月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第39話 地上に向けて3

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月の魔女とよばれるまで

第39話 地上に向けて3

パウエルの鉄の剣が魔鉄の剣に切り替わったのを見て、ガレムも折れた鉄のハンドアックスを取り出すのも無理は無かった。

「すまねえ、俺の斧も頼む。魔鉄にしてくれとは言えねえが、直してはくれねえか?」

「私に出来るならでいいですか?ガレムさん、武器預かります」

沙更は、ガレムから鉄のハンドアックスを預かる。やはり、斧だけあって剣よりも重い。マイティアップの効果は未だに続いているからこそ大丈夫であるが、五歳の幼女が持つ代物では無いのは確かだ。

それでも、マイティアップの効果であっさりと持ち上げる。それが異様と言えば、それまでだが。

そして、修復魔法を唱える。鉄のハンドアックスは沙更の魔力に適合はしなかったが、それでも鉄から高炭素鋼に変化したことで、切れ味と強度は鉄よりも遙かに上がっていた。若干破損しやすくはなってしまったが、それでも鉄のハンドアックスと比べれば切れ味等も格段に上がっているのは一目瞭然だった。

「鉄から鋼になったってか、マジで面白いな。それに、一般の鋼じゃねえ。ちょっと特殊な奴だな」

実際、普通の鋼の斧よりも切れ味と強度に特化した形の斧になっていた。その分、もろい部分を持ち合わせてしまっていたがそれでも普通の鋼よりも長持ちするだろう。

脳筋ながら、武器に関しては鋭いガレム。沙更は、魔力が勝手に鑑定してくれることからその事実を把握していた。剣は鉄から魔鉄、斧は鉄から炭素鋼と材質が完全に上位のものにスイッチしてしまっていた。

パウエルの魔鉄の剣に比べてしまうと落ちてしまうが、この古代遺跡を生き残るには十分すぎる程の武器である。下手なCランク冒険者が持てる武器では無い。

間に合わせだったこともあり、思い入れがなかったことも考慮に入っているのか劇的な変化はなかったが、それでも十分すぎると言って良い。実際、この世界で炭素鋼は余程腕の良い鍛冶士でなければ生み出すことも困難なのだから。
特殊鋼だけに、扱えるドワーフも多くはない。更に加工は困難を極める。

魔鉄は魔力がこもった鉄なので、弄るにしろ鉄を基礎として魔力に配慮するくらいなのだが炭素鋼ともなれば、高火力の炉がどうしても必要になる。そうでなければ、加工すらままならないからだ。

そんな特殊鋼の斧ならば、下手なモンスターなら一撃で断ち切る事が出来る。魔鉄と物理的にやり合う場合は、特殊鋼の方が上になる。が、魔力が無い為物理と魔力のダブルで防御された場合貫通出来るかと言えば厳しいと言うしかないのだが。

「面白い斧になったな。俺は気に入ったぜ」

「ガレムさんの思った通りにはならなかったと思いますけど、十分戦力になると思います」

「俺としては、面白い武器になって嬉しいぜ。本当にお前は、面白いな」

ガレムは、そう言って沙更の髪に触る。なんか癖になったらしい。それを見て、ミリアが若干機嫌を悪くしたりしていたが気にしていないあたりが彼らしい。
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