月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第60話 地上に向けて24

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月の魔女とよばれるまで

第60話 地上に向けて24

地下一階層の階段を見つけるまでの間、裏でそんな話がされているとは沙更は気付いていない。自身がそれだけ力を持っていること自体は理解していても、既に冒険者Aクラスどころではないと言う事には気付いていなかった。

魔法士としても、治療士としても一流というしゃれにならない腕の持ち主という時点で、冒険者どころか貴族たちからも、犯罪組織にも商人たちに取っても垂涎の的なのだから。

ウィンドウォークの効果で、徒歩の2.5倍速で加速しつつも地上への階段を探す。そもそもルートは分かっているので、行きよりも速度が上がった状態で階段へと迫る。

モンスターを排除したことで、邪魔をされることもない。そもそもここまでの間にトラップなどは既にミリアによって解除済みであった。それ故、警戒することも無く加速できると言うのも大きい。

地下一階層から地上への階段を探すのもモンスターに邪魔されない、トラップにも邪魔されない状態ならば見つかるのもあっと言う間だった。

ここがダンジョンじゃ無いのも大きい。古代遺跡であって、ダンジョンコアはここにはない。あるのは巨大な魔方陣の部屋だけだ。しかもあの魔方陣を使いこなそうとするならばエーベルの意思に認められなければならない。現状その条件に当てはまるのは沙更だけだ。

古代魔法士以上の魔力を持ち、それだけの魔力を扱う素地が無ければ魔方陣を動かすことなど出来ないからだ。そう考えれば、現状の古代遺跡は脅威を排除した状態とも言える。下手に階段へ行く道から逸れなければと注釈は付くが。

沙更にとって、エーベルの意思が眠る魔方陣があるこの遺跡はいろいろと思うところがある。それに、この遺跡はエーベルの墓所でもあるように感じていた。でなければ、魔方陣に自分の意思を込めるなんてことをしないと思われたからだ。

実際のところはエーベルに聞かなければ分からない。が、沙更としてそう捉えていた。

高速で移動しつつも、一直線に階段に向かっていくため徐々に階層が広くなっていってもミリアが道を知っていることもあり、階段への道はそこまで長くは感じられなかった。

地上への階段へとたどり着くまで、地下一階層に上がってから一時間ほど。ウィンドウォークの加速で、徒歩の2.5倍速で動いていると言うのもあり、動いた割には疲れは無い。

「ウィンドウォークは、大分使い勝手が良いみたいです。思ってるよりも早く動けてる気がします」

「セーナちゃんの補助魔法って本当に凄いよね。加速魔法を行使しっぱなしで、移動できるってどれだけ贅沢なんだろう」

「それもそうだよな。加速魔法で加速できる時間なんて、大体数分が普通だぜ。最下層から考えて、もう既に数時間魔法使いっぱなしって本当に桁が外れてる」

「本当なら、こちらから催促するような話じゃ無い。セーナちゃんだから自然に使っていてくれるが、これは他の魔法士に言う話じゃ無いだろう」

「セーナちゃんの魔力が底なしだってすぐに分かる話だわ。これだけ魔法を使っていたら、とっくに魔力切れを起こしていてもおかしくない」

現代の魔法士では出来ないことをあっさりやってのけるのが今の沙更だった。ミリアたちの話を聞いて、首をかしげる。ウィンドウォーク自体は初級の補助魔法であって、そこまで魔力を使わないのにと思う。

だが、沙更が使う魔法と現代魔法士の魔法は似て非なる物なのをこの時点では理解していなかった。
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