月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第62話 開拓村に戻って1

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月の魔女とよばれるまで

第62話 開拓村に戻って1

地上に出て、開拓村へと急ぐ沙更。それは、セーナが望むことをするためであった。

邪教の集団との戦いで命を落とした開拓村の人々を安寧の場所へと送るため。今のままでは、開拓村自体が呪いの場となってしまう。元々血で地を染めたのは、月女神の眷属にとって人々に恐怖や畏怖を与える為である。

神というのは畏怖や信仰でその存在を維持するものである。そのため、時に人間に試練を与え、もしくは神罰と言うなの虐殺までやってのける。

半神となった月女神の眷属も半分神に足を踏み入れている以上、それらから逃げることは出来ない。

が、沙更にはそれらの制約は一切無い。元々、神であった月女神の器を持っては居るが半神でありながら人間の性質に引っ張られている格好だからだ。

アンバランスではあるが、神としての制約を受けないため人間や亜人たちにしてみれば無害そのものである。沙更の逆鱗に触れなければではあるが。

ウィンドウォークを再度掛け直して、古代遺跡を後にした。

月女神の眷属の思惑通りにさせないためにも、両親や開拓村の人々を弔うためにも急ぐ必要があった。

古代遺跡から開拓村までは、本来であれば徒歩で数時間はかかる。が、ウィンドウォークの効力が三倍速になったおかげで、遺跡から一時間ほどでセーナの生まれた開拓村までやってくることが出来た。

邪教の集団に襲われ、死体が散乱する開拓村は異様な臭いに包まれていた。所々で死体が無造作に置かれている。その時点で異常と言うしか無い。

ミリアたちは、この光景を見て沙更が早く戻ってきたかった理由を察して目を見合わせる。

(セーナちゃんが早く戻ってきたいわけだよ。こんな光景になっていると分かっているのなら、なんとかしたいって思うはずだもの)

(ひどすぎる光景だぜ、人を遊びのように殺してやがる。セーナちゃん自身、こんな状態になっていると分かっているなら確かに急ぐだろうなあ。どうにかしたいと思うのも納得せざるを得ねえ)

ミリアの言葉に、ガレムが納得したように口を開く。死体からの異臭に、血の臭いまでこびりついている感じはまさに地獄絵図そのものだ。

ヘレナは余りの惨状に、えずいてしまっている。10代後半の女性にはこういう場は似つかわしくは無いだろう。

そんな中、戻ってきた沙更はセーナからの願いを聞き入れるためにマイティアップを先に唱えてから、倒れてる人々を動かしていく。一人、また一人と。

血の惨劇に見舞われたこの開拓村はセーナ以外の生存者がいるかが分からない状態だ。それだけに、ここで倒れた人々をこのままに出来ないと頑張って動かしていく。エーテルドレスが血でぬれようとも気にせず、倒れた人を動かしていくのは五歳の女の子がやるには余りにも辛い。

(ミリアお姉さんたちは私をここまで送ってくれた。その思いに感謝しかない。今は、倒れた人たちをひとまとめにしないとホワイトフレイムで魂を安らげる場所へ送ってあげられないから)

その思いだけで、自身の能力以上の事をやり続ける。大人の女性でも男性でも、五歳の女の子からしてみれば持ち上げることなど出来るわけがない。

だが、それをやり遂げる為、自分の身体にマイティアップを唱えて大人顔負けの能力まで上げたところで、一人一人動かしていく。

その行動は、セーナの為に亡くなったことを知っているからこそと言える。贖罪とまではいかないが、自分のために亡くなった人々を送ってあげたいと言う一心で動いていたからだった。

沙更自身、えずいたりはしない。そう言う面でも人間の精神を越えてしまっていた。半神まで引き上げられた器に引っ張られているのかもしれないと思いつつも今はそれで良いと思う。

(もし、普通の女の子だったらこの光景に精神がおかしくなってしまう。だから、今だけは半神になったことを良かったと思うしかない。じゃなければ、一人一人と倒れた人を運べないから)

泣き叫んでも良いのに、沙更は大人の身体を引きずらずに動かしていくのだった。
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