、最高峰の光であり神の剣。全ての空間、時空をも切り裂く全の剣であり、全ての邪を討ち滅ぼす光であらん。我が名はセーナ。その力を望む者なり、目覚めよ、神刀ディバインブレード!!!」

膨大な魔力が光の巨大な剣を生み出す。神聖なる大いなる力がその剣には宿っていて、その力は時空すら切り裂く全の剣。それが四本、顕現していた。

巨大な光の刃が月女神の眷属に襲いかかった。月女神の眷属は、ここで滅ぼされるわけにはいかないと瞬時に撤退したが、ディバインブレードの力は撤退した月女神の眷属に容赦なくまぶしいばかりの光で焼いていく。

沙更の周囲がまばゆいばかりの光に覆われ、その光が消えた時には月女神の眷属は消えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...